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07 ファーレンの婚姻(2)

「兄さん、ラミーネ様との婚約が決まったみたいだね」

「うん」


 アッタリア戦の後、ラミーネとの正式な婚約が決まっていた。

 戦の事後処理を手伝うためにしばらくウエストリアに留まるが、一年後にはサウストリアのイスレイン家に入る事になる。


「おめでとうって言っていいのかな」

「ガリウス、祝ってくれないのか?」


「だってウルフレッド様が、あれだけ別の相手を見つける様にって言っていたのに、、、」

「それは仕方ないよ、僕もこんなに好きになるとは思わなかったんだから」


 八年の間、毎月の様に日々の事柄を綴った手紙や色々な楽しい贈り物が、ファーレンの所に届いていた。


 彼女から送られてくる物は、庭に咲いた花だったり、その日見た美しい景色の絵だったり、時には昆虫の抜け殻まで送られて、彼女の日常を知らせてくれた。


 そして月日が経つ間に、それらは届くのがいつしか楽しみになり、待ち遠しくなっていった。


「僕ではウルフレッド様の剣の相手にもならないのに、、、これからどうすればいいんだよ」

「大丈夫だよ、ウルフと本気でやり合える人はいないから」


「兄さんとは、出来ていただろ?」

「どうかなぁ、楽しんでいたのは本当だと思うけど、、、」


「本気では無かったってこと?」

「ウルフが本気になる事はないからね」


「でも、、、」

「ガリウスの真っ直ぐな剣をウルフは気に入っているし、余計な事を考えずに相手をすればいいよ」

「それならいいんだけど、、、」


「それより、お前もハーフスコード家の令嬢と婚約が決まりそうなんだろ?」

「うん」


「ラディア嬢だったかな、アッタリア戦の後、緑樹院に通っていると思ったら、いきなり婚約したいと言い出したから驚いたよ」

「それなんだけど、、、」


「どうした?」

「ラディアから聞いたんだけど、キリニスの緑樹院を作ったのが、ローエングルグ家によるものだって言われているみたいなんだけど、、、」


「あぁ、そのこと」

「兄さん、知っていたの?」


「だからハーフスコード家も、お前からの婚約話を断れ無かっただろ?」

「でも、ローエングルグは関係ないことなのに、、、」


「ハーフスコード家やリステアン家は、“癒しの使い手”である娘を嫁がす事を嫌がる。キリニスの緑樹院の件で、ラディア嬢との話が纏まったなら良かったじゃないか」

「それはラディアも言っていたよ」

「お前達は、お互いが望んでいたのに、家の許しが貰えなかっただけなんだから、ウルフに感謝すればいいよ」


「やっぱりウルフレッド様なんだ」

「ウルフは、ラディア嬢の姉を妻にしたいみたいだから、多分お前の件はついでだよ」


「ついで?」

「ウルフの場合は、相手が了承していないみたいだからね」


「なら、援助していること知らせた方がいいんじゃない?」

「追い詰めたくないんだろ?」

 

 領内に緑樹院を作り、どうやらハーフスコード家の借財まで肩代わりしているらしいが、それを相手に知らせるつもりは無いらしい。

 彼女がそんな事を知れば、ウエストリア家からどんなの話があっても、断る事など出来なくなってしまうだろう。


「でも確実に囲い込んでいるよね」

「気付かれないようにね」


 だが逃がすつもりも無いようで、彼の関心を惹いた女性には諦めて貰うしかない。


「彼女が気付いてくれるといいんだけど」

「気付く?」

「ウルフから逃げられないことに」

「あぁ、確かに」


 そして“逃げられない”と気付かされた時には、きっと“逃げたい”とも思えなくなっているのだろう。

 彼が人たらしなのはいつもの事で、側にいると離れられなくなるのはファーレンだけではない。


 残り一年。

 ラミーネと共にいる事を選んだが、ウルフレッドから離れる事を寂しく思うに違いない。


 そして、ウルフレッドがファーレンと個人的な約定を結ぼうとしなかった事を、感謝するのと同じくらい恨めしく思うに違いない。

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