第十四話:二度目の失敗は決してない
―康太視点―
『康太って良く分からない奴だよな』
『時々変なこと言いだすし』
『付いてけねーんだよ。もっと普通にしてくれたらいいのに』
それは、小学生の時。
俺が盗み聞いた声だ。
常に一緒に遊んでいた友人たちの言葉に、俺は凍り付いた。
毎日当然のように遊んでいた。
俺のやる馬鹿な事を。
皆笑ってくれていた。
だから今まで、そんな風に思われていたとは思わなかった。
自分ではどうすればいいか。
どう直せばいいのかなど、分からなかった。
『……康太、あんまりお母さんに迷惑をかけないで頂戴? 普通にしてればいいのよ』
頼れる人間なんていなかった。
相談しても変わらなかった。
どうすれば普通になれるのか。
どのように人と関わり合えばいいのか、息を潜めて考え続けた。
自分を表現しなくなって。
いつしか、常に誰かの顔色を伺いながら話すようになっていった。
自分を偽るだけで…普通にしているだけで良い。
相手の顔色を伺いながら話しているだけで、誰かに合わせているだけで多くの人が俺の周りに集まってきた。
沢山の人間に囲まれながら遊んで。
笑いあって、何時だって周りには誰かがいるようになった。
でも、本当は……俺自身は。
ちっとも面白くなんてなかった。
だって、俺は何時まで。
いつまで伺えば良い?
学校に居る時も、家に居る時も、全く心が休まらない。
常に誰かの目が有って、変な奴だと思われないように顔色を伺う。
表では平然としていながら。
内心では常にビクビクして。
中学生になっても変わらなかった。
だから、もうこれで良いと思った。
だって、周りには人がいるから。
それだけで俺は幸せなんだと思い込むようにした。一人は怖いから。静寂なんて耐えきれないから。
誰かの顔色を伺い、囲まれる。
それが普通の幸せなのだから。
高校生になっても、どうせ同じだと思っていた。
『――ありがとう、康太』
『………!』
『本当に、毎日が楽しいんだ』
そんな時、皆に出会った。
高校の入学式の日。
俺の隣の席で面白いことを話している男女に釣られて話しかけた。
多くの生徒がいる空間で。
恥ずかしげもなく。
黒歴史の話なんて話し始めた彼らに興味を持った。
ビクビクしていた筈の男子――陸は真っ直ぐに俺の眼を見て話をしてくれた。
明るくて元気な女子――春香ちゃんは俺の馬鹿みたいな話に喜んで付き合ってくれた。
物静かで、でも芯の有る女子――西園寺さんはやり過ぎた時は諭すように諫めてくれた。
『――俺は、普通じゃなくて良いのか?』
『『へ?』』
『皆に合わせなくていいのか?』
『何馬鹿なこと言ってんの? 康太君は陸とバカやってればいいんだよ』
『……春香? えーと…ともかく! 康太がいてくれるだけで楽しいから。こっちからお願いしたいくらいだよ?』
『あんまりやり過ぎたら怒りますけどね?』
会えて良かった、ありがとうなんて。
陸は何時も、俺に言ってくれる。
でも、本当に感謝したいのは。
此方の…俺の方だったんだよ。
どれだけ馬鹿をやっても。
陸は純粋な眼で楽しそうに笑ってくれた。春香ちゃんは付き合ってくれたし、西園寺さんはしょうがないですね、なんて言いながら見守ってくれた。
この世界に来てからもそうだった。
戦いや訓練がどれだけ苦しくても。
誰一人として、他人を責めたことなどなかった。
今回……俺は失敗した。
春香ちゃんを守れなかった。
なのに、陸も西園寺さんも。
俺のことを責めなかった。
ナヨナヨしていた俺の心を完全に見透かして、奮い立たせてくれた。
―――何が何でも春香ちゃんを助ける。
他の誰かにではなく。
自分自身にそう誓ったんだ。
誰よりも、何よりも大切な仲間だから。
これからも一緒に冒険をして。
皆でいっぱい笑い合いたい。
こんな所で終わるつもりなど毛頭なく、皆揃って先へ進むんだ。
◇
先生と並び、ひたすらに走る。
現れる敵を次々に気絶させ。
ただ、前へ前へと進む。
その走りに迷いは無くて。
この人は右に左に通路を進んでいるが、一体何を頼りに進んでいるのだろうか。
「先生、どこ目指してんすか?」
「勿論サーレクトさ」
「………ッ」
「一番厄介なのを残しておくわけにはいかないからね」
教国で春香ちゃんが貰った剣で。
敵を倒しながら返してくる先生。
その動きは何処までも洗練されている。
……サーレクトは強かった。
もしあの時大剣があっても、結果は変わらなかっただろうと分かる程に。
今の俺ではどんなに足掻いても。
逆立ちしても勝てない相手だ。
冒険者のランクとしては。
先生よりも格上のS級で。
大陸に数えるほどしかいない最強の使い手の一人。
でも、この人が負けるビジョンなんて全く想像つかない。
俺はそれだけ先生を信用しているから。この人がどれだけ凄いか分かっているから。
……何か、姿違うけど。
「こんな地下があるとは思いませんでしたね」
「珍しいことじゃないさ。……モルガン家にもあるし?」
マジでこの国の権力者たち。
一体、何をやってんだよ。
やけに下へ向かうと思っていたら、いつの間にか薄暗い石製の地下空間だ。
こんな設備を備えて。
何をしているかなんて、想像したくもない。
死角から襲い掛かってきた剣士。
その一撃を膂力の差で防ぎ。
大剣の腹で思い切り吹き飛ばす。
彼らは巻き込まれただけだから基本的には不殺の方針だが、本当に危ない時は加減など必要ない。
今まで強い人や魔物ばっかり戦ってきたから分からなかったが、俺も成長はしてるんだよな。
仮に、敵が一般人だったら。
何十人掛かってきても負ける気がしない。
「やるじゃないかコウタ」
「そうっすか?」
「あぁ、まるでゲオルグだ」
「――それは褒めて……るんですよね、当然」
若干、怪しさが混じっているが。
多分…恐らく褒めているだろう。
実際、俺の目標はゲオルグさんのような戦士だ。あの人のような盾役と攻撃を両立できる、皆を守れる存在になりたい。
あの人が他人を全力で守護するような。
高潔な性格かどうかは別として。
そんな事を頭で考えながらも。
入り組んだ通路を進み続ける。
そして、いくらか広い書庫のような場所に辿り着いた時、不意に先生が立ち止まった。
「―――これは…まさか」
「先生?」
俺の気配感知には反応が無い。
先生は何を感じたのだろうか。
こうして止まっている間にも。
次々に新手がやって来て。
しかも、この部屋には幾つものドアがあって、何処からやって来るかも分からない有様。
かなり、面倒だなぁ。
間取りに気を配って。
後方を警戒しつつ、向かってくる敵に剣を構える。
向かい打つ準備としては。
これで、十分だろう。
しかし、それを遮るようにして。
女先生が俺の前に立った。
「コウタ、ハルカは間違いなくその通路の先に居る」
「―――え?」
「大規模な魔術を発動させたようだ。それだけ、多くの敵がいるんだろうね」
先生が目を向けているのは。
俺達が来た通路の正反対で。
……春香ちゃんがッ!
その先は…まさに深奥で。
「先生は、どうするんすか?」
「のんびり歩いて来ている奴が居るから、迎え撃つつもりだ」
「………ッ」
それは、間違いなく。
アイツなんだろう。
「そちらは、任せて良いかい?」
「―――はいッ!」
剣を抜いて構える先生の言葉に。
俺は、背を向けて駆け出した。
出会う敵はみな手練れだ。
だが、それがどうした。
魔力欠乏なんて知ったことかとばかりに、全力の“練気”を発動させて駆け抜ける。
本来の戦闘術であれば。
そこ迄広くない通路で。
大剣を使うのは愚策であり、危険だ。
この武器は威力と引き換えで。
機動力と精密動作性に欠ける。
一瞬の油断が勝負を分ける戦いにおいて、壁や物に引っかかるだけでも大きな隙となってしまうから。
だが、上手く扱うことができれば。
狭い場所において、大剣から繰り出される面の攻撃は、回避が非常に難しい強力な一撃となりうる。
「そこ――邪魔だッ!」
「ガァ!?」
「……この餓鬼――ッ!?」
今の俺はさながら台風。
決して己の足を止めず。
回避することもなく、全力で進み続ける。
そう、攻撃を受けなければいいのだ。
接敵した瞬間には、攻撃を終える。
一撃で片を付ける。
そうすれば回避の必要などない。
脳死の俺らしい理論ではあるが。
陸が聞いたら何て言うだろうか。
仲間たちの事を頭の片隅で考えながら、小さな災害となって暗い通路を駆けた。
そして突き当りに到達し。
開け放たれた大扉に飛び込み――居た!
春香ちゃんの姿が、そこにはあった。
長剣を持った男が居て。
逃げるように戦う彼女。
石の床は一面水溜りだらけで、複数の敵が気絶して転がっている。
なら、周りは気にしなくて良くて。
ただ春香ちゃんと戦っている男に向かって駆ける。
舞うように、踊るように。
攻撃を避けていた彼女は。
突然、水溜りに足を取られ。
それを勝機と、見たのか。
男の剣は、今まさに振り下ろされる瞬間―――ッ!
全力で石の床を蹴る。
跳躍して剣を伸ばす。
勇者は生け捕りじゃなかったのか?
今のは、完全に致命傷だっただろ。
間一髪、俺の大剣と奴の長剣が重なり、激しい金属音が空間を支配する。
既に気付いていたのだろう。
奴は俺の眼を真っ直ぐに見据えて口を開く。
「勇者……大剣使いか」
「おうともよ。桐島康太、ただいま参上。――すまん、春香ちゃん。ちょっと遅れたか?」
安心させるように。
少しばかりキザったらしいセリフを吐く。
だが、さすがは春香ちゃんだ。
まるで心配などなかったとでも言いたげに、いつもの笑顔を俺に向けてくれた。
「……女の子を待たせるなんて、モテないよ? 康太君」
久々の第一声がそれかよ。
これでも、俺は勇者。
お姫様を救いに来たつもりだったんだがなぁ。
決して油断をしないよう。
目の前の男と鍔迫り合いをしながら気持ちを切り替える。
「じゃあ、せいぜいカッコイイ所を見せるとしますか」
「………勇者」
「狭霧のギルバートだよな? あんた」
「………ほぅ」
「知ってるの? 康太君」
「しっかり情報をインプットしてきたからな。今日の俺は一味違うぜ?」
バットの如く大剣を振りぬく事で。
ギルバートを俺たちから引き離す。
話の通り、直接戦闘のパワー型じゃないみたいだな。
だが、正直言って。
それでも勝率は低そうだ。
ここはさっきまでの通路とは違って大部屋で。
相手は、仮にもA級冒険者。
戦闘型で無いと言っても。
単独撃破は厳しいだろう。
春香ちゃんの魔術援護があって…五分に届くかどうかって所か?
「春香ちゃん、援護は出来そうか?」
「……ゴメン、魔力欠乏。もう少し待ってね」
―――まあ、そうだよな。
気丈には振舞っているが。
顔は血の気が失せている。
恐らくは、上位の魔術を行使した後も魔力を使い続けたのだろう。
援護は期待できないか。
「……後ろの人たちはどういう関係なのか。説明してもらっても良いか? 色男」
入り口を塞ぐように立っているギルバートに問いかける。
部屋に入った時から。
気になってはいたが。
この部屋は牢獄として使われているのだろう。体を震わせながら牢の奥に固まっているのは全員が若い、もしくは幼い女性ばかりで。
人権が保障されているようには思えない。
俺が今までに聞いた話から推察するに、彼女たちはサーレクトのために集められたのではないだろうか。
ガキの癖に大層な女好きらしいし。
知れば知るほど嫌になってくるな。
この国の権力者たちの実像は。
仲間になってくれと乞われても真っ平御免だ。
「……………」
「おい、聞いてんのか?」
俺の言葉を受けても。
まるで口を開かない。
どうやら、関係ないことは喋らない無口キャラで通したいらしいな。
俺は剣を構えながら。
奴の動きに集中する。
眼の動き、腕や足の挙動を見極め、どこから仕掛けられても直ぐに対応できるように。
対応できるように……?
「……あれ? ちょっと待ってくれ」
だが、奴の周りの空間が。
揺らめいたと感じた途端。
どんどん、奴の姿と気配が薄れていき……ッ!
「――マジか! それ反則だろッ!」
まるで、何処に居るのか掴めない。
事前情報で概要は聞いていたが。
それでも、相対してみると。
その隠形術は驚愕に値した。
姿だけでなく、匂いや殺気などの気配まで完全に消すことが出来るとか、そりゃあ強いわけだ。
今迄の死闘の中で。
積み上げた経験が。
危機感知が…まるで通用しない相手。
先生が奴を厄介と評した意味が、ようやく理解できた。
やっぱり実際に戦ってみないと。
その脅威は分からないものだな。
どこから来るかも分からない攻撃にどう対応するか必死に考える。
―――そんな時。
「康太君! 十時の方向五メートルッ!」
「……ッ! ――ウラァ!」
後ろから、春香ちゃんの声が響き渡る。
何故どうしてなど。
脳で考えるのを放棄し。
俺は、大剣を思い切り横薙ぎに振るう。
手に伝わってくるのは。
金属を打つ反動と痺れ。
どうやら、防がれたらしいな。
空間には苦虫を噛み潰したような表情で春香ちゃんを睨みつけるギルバートの姿が浮かび上がってきた。
まあ、ざまぁ見ろってことで。
「やっててよかったクロックポジション」
「ないす!」
「……春香ちゃん」
「んー? あーにー?」
「もしかして、異能か何かか?」
「あったりー。無事に帰ったら教えてあげるね」
その力は、心強いことこの上ない。
前情報にあった奴の最大の強み。
それを封じる事が出来たのだ。
まさに、最高の援護で。
これが、彼女の異能。
まだ良く分からないが、気配を感じられるとかそんな感じなのか?
明らかに、狙いが俺でなく。
春香ちゃんに切り替わったギルバートから、彼女を庇うようにして前に出る。
「お前の相手は俺だろう?」
「………ッ!」
何とかして俺の横を抜けたいらしいが。
こちとらタンクみたいなもんなんでね。
守るのは非常に得意なのさ。
伸びてきた突きを大剣の腹で受け止め、そのまま振り抜く。
通常の剣に対しては。
大剣では手数に劣る。
だからこそ、最小限の動きで防御し、重い一撃を叩き込む必要があるのだ。
何度も隙を縫うようにして。
俺へ斬撃を放つギルバート。
その攻撃は一撃一撃が重く、速い。
今までの実戦で戦ってきた人間の中では、間違いなく最強だ。
俺は幾度となく危機に陥る。
「――ソコだよッ!」
「………グッ」
「サンキュ! 春香ちゃんッ!」
だが、その度に春香ちゃんの援護射撃が飛んでくる。
俺が欲しいと思った時に。
そのままのタイミングで。
やってくる魔術攻撃は、消費を抑えた低威力のものだが、ギルバートの一撃を鈍らせるのには十分過ぎる。
何度も押されては押し返す。
そんな戦いが続く中。
大剣が軋むような。
嫌な音も響き渡る。
「オイオイ、あんたA級なんだろ? 本当に直接戦闘は苦手みたいだなッ!」
「………シッ!」
俺の言葉にギルバートの攻撃と殺気が一段階強化される。
どうやら、本人も気にしてたみたいだな。
暗い石の牢屋に響き渡るのは。
激しく鳴る、剣戟の音のみで。
奴も表情こそ変わらないものの、大剣の一撃を何度も受けて腕が痺れてきている頃合いだろう。
まぁ、ひつじょうってやつだ。
打ち合っている俺の場合。
その理屈は通用しないが。
どれだけ戦闘が長続きしても、腕が上がらなくなる心配はしなくていい。
本当に、俺にピッタリの異能だよ。
「……何故、なぜだ」
「さあ、なんでだろう――なッ!」
奴も疑問に思ってきているのだろう。
腕に負担がかかるように。
俺に攻撃を与えている筈。
なのに、剣閃は全く鈍らない。
長剣と大剣、互いの得物が一際大きな音を響かせてぶつかり合い、俺たちは互いに仰け反る。
―――これは、そろそろかな。
床を蹴って剣を振り上げ。
最後の仕上げとばかりに。
奴の得物に向かって、大剣を叩きつける。
全てはこのために。
この一撃のために。
部屋に響き渡ったのは大きな破砕音。
それは、俺の握っている武器から出たものだ。
「――康太君ッッ!」
「………! これで―――なッ!?」
俺の剣が砕けた事で。
ギルバートが勝利を確信した表情を浮かべる。
武器が無ければ、勝敗は決したと言っても過言ではないから。
対人戦の経験値量が圧倒的に勝るギルバートがそう思うのは当然のことだと言えた。
しかし、その表情は一瞬にして。
驚愕――苦痛へと変化する。
俺は意図的に砕け方を操作した剣を振り抜き。
捉えたギルバートの身体を。
石の床へと、縫い付ける。
無論、奴からの反撃は来るが、俺の肩を斬り裂く攻撃には目もくれない。
これくらいなら、後からでも。
春香ちゃんが治してくれるだろ。
「――もう、動くな。これ以上動けば、命の保証は出来ないからな」
「グ…ッ…コレ……は」
血を吹き出して倒れてはいるが。
この程度なら死なないだろう。
……無理に動かない限りは。
これこそが、俺の作戦で。
大剣が壊れ始めていることを感じていたからこそ、思い至った起死回生の一手だった。
「――剣が砕ける瞬間を…狙っていたとでもいうのか?」
「おう、当然」
「……そんな芸当が」
「俺は日和見だからな。何かを伺うのは得意なんだよ」
顔色を、タイミングを、空気を。
伺ってきたのが俺の半生だ。
普通に剣を扱っていたなら気付かないような小さな違和感を感じ、最高のタイミングで決定打を入れるための準備をするのはそう難しいことではない。
陸たちと一緒だから肩肘張らず。
自然のままの俺で笑えるんだ。
皆と一緒に旅を続けるためなら、いくらでも賭けに出てやる。
とにかくこれで勝負ありだ。
死にはしないだろうが。
コイツはリタイア。
立ち上がれるだけの力を有していない。
本当に、上位の冒険者にもなると血だらけになっても普通に会話してるから怖いんだよな。
俺の武器は壊れちまったから。
コイツのを借りるとするか。
「康太君、皆を助けてあげないと」
「あぁ。でも、そこら辺に転がってる奴らが起きたらマズいんじゃないか?」
人質にされたら厄介だ。
これ程まで数が多いと。
護衛をしながら外に向かうこともできないだろうし。
「大丈夫! 全員魔力欠乏になってるから」
「………お、おう」
「起きてもまともに動けないだろうから!」
「…‥エッグ。じゃあ、牢屋の中と外を入れ替えるか。鍵式の錠じゃなさそうだし」
俺も魔力欠乏にはなった事があるが。
体がマヒしたかのように。
動く事が出来ないんだよ。
意識はあるのに動けないっていうのは、かなりキツイからな。
「さあさ、出所のお時間ですよー」
「「…………ッ!!」」
「大丈夫です。俺達は、助けに来ただけなんで」
春香ちゃんと一緒に。
女性たちを救出しながら、この後の事を考える。
この部屋に来るまでの通路は。
先生が塞いでいる筈だが。
ここに来るまでの間に戦った奴らが、意識を取り戻して追ってこないとも限らない。
先生が来てくれるまでは。
ここに居るのが良いよな。
暫くは、籠城と行くか。
先生――今頃はサーレクトと戦闘になってんのか?




