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第5章|サクラマス化学株式会社 南アルプス工場 <2>荒ぶる富士田さん

<2>



 「工場長ォ!!新島の件ですが!!!」



部屋に突然入って来たのは、角刈り頭で、肩幅が広くがっちりした筋肉質の、中年の男の人だった。

 太い眉を吊り上げ、鬼の形相で、額には玉の汗をかいている。そうとう興奮しているみたいだ。



 でも、この部屋に工場長はいない。



「くそっ……! 逃げたか!! さては、貴様ら! 本社の人間だな!?」



そして、返事をする間もなく、血走った眼でキッと壁の方を見ると、“ヒーロー・マスク”の写真に手をかけた。




「グギギギギ……こんなものォ、工場長室に貼りやがって!!“ゴエス”!!」




 その男性は、太い指でアッという間にヒーロー・マスクの写真を剥がし取ると、ビリビリと破いてしまった。




 私と鈴木先生があっけに取られていると、矢豆さんが駆け込んできた。



「ちょっと!富士田ふじたさん! あなた何をやってるんですか!」



「矢豆ェ!! 離せ離せ! 俺は今日という今日は、怒り心頭なんじゃあ!!工場長が不在なら、本社の連中に、わからせてやるしかねぇんだ!!」



 フジタさんは、矢豆さんに羽交い締めにされたものの、矢豆さんは小柄で高齢だ。明らかに劣勢になっている。た、助けないと……



「あのね、富士田さん、この方々はっ……お、お。お客様ですよ!」


フッ飛ばされそうになった矢豆さんがそう言うと、暴れていたフジタさんの動きがぴたりと止まった。




「何……! お客様……だと。ハッ。見苦しい姿をお見せし、大変失礼致しました」


 猛獣の亡霊に取りつかれていた人間が正気を取り戻したように、彼は真っすぐ向き直り、右手でピシッと敬礼をした。



「ほんとに、富士田さん、失礼極まりないですよ。こちらの方は、産業医の鈴木先生と、保健師の足立先生ですッ」




―――えっ。足立“先生”。そう言われると、なんか気恥ずかしい。




「それはそれは……ご無礼をお許し下さい。あっ、ヒトゴーヒトゴー。戻らなければならない。それでは、自分は失礼します。ご安全に!」



 フジタさんはそう言うと、お辞儀をしてバタバタと足音を立て、去って行った。




 矢豆さんが乱れた作業着を直しながら、溜め息をつく。



「ハァ……本当に、申し訳ございません。先ほどの男は、製造部・生産課長の富士田といいます。富士田はちょっと気性の荒い所がございまして……。しかも、サバゲー……、サバイバルゲームっていうんですか、そういう趣味があるらしく。なんだかやたらと、軍隊的な物言いをする男なんですよ」



「先ほど、彼、ヒトゴーヒトゴー、とおっしゃっていましたね」鈴木先生が尋ねた。



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