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暗黒卿の魔国譚  作者: ブロンズ
第三章:過去編 彼と六魔の三百年(壱)

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第十一話:向かい合う鬼と騎士




 人間も……亜人も……無論、魔族だって。


 やろうとさえ思えば。

 奴らのやっている事は、大抵出来た。


 魔術とかいうのは……まぁ、まるで意味不明だったが。

 それでも、殆どの事は出来たのだ。


 

 だが、絶望的な事に。

 俺は、弱かった―――弱すぎた。

 周りには誰も居なくて、俺は常に泥に塗れて転がっていた。



 ―――強くなければ、生きる価値無し。



 俺が生まれた種族であるオーガ種は、まさしくその言葉で表せた。

 どれだけ頭が良くても。

 どれ程器用でも、何でも一人で出来ても。


 腕っ節一つで、引っ繰り返る。

 力の弱い奴から当たり前に殺され、見捨てられた者は魔物に喰らわれ死んでいく。


 どれだけ戦っても。


 強くなれなかった。


 まるで、戦い以外の全てに才能を振り切ってしまったように。

 聞こえてくるのは、何時だって同族の罵声だった。




『おまえ、よわすぎ』



『おまえ、いらない』



 

 ……そんな時、夢を見た。


 弱い筈の俺が、誰よりも強くなり。

 同族を纏め上げる夢。

 魔物に怯える事もなく、仲間と殺し合う事もない……平和な毎日を享受する夢だ。


 ハッキリ言って、馬鹿馬鹿しく。

 簡単な筈もない夢物語。


 しかし、俺は憧れてしまった。

 分不相応にも、その大望を抱いてしまった。



 ―――何より。



 簡単ではないとは思ったが、不可能だとも、全く思わなかった。

 だって、同族が強くなれるのだから。


 他種族が国を作れるのだから。


 そこに、実物があるのに。

 俺に、何故出来ないと言い切れる?



 ……否、俺に出来ない筈がない。




『―――ヤッテヤロウジャネェカ』




 決心してからは、まさに地獄の毎日。

 止めりゃ良かったと何度も思った。



 人間の知恵を学び、魔族の戦闘を学び、魔物の闘争を学んだ。


 地べたを這いずり。

 血反吐をまき散らしながら。

 死闘の中で全てを吸収しようと足掻いて足搔いて、誉れなどクソくらえと、往生際悪く逃げまくった。

 

 どれほど繰り返したかも分からない。

 どれほど死に掛けたかもわからない。


 でも、いつの間にか。

 俺は一番上に上り詰めていた。


 互いをただの同族ではなく。

 仲間として、家族として認識することができるようになり始め、自分以外の為に戦うということを知った。


 仲間同士で殺し合うことを禁じ。

 むやみに他種族を殺すことを禁じ。

 強大な魔物も連携して対処するように教導した。

 確実な敵の倒し方を叩き込んで、時に助けた他種族からも有益な知識を全て吸収した。



 ……死亡率が極端に減り。

 今度は、増えすぎた仲間を守り切れなくなってきた。


 食糧も、住む場所すらも。


 多くが足りなくなる有様。

 何も考えず発展させた頭も全く足りない自分を殴りたくなったし、実際何度も殴った。


 だから、今度は。

 安寧の地を求めて、ただ進み続ける事にした。



 ―――そして、今。



 ―――俺は、魔族の都市を手中に収めている。



 この都市にやってきた当初は、本当に驚いたものだ。

 見た事もない、調和のとれた風景。


 美しい装飾や、調度品。


 俺達が殺し合っている間に、他種族はここ迄進んでいたのかと。

 驚き、呆れる程に発展していた。

 それを勝ち取ることで、一時の栄光を享受することが出来た。



「………だけど、なァ……?」



 誰もいない執務室で、一人溜息を吐く。


 この都市の領主サブナーク・アインハルト。

 ヤツは今迄戦った敵の中でも、最強だった。


 そして、遂さっき対話した騎士。

 アルモスという男も―――いや。曰く、アイツはそれ以上に強いらしい。


 そんな化け物が。


 魔皇国には、まだいると聞いて。

 逆立ちしても、勝つことは出来ぬと聞いて。



「……無理、だよなァ……?」



 何より、アイツの紅い瞳だ。

 アイツの、両の眼は。

 俺と同じで、何一つ諦めないという強い意志を灯していて。


 あの牢を破るのは不可能。

 その筈だが……しかし。


 短い対話の中で、確信した。

 あの男は、必ず戻って来るだろうと。

 

 騎士には明日ここを去ると言ったが、実は既に準備は出来ている。


 一刻も早く逃げろと。

 本能が警鐘を鳴らしている。

 久しく鳴る事の無かった、俺の命綱たる警鐘が。



「逃げる? 逃げない。逃げる? 逃げない……」

 


 利益と損害を天秤に掛け、俺は深く考える。


 ―――そして。


 最後の砦として。

 頭の片隅にあった本能。

 それが命ずるままに動く事を決めた。



 この機を逃せば、多くを失うだろうが。

 

 今すぐであれば。

 多くの利益を望むことが出来るだろう。



 そう判断した俺は。

 この都市から去る事を伝令させんと、待機させている部下に……。



「大将ッ! ―――てェへんだッ!!」



 慌てた様子の仲間が飛び込んでくるが。

 本当に動揺しているな。

 同族の中では比較的頭のまわる奴で。


 町の総括として、責任者として配置させていた部下だ。



「どうした? また侵入者が―――」

「違うッ! 大将のにせものが騎士たちを連れて!」

「―――は……?」

「そっくり! でもうごきがちがう! 騎士達は、捕まってた奴らだ!」



「………ッ―――!?」



 そういう事かよッ!

 やりやがったな、あの野郎ッ!


 ……だが、どうやって!?


 見つからずに通ることは出来ないようにした。

 牢屋への通路は鉄壁だった。

 

 侵入者がどれだけ強くても。


 力づくで通れば。

 必ず、俺へと報告が入るようになっていた。



 なのに……クソッ!



 状況の確認を行うため、俺は椅子から立ち。

 急いで扉へと向かって行く。


 だが、扉は向こうから開き。

 入り口に立っていた部下は、背後からの攻撃で昏倒する。



「―――やぁ、サーガ。元気そうじゃないか。急ぎでどちらまで?」

「……てめェ」



 悠々と部屋に入ってきたのは、やはり奴だった。

 その手には既に剣が握られていて、付けていたはずの首輪も外れている。


 牢の方は完全に破られてしまっているらしい。



「……どうやって、脱出しやがった」

「ソレを聞いてどうする?」

「……今後の教訓だ」

「なら、教えておいてやる。お前が心配するべきは、自分があそこに入った後の事だけで良い。無論、首輪付き」



 余程あの首輪が気に入ったらしく。


 アルモスはニヤリと笑うが。


 いま、コイツの相手をしている暇はない。

 すぐに部下を招集して。

 街中での戦闘に持ち込まなければ。


 勝率は、圧倒的に低下するだろう。


 一刻も早く、ここから出なければ。



 ……どうする?



「悪いが、今は忙しい。牢で待ってててくれ」

「ちょっとくらい良いだろ? 付き合ってくれ―――よッ!」

「……なッ―――!?」



 コレだから……だから、魔術ってヤツはッ!!


 戦闘の中で機会を伺う。

 そう方針を固めた俺に対し。


 奴は、見透かしたように行動へ出た。

 それは、魔術。

 突如発生した巨大な水の塊……それは、むかし人間が持っていた絵本に描かれていたモノ。

 ()という存在に酷似していて。


 その巨大な龍が。

 奴の操作で、こちらへ巨体を躍らせる。




「――グッ―――ッッァァッ!?」




 得物で防ぐも、途轍もない力で跳ね飛ばされ。

 執務室の壁を貫通し。


 そのまま、外へ放り出される。



「――っざっけんなァァァァッ!」



 受け身を取って着地したのは。

 砦の真下に位置している中庭。

 ずぶ濡れになり、悪態をつきながらも上を見上げ。


 ヤツを睨み付けるが。


 壁に空いた大穴から。

 涼しい顔で見下ろしていたアルモスもまた、壁を蹴って降りてくる。



 ―――挨拶代わりってか?



 ふざけんなよな、マジで。


 明らかにその次元じゃないだろ。

 あの首輪は、魔力を吸収する類のものでは無いのか?


 どうして。

 まだ、魔術が使えるんだよ。



「お前……魔力欠乏じゃねえのかよ……!」

「おぉ、よく知ってるな。もう殆どすっからかんだ」



 肩をすくめて肯定するアルモス。

 もう、さっきの出鱈目は無いか?


 一応警戒はしてくが。


 ……と、いうより。



「―――おい、お前さァ」

「うん?」

「騎士が自国の砦破壊していいのかよ」

「……はははッ」

 


 どうやら、マズいとは思っているらしい。

 だが、こちらも。


 水を思い切り被ったことで。


 頭が冷えてきた。


 まずは、コイツを如何にかしないと。

 合流なんて叶わない。

 だから、俺は目の前の騎士に向かって得物を構える。



 勝てるかどうかじゃない。


 

 仲間を見捨てるなんて、そんなつもりは、欠片もない。

 アイツ等には、俺がいなければいけないのだから。


 仲間とは、大切な家族だから。

 


 ここまで来て、諦めるわけにはいかないッ!!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] この部分、2回書かれてる >この都市に来た時は。  本当に驚いたものだ。  見たこともない調和のとれた風景。  美しい装飾や調度品。  俺たちが殺し合っている間に。  他の…
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