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第5章|サクラマス化学株式会社 南アルプス工場 <1>到着

<1>



「『株式会社E・M・A』の鈴木さんと、足立さんですね。管理部長の矢豆やまめです。本社から連絡があり、お待ちしておりました。このたびは、東京からはるばるお越しいただき、ご足労をおかけしまして……。さぁさ、こちらへ……」




――――ここが、南アルプス工場……。




東京駅から中央線に乗りこみ新宿へ。そのあと特急に乗り換えて、山梨県に入った。さらに、最寄り駅からタクシーに乗って、やっとたどり着いた。


確かに遠かった……。もうすぐ午後3時だ。




 東京の街は、行くところ、行くところ、ぎっしりと建物が詰め込まれている。

 それに比べると山梨は、全体的にのんびりした雰囲気が漂っていた。


 最寄駅からタクシーに乗り込むと、車窓から見える街並みは、すぐに山と畑に移り変わっていった。




正門付近でタクシーを降りて中を見ると、大きな白い箱型をした、平屋の建物が立っていて、入り口には『サクラマス化学株式会社』のプレートが掲げてあった。




灰色と青のツートンカラーの作業着姿の矢豆管理部長のあとを、ひたすらついて歩く。

どうやらこの事業所は、手前が事務所で、奥が工場という建物の構造みたいだ。外観のサイズから推測すると、多分、工場のほうがずっと広いんじゃないかと思う。



鈴木先生と一緒に通されたのは、事務所の、さらに奥にある小さな個室だった。入口ドアの上には“工場長室”と掲げてあった。




「工場長は今、労災事故で病院に運ばれた新島にいじまの面会に行っておりまして……おそらく、そろそろ帰る頃だと思います。少々お待ちくださいね、今、お茶を持って参りますので」



矢豆さんが去った後、ぐるりと部屋を見渡す。

この部屋のインテリアは、どこかレトロで懐かしい感じだ。



亡くなったおじいちゃんとおばあちゃんが住んでいた家で見たことがあるような、金の置き時計とか、額縁に入れた賞状、優勝カップのようなもの。石を削って作られた干支の置物、水晶、高そうなお酒の瓶。デスクの上には、書類が山積みになっている。



壁には、黄色と黒の斜め縞柄を背景にして、「安全第一」と大きな字で書かれたポスターや、富士山の写真カレンダー。



そして横には、……外国人男性のアップの顔写真が、大きく印刷して飾ってあった。襟元に蝶ネクタイを着けていて、何かのパーティで撮影された写真のようだ。




「鈴木先生、あの方、誰でしょうか。ハリウッド俳優ですか?」




「ん?……ああ。彼は“ヒーロー・マスク”ですね。電子決済システム、電気自動車、ロケットの会社などを次々に立ち上げて、世界有数の大金持ちとなり、最近では『チィッター』というSNSの会社を約6.4兆円で買収した、気鋭の実業家です」



「そうなんですか……『チィッター』の人……私も時々、『チィッター』見てます。色んな人の“チィート”が140文字で流れてきて、見てると飽きないんですよね。でも、なぜ、南アルプス工場に、ヒーロー・マスクさんの写真が飾ってあるんでしょうか。ここに訪問した時の写真というわけではなさそうですし……」



「さあ……わかりませんね」



その時、工場長室のドアがバン!!と勢いよく開いた。



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