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暗黒卿の魔国譚  作者: ブロンズ
第二章:勇者一行と冒険のススメ

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第十三話:初デートはロリコン疑惑

―陸視点―




「……なんか、ベタだ」



 曰く、モテ期から一夜明けた日の午後。


 天気も良い昼下がり。


 コーディとデートの約束もあって。

 僕は、日課の訓練を終えた後に、アレフベートで待ち合わせに使われることが多いという石像の前で彼女が来るのを待っていた。


 昨日のデート発言が発せられた後。

 すぐ、春香と美緒に何処かへ攫われた彼女。


 あの後、会うことはなかったし。


 果たして、コーディは無事なのかな。


 そんなことを思いながら。

 暇を潰しつつ、彼女がやってくるのを待つ。



「――すみません。お待たせしました」


「あぁ、僕も今来たところ…だか…ら」

「どうですか? リクお兄さん」



 元気な声でやって来たコーディ。


 彼女は、帽子を被っていなかった。


 最早、くすんでなどいない。

 艶やかな亜麻色の髪。

 その上に存在する猫耳は辺りを歩く人の視線を集中させているけど。


 彼女は、まるで気にするそぶりを見せず。


 僕に自身の服装を見せる。


 ………可愛い。

 ワンピースが健康的な印象を。

 上に羽織ったふんわりとしたコートが幼さの中に怪しい色気を…。



 あぁ―――これ、駄目なヤツだ。



 このままじゃ、恐らく。

 僕の冒険はこの都市で終わってしまうことになる。


 果たして、この世界では。

 10に届かない子供に手を出すことが犯罪なのかは分からないけど。当たり前に考えて、周りの人には軽蔑されるだろう、同郷ばかりだし。



「あの、とても……可愛いと…思います」

「何で敬語なんですか?」

「いや、危ないことを口走ろうとした気がして」


「??」



 頭の上に疑問符を浮かべるコーディ。

 うん、知らなくて良いことだと思うよ。


 もしも、あちらの世界にいたのであれば。

 間違いなく凶悪な犯罪に巻き込まれかねないほどの妖しい色気。


 その持ち主である少女は。


 こちらへ、ゆっくり手を伸ばしてきて。



 ……大丈夫、だよね? 



 犯罪じゃないよね?

 猫型の亜人って、子供でもこんなに色気が?


 であるならば。

 出会った当初に、女の子だと気付きそうなのに。



「……手、繋いでくれますか?」

「勿論、良いよ」


「――あ……あの。今日は、ありがとうございます」


「僕の方こそ。こうして街を歩き回るには、やっぱり話し相手がいてくれるとね。それに、コーディみたいな可愛い娘となら自慢になるし」

「……へ? ――アゥ…?」



 まって。頭の中がこんがらがってる?

 僕は、今何を言ってた?


 これも、全て日本で読んだ小説のせいだ。

 デートって何を話せばいいのか分からないから。取り敢えず、それっぽいことを口走ってしまったのかもしれない。


 コレだから……。


 うぅ…恥ずかしい。



「――じゃあ。とにかく、行こうか」

「はいっ! お願いします!」



 彼女と手を繋いで歩きだす。

 歩幅を合わせて、配慮しながら。


 出店を冷かしたり。


 普通に商品を買ったりしながら。


 コーディと、他愛ない話をして。

 それから、彼女自身の話を。

 


 ―――コーディは。


 彼女は、アレフベートの生まれでは無いようで。

 この土地へは、旅行で来ていたらしい。


 でも、旅行先で…こんな。


 助けられて、本当に良かった。

 彼女は、名産である金属加工品や魔物の素材を使用した雑貨などを興味深く観察しては、僕に楽しそうに話しかけてくる。


 僕たちは、互いに。


 あまり、相手の事を知らなかったな。


 この世界で出来た、大切な友達。

 

 最初の友人だから。



 ……この機会に、少しでも仲良くなれるかな。




  ◇




「――じゃあ。コーディは、おじさんと一緒にこの都市へ?」

「はい。でも、最初からそれが目的だったらしくて」



 ……本当にいたのか。

 ロリコンおじさん。

 店々をまわったのち、適当な喫茶店へと入った僕たち。


 都市の産業などの話をしているうちに。

 話題は、旅行の事へ変わり。 


 僕は、彼女がこの都市へ来た経緯を知ることになった。



「じゃあ、そのおじさんに……」

「はい、売られちゃいました。正規の手段では絶対に売れなかったらしくて…そのためだけに奴隷狩りと繋がって。――でも、すぐに僕の目の前で」


「……コーディは、強いね」


「そうなんですか?」

「そうだよ。凄く、強い心だ」



 一緒に来たということは。

 多少なりとも、信頼できる人だったのだろう。


 しかし、彼女は裏切られた。


 非情にも奴隷狩りへと売られ。

 様々な恐怖を経験して。

 それで尚、必死にこの都市へと逃げ戻ってきて、ギルドで助けを求めようとしたのだ。


 これが、強くないと言えるだろうか。



「本当に、コーディは良い子だよ」

「――あ。ア…ゥ、アゥ…ありがとう……ございますぅ」



 彼女の頭に手を乗せ。


 耳を触らないように、優しく撫でる。


 猫は、耳をむやみに触られるのを嫌がると聞いた。

 だからこそ、この行動。


 でも、当のコーディは。


 無意識か、耳を触って欲しいようで。

 僕の手の位置をずらそうと頭を動かしている。


 ……それも、可愛い。

 一人っ子なのに、妹が出来たみたいだ。



「……そう言えば。コーディの家族も猫の亜人なの?」



 そう、僕はゲオルグさんやコーディなどの亜人に会った。


 だが、しかし。

 その家族に会ったことは無くて。


 先生曰く、亜人の家族は。

 様々な例外があるようで、一概にコレという形態はないらしい。


 それが、気になったのだ。



「……えとと。獣人は東側の国家に住んでいる人が多いんですけど、僕は先祖返りらしくて。生まれたのも育ったのも西側だって聞いてます。だから、両親も普通の人間なんですよ?」



 ―――先祖返り。

 成程、そういう例外もあるんだ。


 確かに、一概に判断は出来ないし。

 複雑な問題のようだ。


 でも、おじさんと一緒にこの都市に来たということは。



「聞いて良いか分からないけど、ご両親は…?」

「あ、大丈夫です。両親はおっとりした人たちなんですけど、とっても優しくて……。今はセキドウに住んでるんですけど…あッ! 挨拶…しに来ますかッ?」



 良かった。どうやら、ご両親は無事そうだ。


 なら、ゲオルグさんと一緒に。

 家に帰ることができる筈。


 …セキドウって、確か。


 大陸ギルドの本部がある都市だよね?


 なら、まだ行けないだろうし。

 挨拶とかは、ちょっと待ってほしいな。


 

 ―――深い意味の方じゃないよね? 



 友達としてだよね?



「……あ。ジュース、無くなっちゃいましたね」

「お代わり頼む?」

「いえ、大丈夫です。何時までも、僕が()()()の一人占めをするのは不公平ですから」

「――え? もしかしてコーディ…あッ!?」



 不意に変わるコーディの視線。

 その先…茶店の外の窓には。



 ―――康太たち三人と、先生が張り付いていた。



 いや、軽くホラーだよッ!

 

 怖すぎるよッ!? 


 なんでコーディは大丈夫なの? 

 この世界では、一般的なの?


 喫茶店の窓に張り付いて。


 店内の客をニヤニヤ眺めるのが、一般的なのッ!? 

 

 ………あぁ、そうか。

 コーディは、僕たちの事を聞いたんだね。



「――いやー。良いモン見せてもらったなー」

「わはー。陸がロリコンだったなんて」


「コーディちゃん、楽しめましたか?」


「はいッ! ありがとうございます、ミオお姉さん」

「それは、良かった。……リクも楽しめたよう――おや、そんな怯えた顔をして。どうしたんだい?」



 一斉に店内に入ってくる野次馬たち。


 先生、馬鹿にしてます?

 こんな光景見せられて。

 怖がるなって方が、無理な話なんですけど。


 というか、もしかして。



 ―――最初から、尾行されてた?



「もしかして、最初から……?」

「実は、付いて来てもらってたんです。…ゴメンなさい」



 あぁ、コーディは知ってたのね。

 なら、問題はないんだけど。

 

 ……しかし。

 そろそろ、気配を読む訓練とか出来ないかな。


 戦闘より、日常生活で。


 是が非でも活用させて欲しいんだけど。



「大丈夫だよ、リク。簡単な殺気なら、既に読める筈さ」

「先生、心読むのやめてください」

「今回は、好奇心で尾行してただけだからね。殺気があったなら、もっと違ったと思うよ?」


「……もっと(たち)が悪いですよ」



 殺気が無ければ気付かないなら。

 日常生活での悪戯には、対応できないということになってしまう。


 これからも、僕は。

 

 弄られ続ける運命なのか。



「――あ、そうだ。僕たちが勇者だってコーディに教えたのは?」

「私だ」


「…先生だったのか」


「奴隷狩りの拠点に侵入していた時に暇を持て余してたからね。まあ、特に問題はないさ。コーディは信頼できる娘だろう?」

「――それは、そうですけど」



 そうだ、コーディなら大丈夫。

 彼女が信用できないのなら。

 この世界の大半が信じられなくなる。


 そもそもとして。

 一番胡散臭い人たちの代表格が、先生なんだから。 


 …というか、敵いましたよね?


 どうやったら暇を持て余せるんです?



「――リク、ちょっと」

「何です?」

「……いや、何でもない。あ、すみませーん。シャモロックあります? あ、じゃあそれで」


「おさけ…美味しいのかなぁ?」



 やっぱり心読んでません? 


 まだ昼過ぎなのに。

 もう飲むんですか。

 あと、春香は酒に興味持ち過ぎ。


 急に騒がしくなった席で。

 皆がワイワイと話しながら、注文を入れていく。


 当然、先生のお金。


 ……うん。

 デートも楽しかったけど。

 やっぱり、こういう雰囲気もいいよね。



「で、入って来たってことは。…何かあるんですよね?」


「――お? 察しがいいな、陸。実は、これから皆で図書館に行こうって話になってたんだよ」

「調べたいことがあるので」


「図書館ですか? 僕も行ってみたいです…アゥ」

「――もっちろんッ! 皆で行こうよ!」



 西園寺さんなんかは。

 よく、図書館に行っているけど。


 春香と康太はキャラじゃない。

 そんな二人が興味深そうに話していることから。僕の興味も、完全に調査の内容へ移行することになって――あ、そういえば。


 コーディの頭撫でたままだった。

 顔が真っ赤で。

 目が潤んでいるけど、大丈夫かな。


 取り敢えず。


 一回放して……コーディ?



 ……一回放して?

 大丈夫だから。変なことしないから。



「リク。どうやら、目覚めたようだね」

「特殊能力みたいに言わないでください。僕はそういうのじゃありません」


「……遊びなんですか?」

「先生ッ! コーディに変なこと吹き込みましたねッ!?」


「あ、陸? それ――」

「恐らく、私達かもですね」


「……oh。陸や。女って、やっぱり怖いな」



 ――康太と互いに握手を交わしながら。

 女性の闇について考える。

 春香と美緒は、コーディと一緒に居ることが多かったけど。


 春香はともかく。

 美緒まで、そんなことを。



 ――女性、恐るべし。



 ……あれ、何か。

 先生も怯えているような。



「「……せんせい?」」

「私も、女性へのトラウマには縁があってね」


「「――先生ッ!!」」



 今度は、男三人で拳を合わせる。

 僕たちの心は一つのようで。

 

 たわいない話をしながら。

 運ばれてきた飲み物やデザートなどを楽しむ。

 

 偶には。


 こういう日があっても良いよね。



「――さ。皆、ある程度愉しんだら二次会へ行こうか」


「…図書館ですよね?」

「館内ではお酒飲めませんよね?」

「勿論、そんな事をしちゃダメだよ」



 流石の先生でも。図書館では飲まない、と。

 ……多分だけど。


 まだまだ、この世界は知らないことだらけで。

 この機会に、僕も。

 図書館で調べ物とかをして…。



 ――あ、そうだ。聞くの忘れてた。



「あの、さっき言ってた調べたいことって何ですか?」

「あぁ。それはな?」



 素朴な疑問に康太が口を開くが。


 その発言を、美緒が引き継ぐ。

 そして、耳にしたのは。


 おおよそ、想像もしていなかった単語で。




「――六魔将、というのを調べたいんです」

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