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暗黒卿の魔国譚  作者: ブロンズ
第二章:勇者一行と冒険のススメ

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第十五話:しばしの別れ、新たな旅立ち

―陸視点―




「――じゃあ。また会おうね、コーディ」

「はいッ! リクお兄さんも、ミオお姉さんも。皆さんも、お元気で! セキドウで待ってますから、絶対に来てくださいね!」


「俺も頑張るからな。――お兄さんって呼んでもらえるように」

「あたしも頑張るッ!」



 この都市から離れる馬車に乗るのは。

 コーディたち子供。

 あと、大きい積荷(なまもの)


 彼等は、ギルド本部のある都市セキドウへ向かうらしい。



「気を付けてくださいね? 着くまでは油断できませんから」

「俺が信用できないってのかッ?」


「「ノーコメントでッ!!」」


 

 しかし、そのお別れは。

 悲しいというより、再会の楽しみに溢れたのもので。


 思えば、彼とも仲良くなったものだ。

 この都市に来てすぐ出会い。


 初めて会ったS級冒険者である彼には、多くのことで助けてもらい。

 助言も沢山受けた。

 よろしくしたくないとか思ったこともあるけど。


 いつか、訓練でなら。


 戦っても良いかな? 


 本当は、優しい人だって知っているから。



「おう、コウタ。お前は俺と似てるからな。いつか、殺り合えるのを楽しみにしてるぜ? 勿論他三人もなッ?」

「戦闘スタイルの話ですよね? おれ、保育士志望じゃないんで」


「康太君やるぅッ!」


「……逞しくなったな、クソガキ。いつか全力で揉んでやる」

「できれば遠慮したいです」



 ゲオルグさんのガキ発言。


 久々に聞いたな。

 最近は、皆を名前で呼んでくれるようになったし。



「――子供たちも大丈夫だ。頼むぞ、ゲオルグ」

「あぁ、任せろ。裏の組織は、結局()()()()()()()分からなかったが、依頼としてはこれで達成で問題ないだろう。……そっちの件も、総長にも直接報告したいしな」


「……大規模な査察と捜査になりそうだな」




 子供たちの様子をチェックしていたらしく。

 先生が馬車から出てくる。


  本当に、保護者みたいだよね。


 ―――奴隷狩りの一件。

 裏から操っていた奴らは、確かにいたが。


 様々な手順を経て。

 ゲオルグさんたちが調査に入った時点で、既に全員死んでいたらしく。



 現在はギルド支部が調査を行っている。



 やっぱり、あの感じの悪い受付も繋がっていたらしいけど。

 元A級冒険者だったなんて。


 本当に、何があるか分からないものだ。


 でも、そんな実力者を。

 幾重もの護衛を。

 皆殺しにできるような存在って、何者なんだろう。



「んじゃ、また会おうぜ」

「皆さんっ! 本当にありがとうございました!」


「コーディちゃん、またねッ!」


「また、会いましょう」

「元気で、ね?」

「長旅で風邪ひくなよー? 変なもん食うなよー? あと、生水――」



 ……康太、長いよ。


 声も届かない程に遠ざかっていく馬車。


 もう、ゲオルグさんは御者さんで良いんじゃないかな。

 凄く板についている気が。


 僕たちがセキドウに行くのは。


 まだまだ、後だと思うけど。



 ――絶対に、また会えるよね? 



「じゃあ、私たちも。最後の訓練をこなしに行こうか」

「「ハイッ!」」



 僕たちも、今日でアレフベートとはお別れだ。


 最期に魔物狩りをこなし。

 その足で、次の国へ行く予定。


 本当に沢山の魔物が生息していて。

 二か月近くもこの都市でお世話になったから、思い出も多いけど。別れが悲しいだけじゃないのが旅の醍醐味といったところ。



 ………。



 …………。



「………ッ――ッ! そこですッ!」


「さっすが美緒ちゃん!」

「華麗…と、言わざるを得ないっすな」



 襲い掛かってきた大狼の動きを。

 華麗な動作で避け。


 的確な一撃で、その首を刈る美緒。


 しかも、複数体を一人で捌きながらだ。

 この都市に来た頃は、皆で協力しながら戦った存在を。



 D級の中でも、厄介な魔物を。



 今なら、僕たちは……こっちを、狙っている個体がいるね。



「――陸ッ。そっち行ったぞ」

「大丈夫。………ハッ!」



 向かってきたヘッジウルフへ剣を振り。


 一閃、前へと抜ける。


 魔物は声も出さずに左右へ分かれ。

 確かに大地へ還る。


 それは、成長の証だ。

 セフィローで様々なことを学び、戦い続けたことで、都市に来た当初は苦戦を強いられた魔物を一刀のもとに斬り捨てることができるまでになった。


 僕は、強くなっている。

 強大な魔物は、沢山居るだろうし。


 奴隷狩りの拠点で戦ったような強者。


 ゲオルグさんのような冒険者だって、この世界には存在している。


 

 でも、僕たちは一歩ずつ。



 ―――確実に、近づいている。




「もう、こちら側の魔物は相手にならないね」

「本当ですかッ?」

「……でも。あたし、あの蜘蛛みたいなやつとかは苦手なんですけどッ!」


「俺も、素早いウサギみたいなのが」

「勿論、戦闘スタイルによっては戦いにくい敵はどうしても現れる。だからこそ、仲間がいるんだ。この先、上位互換みたいな魔物はたくさん出てくる。でも、これまでの経験は決して無駄ではないから」



 今なら、先生がこの都市を訓練の場に選んだ意味が理解できる。


 本当に、周辺は凄かった。

 色々な種類の魔物が居て。

 森林部に生息するオーク種を筆頭に。


 水の上に棲む大蜘蛛。


 途轍もない剛脚の人食いウサギ。


 ……数え上げれば、キリが無くて。

 

 オークの巣に潜入した時なんかは。

 目を背けた光景もあったし。

 実際、吐きそうにもなった。


 ――あれらの上位互換ですか。想像したくもないですね。



「おわっ! 春香ちゃんッ!?」

「大丈夫ッ! コントロールはばっちりだし、当たっても私が治してあげるから!」

「それ、大丈夫って言わねえよ!」



 一瞬、考え事をしていた僕を置いて。

 康太が、木の棒でも振っているかのような大剣捌きで魔物を叩き潰し、春香が無詠唱の魔術で広範囲の敵を弱らせる。

 

 先生が言うには。


 相性次第だけど、全員揃えば。

 B級の魔物にも善戦できるかもしれないとのこと。



 春香は、何時の間にか。



 水属性に連なる回復を行使できるようになったらしい。




「せんせー? 次は、なんていう国へ行くんですか?」

「おッ! 気になるな」

「ここより東で近い所だと、【ギメール通商連邦】と【ラメド共和国】っていう国がありますよね?」


「流石ミオ、良く知っているね? ……フム。ちょっと遠いけど、より東側にあるギメールの方に行こうと思うんだ」


「その心は?」

「ギメールは、様々な国の文化が混在するからね。色々なモノが売っているだろうし、何より魔物が強力になる。あの国で修行すれば、近いうちに大陸の中心であるセキドウにも行けるだろう」




 おおッ! セキドウにも!

 案外、コーディと再会するのも早いかも。


 何より、様々な国の文化。


 凄く楽しみになって来るね。


 こういう旅は、楽しんだ者勝ちだし。



「――じゃあ、行こうか。D()()冒険者の諸君?」

「「はいッ!」」

「うっす、行きましょか」



 魔物から魔核石を回収して。

 馬車へと乗り込む僕たち。

 あの奴隷狩りの一件で大きく昇格へのポイントを稼いだことで、アレフベートで依頼をこなしているうちにD級冒険者へ昇格したのだ。


 次に昇格すれば。


 もう、大多数の冒険者の限界だというC級。

 到達の速度はギルドの職員さん曰く、とても速いらしく。



 でも、S級の強さを目にした立場から言えば。



 まだまだ、若輩もいい所だろう。


 

 次の国辺りで。

 危ないS級冒険者とかに会わないと良いんだけど……これって、フラグかな?



「ギメールまでは、距離があるからね。途中で色々と都市に寄るから、そこも楽しみにしておくと良いよ」

「見所とか無いんすか?」

「なら、二日ほどで着く都市の名物であるオークの――」


「「あ、そういうのは良いので」」


「……チョコレートとかなら、高級だけどあるよ。ギメール通商連邦なら、間違いなくあるだろうね」

「そういうの待ってました! お小遣いで買えますかね?」

「私も、久しぶりに食べたいですね」



 チョコが有るらしいけど。


 それより、今は……。



「……なぁ、陸」

「うん。僕も、凄い気になるんだけど」



 ―――オークの、何なんだろう。

 正直、気になるんだけど。


 後で、こっそり教えてくれないかな?


 僕たちも冒険者をやっている以上。

 報酬は貰える。

 一番高く買い取ってもらえる魔核石は集めているので売れないけど。



 それでも、かなりの収入源だ。



「じゃあ、ギメールに着いたらチョコを買いに行こうか」

「初めてのおつかいッ!」

「西側国家とかの事も、知っておかないと駄目かな~?」

「お、ハルカは意識高い系だね?」


「ふふん、そうですよね」


「じゃあ、意識高い系になるために俺も挑戦してみますかね?」

「……では、時間は有るので。私が、ギメールに着くまでに教えますね。全て覚えることを目標にしましょう?」


「「なん……だと?」」


「二人とも、オーバー過ぎないかな? ちょっと覚えるだけだよ?」

「「このインテリ共がッッッ!」」



 ええ……僕たちがおかしいの? 

 というか。

 何で、先生まで混ざって叫んでいるんだろう。


 前見て操縦しないと危ないですよ?


 暫く余裕があることだし。

 久しぶりに、暗記に挑戦してみようかな。



 ゆっくりと進む馬車。



 元気な悲鳴は、何処までも響いて行った。




  ◇




「召喚が行われたのは、間違いないようです」

「――では。報告に載っていた四人組の少年たちが?」



 報告を行いに来た部下へと。


 確認するように問いかける。


 歴史を返しても、勇者が一度に複数人召喚された記録は存在しないが。

 今までの情報を纏めさえすれば。


 確かな確信に繋がっていて。


 複数召喚についても、そうだ。

 もしかしたら過去にもあったが、教国が握りつぶしている可能性もある。


 で、あるなら。



 ―――むしろ好都合。



 そのカモフラージュのおかげで。

 彼らが勇者であると気付いたのは、我々だけということになるのだから。



「……は。四人の特徴は、過去の勇者と合致。全員がそうである可能性は高いです」

「素晴らしいッ! よくやりましたね」

「勿体ないお言葉にて」

「勇者――もし全員を引き入れることが出来れば、我々はこの国……いえ。人間国家の盟主となることもできるかもしれません」



 一族の悲願である国の頂点。

 それをも超えうる可能性が。


 長年の努力により。


 舞い込んできたという幸運に、感謝する。



「しかし、彼らの導き手は……」

「資料には……? あぁ、【暁闇】ですか。もし彼が我が家の傭兵になってくれれば、一体どれ程の利益が望めたか」

「勇者を手中に収めるには、障害となるでしょうな」



 ……まあ、仕方がない。

 そんな試練も超えられない様では。

 何のために幾つもの死地を超え、この地位に上り詰めたのかが分からなくなる。

 

 ―――必ず。


 必ず、勇者をこの手に。


 それだけの価値が彼等にはあるのだ。


 笑う…嗤う。

 人間、野望も持たずして。


 生きている価値があるだろうか。


 いずれは、全ての名誉を我に。



 自分以外には部下しかいない広い執務室で。



 ()()ただひたすらにわらいつづけた。

 早足でここまで来てしまいましたがこれにて第二章本編は終了です。

 次回三章はタイトル詐欺にならないように過去編、魔皇国での物語となっています。


 二章の番外編もありますので、良ければそちらも。

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