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暗黒卿の魔国譚  作者: ブロンズ
第三章:過去編 彼と六魔の三百年(壱)

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第七話:帰るまでが治癒旅行

―アルモス視点―




「――では、龍公様。お元気で……!」

「うむ。皆、また会おう。爆発でくたばるでないぞ?」


「「はははッ」」

「えぇ、アレは、我々の間では日常茶飯事ですよ。騎士様も、お元気で」

「扉の下敷きにならぬように、な?」



 塔の魔術師たちに挨拶し、昇降機でなく階段をゆっくりと降りていく俺達。

 発案は俺だが。

 無論、爺の腰にダメージを与える為で。


 当然、同行者にイザベラの姿もないが。

 相変わらず、研究や読書か?

 或いは、付いてくる準備でもしているのかもしれないが。


 もしも機を逃せば、一生出てこないような気もするよな。



「では。わっぱ、馬車に向かうぞ」

「腰は大丈夫か? 車椅子なら借りてくるが」

「――ハ……ッ! 帰ったら存分にしごいてくれるわ!」



 都市で最も高いとされるローレランス家の尖塔。

 下りるのも一苦労だし。

 腰を悪くしないように聞いてやったのにな。


 まぁ、一か月に満たない期間だったけど。

 強烈な思い出だったと。

 

 改めて思い返しながら、広い通りを歩いていくと。



「――やぁ騎士様! お帰りですか?」



 顔見知りになってしまった商人に呼び止められたが。

 コイツの事も、忘れたくても無理だ。


 オークの睾丸をブルンブルン振り回すような奴はな。


 魔物狩りの行き帰りでよく話したし。

 俺は、挨拶くらいはしていってもいいだろうと足を止める。



「ああ、世話に―――は、なってないな」

「左様ですね」

「……今日は何を売っているんだ?」

「本日はモルトの特上物とオーガブラッドのカクテルです」


「…………?」

「スレイホースの肥やしなどおススメですが?」

「早い話が、血の入った酒と魔物の排泄物じゃな。後者は農耕に用いる最高級品じゃぞ。臭いが」



 何で潰れないんだろうな、この店。

 俺は知らんが。

 一定の需要があるのか?


 意外なことに。

 爺は、興味深そうに見ているし。



 ―――買わないよな?



「では、カクテルを一つ貰おうかの」

「龍公様! お買い上げありがとうございます。サービスにもう一本付けておきますので、騎士様もご一緒にどうぞ」

「……あぁ、貰おうか」



 やりやがったなクソ爺が。


 自然な流れで会計を済ませ。

 受け取った瓶の一方を投げ寄こす爺。


 オーガの血って飲めるものなのか?


 酒は嫌いじゃないが、どうにも抵抗があるな。


 商人に挨拶をしてから店を離れ。

 改めて、思い知る。

 来る前は、もっと静かな研究都市を想像していたのだが、帰る頃になって考えると、今までのどの都市よりも(うるさ)かったな。


 こういうのも、嫌いではないんだが……。



「都市を出た帰りに、何かすることはあるのか?」

「――んん? ……プァッ! ……そうじゃな。適当に魔物狩りでもして、どれ程モノにしたかを確認することにしよう」


「……髭に付いた血を拭え」


「ぬ?」

「すれ違う住民が怖がっているだろう」



 お前は聖夜の夜の老人か何かか?

 歩きながら、真っ赤な酒を呷る巨漢の爺なんぞ。


 はっきりホラーだ。


 零れた酒が長い髭に付着し、血液を思わせ。

 その姿は、さながらブラックサンタ。

 世の悪い子達に、素敵な夜をプレゼントしてくれることだろう。


 この爺なら、中々に似合いそうな事だしな。


 想像を膨らませながら。

 俺が歩く隣で。

 まるで水でも飲むかのように酒をかっ食らう爺さん。



「呑まんのか? これでなかなかイケるぞ。酒精は四割といったところで飲みやすい」

「……後で、割って飲むか」

 


 爺はまるで堪えていない様子だが。

 度数40%はヤバいだろ。

 少なくとも、呑みやすいとがぶ飲み出来る奴はそういない。


 酔って潰れたところで。

 景気よく首を落とそうと思ったが。


 八岐大蛇のような下戸でもないらしいな。


 未だ時間的には朝。

 既に呑んだくれる老爺。

 関わり合いになりたくないが、連れなので仕方なく共に歩いていると。


 やがて、馬車を停泊させた区画に着く。


 まぁ……コレを馬車にぶち込むか。


 泣き上戸か、絡み上戸か。

 どちらかは知らんが、暴れられたら手に負えない。



「酒は体に毒だぞ爺さん。馬車に乗ったら、大人しくしてろよ?」

「まだまだ飲み足りんわッ」

「おい、そんなイッキに……」

「うるさいわッ! ――そ~~ら、馬車が見えてきた」

「おい、耄碌(もうろく)クソ爺。その馬車は行商のやつだ。俺たちが乗ってきたのは隣」



 ―――ダメだこの爺。


 やっぱり酔ってるわ。

 いや、歳で見えないという可能性もあるのか?


 まぁ、とにかく。

 一刻も早く馬車にぶち込んで首を……ん?



「遅かったわね。待ちくたびれたわよ」



 爺を引き摺りながら馬車を覗くと、優雅に座る魔女の姿があった。

 どうやって特定したかは知らんが。


 付いてくる気は満々のようだな。



「見ないと思ったら、先に乗ってたのか」

「……む……ぅ? イザベラ……か?」

「お爺様、お酒飲んじゃったのね? そんなに強くないのに」


「おい、やっぱり弱かったのかよ」



 龍とか蛇は酒に弱いとか、そういう決まりでもあるのか? 

 訝しみながらも、爺が倒れないように馬車に積み込む。

 御年何歳かは知らないが。


 やっと要介護になったか……。


 まぁ遅すぎるくらいだろうな。


 年寄りを馬車に乗りこませる際に。 

 多少乱雑に扱ってしまったのは申し訳ないと思いながらも。


 一応、イザベラの方にも確認を取っておくことにする。



「―――で、付いてくるのか?」

「ええ。機会が出来たのだし、久しぶりに王都に行ってみるのも良いと思ってね。満足したら、すぐに戻ってくるつもりよ」

「……グゥ」

「「……………」」



 あい、分かった。

 イザベラはともかく。

 この爺は、その辺の獣道にでも転がしていこうか。


 勝手に野生に還るだろう。



「――お待たせしました、騎士様。すぐに出発して宜しいですか?」

「あぁ、頼めるか」



 俺達が乗り込み、丁度いいタイミングで。

 呼んでいた御者がやってきて。


 すぐに動き始める馬車。

 爺が徹夜したという話は聞いていないので、余程酒に弱いらしいな。



 ―――マジで、何でがぶ飲みしたんだよ。



「年寄りは睡眠時間が短いって聞いたんだが、爺ほど体力があるとよく眠るな」

「お爺様は常に全盛期だって聞いているもの。魔皇国最強の名に偽りは無いと思うわよ?」



 とても、そうは見えんがな。

 今なら殺れそう。


 しかし、狙いは闇討ちでなく。

 正面からの虐待だ。

 いずれは、爺を倒せるくらいに強くなりたいもんだな。


 それが、何十年……いや。

 何百年掛かるかは分からんが。

 目標が近くにあるのは、実に良いことだ。



 取り敢えず。

 今は魔物相手に力と技術を―――ぁ。



「そういえば、爺に魔術がどれだけ身に付いたかを見せる予定だったんだが」

「暫く起きないわよ?」

「……仕方ない。次の機会にするか」



 発案者である龍が寝てちゃ世話ないな。


 いずれにせよ。

 魔物は出てくるだろうし。


 馬車を守るのは俺の仕事だ。


 本当に、魔皇国周辺の街道は危険なんだ。

 ……今更だが。

 行商の死亡率とか、普通に高そう。


 その辺の対策どうなってんだろうな。


 俺は畑違いなので。

 隣に座っている魔女に聞いてみることにする。



「――なぁ、イザベラ。街道を移動する時って、行商たちはどうしてるんだ? 襲われるだろう?」

「当然対策はあるわ。領の魔術師が魔物除けの術式を馬車にかけてるのよ。結構高位の儀式魔術だからお金のない者は護衛を雇うでしょうけど」


「……そうか。その辺も課題だな」

「何かするなら、協力してあげても良いわよ?」

「いずれな、いずれ」



 この国で驚くことはとても多いが、最近では改善点も多いと思えてきた。

 魔物の脅威は、彼らにすれば当たり前。


 事故の様な物だが。


 ……しかし、俺にとっては意味不明。

 元々住んでいる世界が違ったからな。


 だからこそ。

 それらの問題をどうにかするのは、気が付いた俺の役目だ。


 この世界の魔物と魔族は仲間でもなんでもなく。

 襲われて喰われることはある。

 基本的に魔族は肉体のポテンシャルが高いが、一般の市民などはあまり人間と変わらないから。


 一応、騎士として。

 彼等を守る策を講じるのは当然。


 その時は、この魔女にも助力を乞うか。

 専門家だし。


 それに、俺だって。

 領に来た時は、魔物に―――あれぇ……?



「なぁ。この馬車って、その魔術掛かってるのか?」

「掛かってないわね。というより、貴方の訓練のために、お爺様が敢えてこういう馬車を選んだんじゃないかしら」


「じゃあ、魔物には―――」


「当然襲われるわよ?」

「……………」



 やっぱり。

 この爺さんの首落としておこうか。

 

 (いびき)かいて寝ているし。

 今なら、イケそうな気がする。


 考えるまま、俺は腰に携えた長剣を抜き放ち。



「―――刺しちゃダメよ? お爺様が起きちゃうわ」

「大丈夫だ。二度と起きないように寝かしつけてやる」

「訓練になるからいいじゃない。私も、暫く外に出てなかったから、手伝ってあげるわよ」


「……君が戦っている姿なんて、想像つかないな」



 イザベラが魔術を行使したのは、手ほどきの時だけ。


 ……だが。

 爺曰く、彼女は天才。


 これは、実に良い機会だ。

 今のうちに、妖魔種である彼女の戦いを見ておくことにしよう。



「魔術とはいえ、師匠の戦いを目に焼き付ける機会だな。街道に来るような魔物はハグレだろうが、取り零しが出るようなら頼む」

「えぇ、分かったわ。久しぶりで腕が鳴るわね」



 ……何処から取り出したのか。

 揺れる馬車の中でティーカップを傾けるイザベラ。


 まぁ、紛れもなく。

 技量は魔皇国の最高峰だろう。

 いつか、高位の術者と戦うことを想定して、彼女の動きを分析しなければ。


 さぁ、お手並み拝見と……。



 ……………。



 ……………。



「うーん……? 腕が落ちたかしら」

「――マジかぁ」



 別に、彼女の技量をなめていたわけでは無い。


 魔皇国最強である爺が。

 天才と称する魔術師なのだからな。

 だが、身内の贔屓目も少しはあるだろ……なんて考えていた俺が見たのは。


 遠距離から魔物を一方的に蹂躙する怪物の姿。 


 何の前触れもなく。

 突如発生する、津波の激流。


 呑み込まれた魔物は。

 放たれた極小の魔術式によって凍結し、砕け散り。


 隣では竜巻が発生。

 更に、紅蓮の焔が合わさり灼熱のとぐろを巻き、灰燼へ帰す。



 ……………。



 ……………。



 いや、アカンわ。

 出来れば――否、絶対に高位の魔術師とは戦いたくない。


 いや、戦わないようにしよう。

 そうしよう、そうしよう。

 


「ほら、楽で良いでしょ?」

「えげつねぇ……。特に、灼熱と極寒のヒートショック。――何でもありかよ魔術」

「組み合わせると、あっけなく倒せるのよ」


「……ソウデスネ、デショウネ」



 そりゃ、当然だよ。

 ヒートショックてのは。


 高温から低温。

 低温から高温など。

 急激な温度変化によって齎されるショック症状。


 普通に心臓も止まるが。


 それを、こんな圧倒的温度差で。

 しかも、何度もやられれば。

 如何に強力な魔物であろうとも、適応できるはずがない。



 絶滅コース待ったなしだ。



 まぁ、何より怖いのは、それを躊躇いなく乱用するこの女。

 

 魔力消費はとんでもない筈なのに。

 顔色一つ変えず。

 涼しい顔で、俺に向かって何か言おうとしている。



 ……次はお前、とか?



「どう? 私の魔術は」

「――いや、脱帽だ。正直勝てる気がしない」

「それは、どうかしらね。この距離なら、貴方の方が早いでしょう?」



 剣の間合いだからな。

 或いは、そうかもしれない。


 だが、そんなモノ。

 俺は勝利だと考えない。


 それに、何より。

 この怪物が、そういった攻撃への対策を怠っている筈がなく。

 倒せると考えるのは余りに傲慢。


 ……見栄を張りたい気持ちもあるが。


 素直なのが一番。

 今の俺では、この女性には勝てない。



「やるなら、正面から立ち会うさ。―――今の俺じゃ、君には勝てんが」

「……ふーん。やっぱり、貴方って正直なのね」

「そうでもないぞ?」

「そう? 男の子って、もっと負けず嫌いなものでしょ?」


「強者には、沢山会ってるしな」



 ただ、今回の一件で。

 越えなければいけない強者が追加されたのは確かだ。


 身近にあっては、伝説の魔王様たる陛下。

 最強の武人たる爺。

 そして、天才魔術師たるイザベラ。


 後は、バルガスさんとか。

 メノウさんとかも。

 長く生きている高位魔族には違いないのだろうが、その辺は未知数だな。


 戦ってんの見た事ないし。


 まぁ、取り敢えずは。

 前述の三者が飛びぬけたバケモノという事だ。



「でも、貴方なら。いずれ、越えられるでしょうね」

「その信頼は何処から出てくる」

「……貴方も、十分逸脱してることを自覚したほうが良いわよ?」


「逸脱―――ねぇ?」

「そう。魔人になってたった三年、この世界に来てさえ四年程でここまで上り詰めるような子を、他にどう表現したら良いのかしら」

「……こればかりは、レベルの高い師匠たちに感謝だな」



 シャルンドアに滞在している間に、彼女とは多くの話をした。

 その中には、俺がかつて居た世界の話もあり。

 

 彼女は興味津々だったのだが。

 魔術が無いということを伝えると、残念そうにしていた。


 やはり、妖魔種は。


 生来の魔術狂なのだろうな。



「――また、そのうち。貴方の居た世界の話を聞かせてもらおうかしら」

「気になるか?」

「全く足りないわよ。科学力も、力を注ぐ方向性もまるで違うのだから。新しい方向からの見識を得るのにとっても役立ちそうだしね」

「この世界は、数千年前に文明が崩壊しているらしいしな」


「漂白前の世界の話ね」

「君は、その辺の経緯とかを調べたりはしなかったのか?」



 彼女や、塔の魔術師。

 あれ程の研究バカにもなれば、積極的に調べそうなものだ。


 それに、俺自身。

 興味が無いと言えば、嘘になる。



「塔にも記録は残ってるし、実際に私も調べたのだけどね? どうにも、魔皇国だけじゃ研究資料が足りないわ。それこそ世界中を巡る必要があるかもね」

「ま、そうだよな」

「えぇ。だから――あなたに託すわ」


「清々しい他力本願だな」

「分担よ。得意な分野でしょ?」

「……多分な。俺は魔素の影響を受けずに西側に行ける可能性が高いらしい。もし分析が難しい資料が出てきたら、そちらに回すかもな」


「よろしく頼むわね。助手さん」

「そういう助手なら問題は無いんだが―――なっ!!」



 そう、改造以外なら問題ないと。

 他愛ない話をしながら、近付いてきた魔物を両断。


 あっさり殺れるのは、ハグレ故。

 普段俺が喧嘩を売ってるのは、人里離れた肥沃(ひよく)な場所を縄張りにする強力なヌシ達ばかりなので、これぐらいなら問題ない。


 ……そろそろ。

 来た時使った関所だな。

 何だかんだで、出立から数時間掛かってるし。



「――そういえば、指の調子はどう?」

「あぁ、大分勘が戻ってきてる。これなら問題ないな」

「なら、良かったわ。そろそろ安全地帯よね? 私は暫く塔から出てなかったから道を忘れちゃったけど。王都へは遠いし、ここで休むのでしょう?」


「ああ、そのつもりなんだが……なぁ」

「どうかしたの?」

「さりげなく土地勘を完全に失うな」



 この引きこもりさんめ。


 他所ならいざ知らず。

 居住地域周辺の情報も分からないのはどうなんだ?


 現代……地球ならまだしも。

 こちらの世界には、便利な電子マップもなし。


 迷えば、いずれ。

 魔物に喰われて終わりなのに。


 色々と思う所はあるが。

 言っても仕方ないので、関所の奥にある施設に馬車を乗り入れてもらい。



 ……爺は、何時起きるんだ?



 帰るのが遅くなるぞ。

 俺の責任にされたら困るが……果たして大丈夫なのか?

 

 いや、シャルンドア領では色々あったし。

 

 少しくらい遅れるのは、止む無しだよな。


 陛下も鬼じゃない……。

 いや、鬼ではあるのだろうが、そのくらいなら許してくれ……。




   ◇




「―――それで……? のんびーりと楽しみながら帰ってきた、と?」

「「はい」」

「……………」



 玉座で怒るは我らが陛下。

 こめかみに青筋を浮かべた国王の姿に、俺も爺もタジタジで。


 冷や汗を浮かべながら頭を下げる。


 結局、魔術を試したり。

 周辺の立地を紹介したりと。

 行きよりも長ーい時間を掛けて戻ってきたわけで。

 同じくらいの期間で帰ってくると報告を受けていた上司がキレるのも当然である。



「―――……まあ、よい。此度は、許す」

「「………えッ!?」」

「聞こえんかったのか? 許してくれるわ。任務は無事完了した上で、引きこもり娘も引きずり出してきたようであるからの」



 まさか、その場で許してくれるなぞ……。


 予想していなかった俺たちは、むしろ困惑するが。


 目を向けられたのは。

 俺達の後ろで同じく跪いていたイザベラ。

 流石の彼女も、自国の王を前にしては緊張の色を隠せないようで。



「―――陛下?」

「……お主は、その気になれば領を束ねることもできように、招集に応ずることもなく研究ばかりしおってからに。暫くは、王都で技術提供に務めよ」


「……畏まりました、陛下」



 良かった、流石は陛下だ。

 俺たちの事も許してくれたし。


 自堕落な引きこもりへも、特に刑罰は与えないようで。

 流石は、魔皇国を治め続けている名君。



 やはり、陛下は素晴らしいお方……。



「アルモスよ、其方は、急ぎ西方面の都市カルディナに向かえ。魔物除けの通用せぬ妖魔が現れたらしくての。つい先程、応援要請が来たのじゃ」

「……………」

「……コレ、わっぱ。返事せい」




「御意。任務、拝命いたしました」




 疲れと合わさり、一瞬放心状態になったが。

 爺の囁くような言葉で我に返り。


 取り敢えず、カッコ良く決めておく。

 ……休息をとる暇など、俺には与えるのも惜しいらしく。


 血も涙もない魔族の王へ向け。

 決意も新たに、心へ刻むことにした。




 ―――――いつか、必ず。




 ―――――絶対、あの魔王泣かす。




 後ろにいた魔女が笑っている気がしたが。

 多分、気のせいだ。

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