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第4章|サクラマス化学株式会社 東京本社 <3>女性の健康サポート その1

<3>



 通された応接室で、岩名さんが椅子を勧めてくれる。ふかふかした革張りの椅子に、浅く腰掛ける。



―――とりあえず、最初の名刺交換は、無事にできた。よしっ。



 心の中で、ガッツポーズを決めた。


 頂いた名刺を、名刺入れの上に置いて……。相手の名刺は、相手と同じように大切に取り扱うこと。

うん、イメージトレーニングの通りだ。




「それで……、早速なんですが、今日は『働く女性の健康サポート策』について、鈴木先生と、足立さんにご相談したいと思っています」



 岩名さんは、ほとんど化粧っけのない女性だった。小さなピアス、髪型はショートカット。主張しない形のニットとパンツ、モノトーンの服。でも、名刺交換だけで密かに汗だくになっている私と違って、堂々としている。さすが、肩書きが「課長」なだけある。で、ええっと……“課長”と“部長”って、どっちが偉いんだっけ?



「弊社はどちらかというと、これまで、『昔ながらの日本企業』という体質の会社でした……。私が入社したころは、女性社員だけが、朝に机を拭いたり、お茶汲みをやったりもしてたんです。でも、時代とともに少しずつ、男性社員や役員達の意識も変わって、今は正社員として採用される女性の数も増えてきました。ですが、彼女たちに聞いていると、やっぱり女性特有の、色々な体調の変化もあるようで」



「なるほど」



 相槌を打つ鈴木先生の方をチラっと見ると、鈴木先生は穏やかな笑顔を浮かべていた。

ん?想定範囲内の表情ではあるけど、普通に愛想笑い、できるんだ。『株式会社E・M・A』のオフィスにいるときとは様子が違う。




岩名さんが続けた。

「私も人事課長として、これから弊社で働く女性社員達が健康的に活躍できるよう、一歩進んだ社内制度を提案していきたいと思っています。足立さん、何かいい案はありませんか」岩名さんがこちらを見る。




「あっ、えっと……。そ、それは、これをっ」


 私は、カバンから、昨日印刷した紙の束を取り出して、岩名さんに渡した。

 岩名さんはそれを受け取って、サッサッとめくって見ていく。



「『女性の健康づくり』に関する厚労省の資料とか、そのほか、女性の健康に関連した、ホームページをっ……い、印刷しましたッ」


声を震わせながら、説明を続けた。

「働く女性へのサポートとして……、毎月の生理や、それに関連するPMS(ピーエムエス)、つまり、“premenstrual syndrome”と呼ばれる『月経前げっけいまえ症候群しょうこうぐん』への対応、妊娠出産に関するサポート、がん検診の推奨、などが考えられます。あ、『月経前症候群』というのは、生理周期に関連して現れるこころや体の不調のことで……」




「なるほど……。PMS、確かにつらいものですよね。症状にも個人差があるので、女性同士でも、症状に対する理解や捉え方が、大きく違うようですし」



「あ。は……はい」




――――私が言おうとしたこと、先に岩名さんに、言われてしまった。




 岩名さんが、静かに資料を閉じて、表紙をこちらに向けて、両手で差し出した。


「このホームページは、もう既に、私も見ましたので……。資料はお返ししておきますね」



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