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第5章|サクラマス化学株式会社 南アルプス工場 <15>製造部・生産課長 富士田虎一と、保健師足立の会話

<15>


【製造部・生産課長 富士田ふじた虎一とらいちと、保健師足立の会話】


 ……足立さん、もしかしてあなた、就職したばかり?


 やっぱりナァ。さっき着てた服、典型的なリクルートスーツ。

 俺の頃から、あんまり変わってないなァ。


 無難な色。安っぽい生地。主張しない形。

 襟元まできっちりと留めた白いシャツ。


 ……おっと、すみません、言い過ぎた。


 足立さんを否定しているわけじゃないんだけど、

 俺はあんまり、リクルートスーツって、好きじゃないんですよ。

 いい思い出がないし、それに没個性じゃないですか。


 俺は、こんな見た目で、性格もご存知の通り、

 荒っぽいほうなんで、よく鬼軍曹みたいだと誤解されるけど、

 画一的に右向け右、っちゅうのは、嫌いなほうですよ。



 自分、こんな油まみれ、汗まみれで働いてますけど、

 一応、“大卒”なんですよ。


 まぁ、有名大学じゃありませんけどね。


 長男だったから、大学に行け、と親が言ってくれて。


 でも、結局フタ空けてみたら、

 高卒で社会に出た一個年下の弟のほうが、

 大きな会社に就職できました。逆転現象です。


 俺が社会に出た時はちょうど、

 あとから『就職氷河期』っちゅう、不名誉な名前付けられたような、

 そんな時期だったみたい。


 就職活動して、採用通知が来たのは、

 当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった『消費者金融の会社』と、

 この『南アルプス工場』だけ。


 それ以来、ずっと、ここで働いてます。


 ま、働いてみたら、意外と性に合うところもありましたけどね。



 ただ、初任給は雀の涙だったな。

 長時間労働して、残業代で稼ぐのが常套手段。

 それでも実家暮らしがやっとだった。


 当時、好きな女性もいたんだけど、

 子供や奥さんまで養っていける自信なくて、結婚は、諦めて。


 今は課長になったから、チョットは生活にゆとりもできたけども。

 今度は、実家の親が徐々に……認知症、っていうんですか。

 ボケ気味になってきてね。心配してますよ。


 あれ、就職の話なんてしたの、いつぶりだっけ……

 俺、なんでこんなこと話してるんだろう。


 ああ、そうだ。さっき、

 足立さんのリクルートスーツを見たから、

 思い出しちまったんです。

  


 話が脱線しました。

 俺、現場のことを、工場長に分かってほしいんですよ。

 でも、怒りに任せて怒鳴っても効果がないぞって、

 鈴木先生に言われました。


 ついカッとなっちまうのは、自分の良くない癖です。


 足立さん、手を貸して下さい。

 


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