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第5章|サクラマス化学株式会社 南アルプス工場 <5>ヒーロー・マスクと郷愁

<5>



「“―――われわれは極度にハードコアであらねばならない。―――”……でしたかね。ヒーロー・マスクが『チィッター』社を買収したときの言葉」



「ご存知でしたか。鈴木先生」

鈴木先生の言葉に、工場長が向き直った。

「『働き方改革』に、『ワークライフバランス』。そりゃ、そういう働き方をしたい人がいるのは、私も否定しません……。でも……遠い外国の、見ず知らずの若者なのに、何故か彼の言葉をニュースで見た時、“郷愁”とでもいうような、懐かしさが、胸の奥から、こみ上げてきましてね。調べているうちに、すっかり、ファンになってしまったんです」



「それで、工場長室に写真を飾っていたんですね……」



「ヒーロー・マスクは、世界有数の大金持ちでありながら、今でも職場に寝袋を持ち込み、自ら泊まり込みのハードワークをすることも辞さないようですね」

鈴木先生が言った。



「そうなんです。私の若い頃も、工場に泊まり込んで、酒を酌み交わしながら、新商品開発の話なんかをしていましたのでね。ヒーロー・マスクが、“火星移住”、“民間ロケット開発”、“無人タクシー”なんて、まるで男児のSF妄想みたいな事を、現実にしようとするバイタリティーを見ていると……。スケールは全然違うけど、自分の若い頃、どうにかウチの持っている技術を産業に生かせないかと、目をキラキラ輝かせながら、夜遅くまで膝つき合わせて話していたことを、思い出してしまうというか、ね。あの頃は、長時間労働なんて気にも留めていなかった。そして、日本に勢いがあった」




―――工場長、ヒーロー・マスクが「推し」なんだ。話している顔が、イキイキして嬉しそうだ。




「……ですが。……念のため付け加えておきますと、うちの工場では、現在、サブロク協定を超える長時間労働は、発生しておりませんので。それに、“()()”です!」

矢豆さんがすかさず、フォローを入れた。



矢豆さんの視線の先に、工場長室に飾られた、高級そうなお酒のボトルがあるような気がしたのは偶然だろうか。




「なるほど……。それはそうと、労災事故の現場も拝見できますか?産業医として、再発予防のため何かお力になれることがあれば、と思いますので」鈴木先生が言った。


 


――――はい。是非お願い致します。ただ、工場の中に入るなら、作業着に着替えて頂く必要があります。


そう言われたのだけど、私だけが着替えに女子更衣室を使うので、矢豆さんが、事務所にいた女性社員の吉野さんに声をかけてくれた。




「吉野さん、我々は先に行きますので、着替えが終わったら、足立先生を工場内にご案内してくださいね」


 そう言い残して、男性陣は先に、工場の職場巡視に出かけて行った。



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