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暗黒卿の魔国譚  作者: ブロンズ
第六章:勇者一行と信仰の王国

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第十話:流れ決闘 勇者対勇者!?

―陸視点―




「―――勇者……君が――?」



 僕は、改めて彼の姿を目に焼き付ける。

 

 彼はまだ僕たちよりも年下。


 十代……前半にすら見えた。


 でも、その自信にあふれた瞳。

 そして、感じるオーラは。

 紛れもなく歴戦の冒険者のもので、背に存在する槍はかなり使い込まれたものであることが伺えた。



 ――まぁ、それはさておき。



「よろしく、僕は陸っていうんだ」

「春香だよー」

「……康太だ」

「美緒です。宜しくお願いしますね」



 もう少しで忘れるところだった。


 彼が自己紹介したのだから。


 こちらもするのが礼儀だろう。


 少年…シンク君は僕たちが自己紹介をし始めると。

 暫くポカンとした表情を浮かべていたけど、すぐに持ち直したのか、先程の不敵な表情に戻る。


 ……もしかしたら、彼は。

 そういう年頃なのかもね。

 僕にもそういう時期があったから、彼の事を悪く言うつもりはないけど。



「何だよ、その眼は。馬鹿にしてるのか?」

「「いや(え)、全く」」



 一斉に温かい目をし始めた僕たちに、馬鹿にされたと思ったのだろう。

 

 彼は眼を細めて唸り。


 僕らは視線を逸らす。



「――あの。どうして勇者が四人だと知っていたのですか?」



 そんなやり取りの中で美緒が尋ねたけど。


 彼女の疑問は最もだね。


 それを知っているのは。

 ごく一部の者たちのみ。

 たとえ国単位であっても、まだ知らない国家は多い筈で。


 しかし、彼はつまらない質問だと言うように口を開く。



「直接聞いたんだよ、ギルドの総長に。彼女が通商連邦に居るって聞いたから向かったら、つい先日勇者たちと会ったって言うじゃねえか。一目会いたくて追ってきたんだ」



 成程、そういう事か。

 僕たちがクロウンスにいる時に偶然彼が来たのではなく。


 僕らを追ってきたから。


 此処に彼が居るわけだ。


 リザさんが話したのなら、問題は無いのだろう。

 

 でも、聞いた話が本当なら。

 彼はまだ勇者として若い筈。

 仲間がいるような様子もなくて……だからなのかな? 



「なんでリザさん――ギルド総長に会いに行ったの?」

「決まってんだろ? 強い仲間だよ。旅に出るために名高い冒険者とか騎士、傭兵を集めようってんだ。ギルドの総長に聞くのが一番早い」


「ふーん、本当に勇者みたいだね」


「春香ちゃん? 本当に勇者だと思います」

「――んで。俺たちに会ってどうしたかったんだ? ただ見に来たってわけじゃねえんだろ?」

「康太、喧嘩腰は良くないよ」



 どうにも空気が悪くなってきている。

 それは、彼が明らかにこちらを敵視した空気を纏っているからか。


 皆それに気づいているため、会話が堅く。


 でも、最初から喧嘩腰は良くない。


 まずは、彼の目的を聞いてからだ。


 康太の言葉を受けて。

 彼は、当然と言わんばかりに頷く。



「勿論、そんなわけないだろ? 目的は二つだが――まず、お前らと戦いたいんだ」

「「え?」」



 それは、意外な一言で。



「――俺は、今まで一人で戦ってきた」



 しかし、強い意志を宿し。


 こちらを見据える彼には見た目以上の圧がある。

 そして、確かな信念が感じられる。



「ずっと、戦ってきた。強くなる為に、最強の勇者になるために……だ。この世界に来てから、仲良しこよしの馴れ合いに興じてるお前たちとは違うんだよ」

「「……………」」

「……うん。それは、ちょっと聞き捨てならないね」



 確かな意志が感じられるのは分かる。


 が、此方にも信念はある。


 聞き逃せない言葉がある。


 それは、挑発なのだろう。

 分かりやすく僕たちと戦うための手段だ。

 別に、それに対して頭に血が上ったわけではない。



 ―――ただ、その言葉が気に入らなかっただけだ。



 僕がここまで来られたのは、皆に出会えたからだ。

 この世界で、折れることなく戦い続けられたのは皆がいてくれたからだ。


 守るべき物が存在しないなら。


 確かに、強くはなれるだろう。


 でも、守るものがあったからこそ。

 僕は強くなることが出来た。

 弱い自分を止める事も、誓いを立てることも、答えを出す事も出来た。


 それを、ただの馴れ合いと言われるのは心外極まる。



「――んだな。馴れ合いも捨てたもんじゃないんだぜ?」

「仲間がいた方が楽しいし」

「何より、いつでも相談が出来ます」



 何時しか、僕達の間には。


 剣呑な空気が流れていて。

 

 フィリアさんはオロオロと視線をさまよわせ、ミハイルさんは困ったように辺りを見回す。

 二人に止めろというのは酷だろう。 


 彼は、今にも。

 背の槍に手を伸ばしそうで……。



「――はい、そこまでだ」

「「……………ッ!」」



 そんな中、突然現れた人物が僕たちの間に入る。

 シンク君に注意を向けていたとはいえ、全く気配を感じさせない隠形術。


 頼れる大人、先生だ。



「――あんたは……?」



 そして、気づかなかったのは彼も同じだったのだろう。

 突然現れて間に入った謎の人物に視線を送る。



「私はナクラ。冒険者だよ」

「ナクラ? ………あんたが暁闇か――ッ!」



 やっぱり先生有名人だね。


 シンク君の表情は、さっきの剣呑さを帯びた物と打って変わり。

 目を輝かせながら先生を見る。

 それはさながら、子供がどうしても欲しい何かを強請るようで。


 でも……何で?



「俺はシンク、勇者だ。――俺の仲間になってくれ!」

「「はぁ!?」」

「それ、アリ?」

「……成程。海嵐神に選ばれた勇者は人材マニアだと言われているが、君も例に漏れないらしい」



 飛び出した言葉は。


 僕たちを驚愕させるには十分だった。

 確かに、彼のさっき言っていたことと照らし合わせるのならば、先生は強く心強い仲間であることは間違いない。


 何せ、最上位冒険者に匹敵する存在。

 地理や言語などの情報にも詳しく、()()()癖のない人物だ。


 仲間とするにはこれ以上ない人材…なのだろう。


 けど、勿論僕たちがそれを了承するわけもない。



 それは、彼自身も同じ筈で―――



「……まぁ、随分唐突な引き抜きだね」

「悪い話じゃないだろ?」

「勇者の仲間。確かに、冒険者からすれば大きな価値(ステータス)だからね。――じゃあ、こうしようか。もし君がこの四人のうちの一人に模擬戦で勝つことが出来たら、私は君の仲間になってあげよう」

「――本当か――っ!」


「「先生――ッ!?」」



 双方の反応は対称的。


 と言うか、先生がそんな提案をするなんて思っても見なかった。

 彼なら一も二もなく断ってくれると思ってたのに。



「さぁ、そこに四人の勇者がおるじゃろ? 好きな子を選ぶと良い」



 ……余裕ですね、先生。


 でも、彼に居なくなられるのは。

 彼が居なくなるというのは嫌だ。


 困るではなく、嫌なんだ。


 僕たちにとって先生は誰よりも頼れる存在だし、大切な仲間だ。

 これからも傍で見守っていてほしい。


 それは、他の皆も。


 三人も同じだろう。


 固唾をのんで二人の会話に耳を傾けていた康太たち。

 シンク君は再びこちらに視線を向け、僕たち四人を順々に検分していて。



「そうだな……弱い奴を選んだと思われるのは癪だし、お前達のどっちかだ」



 彼が視線を向けたのは僕と康太。


 やはり女性は選択外なのだろう。


 美緒は珍しく顔をしかめてて。

 春香は不満げにそっぽを向く。


 あの二人も凄く強いんだけど。

 でも、やっぱりここは外見からして強そうな康太が適任で……。



「それなら、陸が良いぞ? 俺はタンクだからな」

「……そうそう、僕――康太?」



 なんと、仲間に売られた。


 なんて酷い親友なんだろ。


 こんな事なら。

 僕が先に康太を売っておくべきだった。


 ――でも、その責任は重くのしかかる。


 もし僕が負ければ?

 それだけで先生は居なくなってしまう。



「ミハイル君、だったかな。勇者君を借りていくよ」

「はい。元々ネレウス様の元に御一緒するつもりでしたので、私も同行しましょう」



 混乱する意思に反して。


 すぐに向かうは修練場。



 ……この時間だと、騎士さんたちもいる筈だよね。

 



   ◇




「―――さて、簡単なルールは決めておこうか」



 多くの視線が見守る中。


 僕達二人は向かい合う。


 騎士さんたちも訓練を中止してこちらを伺っているようで。

 それだけ注目する価値のある物なのだろう。

 

 この世界で、勇者は特別な存在だ。


 広く、静かな空間で。

 聞きなれた大人の声のみがこだまする。



「実戦であれば致命傷になっていた攻撃を受けた時点で決着。また、戦闘続行不可と私が判断すれば決着だ。――無論、私は公平な立場だよ。判定に手心は加えない」


「……らしいぞ、仲間と交代するか?」



 シンク君の売り言葉は、昔の虐めに比べれば可愛いものだ。


 その程度じゃあ。


 まるで堪えない。



「まさか。僕は不公平な戦いは好きじゃないんだ」



 訓練用の木剣の感触を確かめつつ。


 気の利いた言葉を返す。


 本当に、こんなにさらっと進めて良いのかな。

 曲がりなりにも勇者同士の戦いっていう手に汗握るものな筈なんだけど……今の僕は緊張しすぎてそれどころじゃない。


 命を懸けた戦闘とは違う。


 訓練の延長線にある戦い。


 でも、背負った緊張は実戦と同じ…いや、それ以上で。



 ―――うん、大丈夫。



 彼も、先の潰れた訓練用の槍を使うから、余程の事が無い限り死に繋がる怪我はしない。



 だから、大丈夫だ。



 僕なら、できるよ。



「――では、勝負を始めようか。……あぁ、そうだ。魔術の使用は?」

「「無しで(だ)――ッ!!」」



 その瞬間、僕たちは床を蹴る。


 「勝負を始めよう」と先生が言った時点で、既に開始だ。

 始まってからルールの追加など、あっていい筈もない。


 それに瞬時に反応できた時点で、彼が冒険者として多くの経験を積んでいることは明白。


 冒険者が相手にする敵とは、どんなに卑怯と叫んでも通用しない者ばかり。

 だから、どんな時も油断をしてはならない。


 先生の言葉もそれを確かめるためだったのだろう。

 僕の魔術は訓練向けじゃないから、ここで使う訳にはいかないし。



「すぐ終わらせてやるっ――廻乱(かいらん)――ッ!」



 初撃、繰り出されるのは。


 回転をかけた強力な突き。


 もし剣で捌こうとすれば、弾かれてしまうほどの攻撃――そう簡単に実戦レベルで身につくような技術ではない。


 剣を弾かれないように両の手で持ち。

 こちらも強力な一撃で攻撃を捌く。

 もしも今までの経験が無かったら、武器が飛ばされていたかもね。


 槍は、その射程距離で。


 圧倒的に剣に勝るんだ。


 素人同士の戦いなら、まず槍を持つ側が勝つ。


 これまでにも槍という武器を用いている人たちを相手にしたことはあるから、その厄介さは良く知っていて。何より、受けるよりも避けることを主体とした僕のスタイルとは相性が悪い。



「……ふー……ふ―――ッ!」



 だから、必要なのは踏み込みだ。

 翻弄できる程の速度が必要だ。

 相手の反応が遅れるほどに自然な足取りで踏み込み、剣の間合いへ入る。



 ―――が、彼は。


 瞬時に床を蹴り。


 後方へ跳躍する。


 槍の穂先は油断なく僕の胴に向けられており、追えば先に受けるのはこちらだ。


 彼は、多くの状況に対する策を持っている。 


 僕よりも小さい身体でどっしりと構え。

 近づけぬよう連撃を繰り出すシンク君。


 その周りを疾駆しながら刃を交え。

 お互いに言葉を交わさず、動きを読み合う。

 

 互いの動きを把握すれば、決着はすぐで……予測で上回った方が勝るだろう。



「ひょろいと思ったけど、やるじゃねえか――っ!」



 君が言うのかな。


 彼の身長は僕より低いし、腕も細い。


 にも拘らず、繰り出されるどれもが鋭く、強力。

 膝を掠める大振りは遠心力を生かしたもので、出来る限り腕への負担が軽減されるように立ち回っていて。

 

 よくよく見れば。


 腕もしなやかで。


 しかし、しっかりと筋肉が付いている。

 必要な力だけを付けるように計算されているみたいだ。



「―――ッ! そっちこそッ――やるね!」



 あと、悪知恵も二重丸。


 声を掛けてくる間も、本当に容赦なく攻撃をしてくる勇者。

 回避できず、剣で受けざるを得なかった強撃も恐ろしいまでもの実践的な一撃で。


 そこに空論の出る幕は無い。

 

 槍をグルグル振り回しもしなければ、投擲してくるような愚も犯さない。

 全てが合理的、数多の経験に裏打ちされた完全な経験のなせる技。


 ただ、シンプルに強く。


 追い込んでいくだけだ。



「………ッ! これは――」

「さぁ、どっちだ? 右か、左か……」



 ―――背中に当たる硬い感触。



 とうとう壁際に追い詰められ。

 続行するために、いや。

 この戦いを勝つ為に賭けに出なければならない。



「―――そっち! だよな!」



 考えさせる暇もなく。


 僕が飛び出した方向。


 それは、彼から見れば左側で。

 大抵の場合、利き腕と逆の側は死角になることが多い。

 

 だから、大抵の者はそちらを選ぶ。


 例え相手に悟られていても、被害を軽減するには仕方ないことだ。

 勿論、彼には読まれていたけど。


 僕の移動経路を呼んでいた彼が放った必殺の一撃。

 それは渾身の突きで。


 確実に仕留めるには最も良い手だろう。

 何より、外しても壁に当たるから、刺さらない訓練においては立て直しも難しくはない。


 

 が、その一撃こそが。



 僕の狙いだったんだ。

 


「―――ッ―――ここだ―――ッ!」

「なに!?」



 剣と槍、互いの切っ先が擦れる。

 槍の穂先を、剣の腹に滑らせるように中心角から外し、そのまま全力で突き出す。


 美緒と違って、僕は自身の動きを完璧には再現できない。

 でも、相手の動きを予測することは出来る。


 後は、僕の実力次第。


 自信を持っていたからこそ、全力を持って繰り出された彼の一撃。

 腕を掠めた穂先は壁に当たることなく空を裂く。


 ――片腕に感じる鈍痛。


 対して、彼は腹部の中心に刺突を受けた。


 革製の鎧を纏っているとはいえ、力の乗った突きを鳩尾に受けた彼は大きく後ろに転がる。

 もしこれが真剣であったのなら、胴を貫通していただろう。


 僕も片腕が大きく抉れただろうけどね。



「………すごい……ぁ。おじさま、これは――?」

「うん、文句のない有効打だ。勝者はリクだね」


「うっしゃー! 流石陸!」

「おおう、マジで強ない?」

「本当に、凄いです。私達も、負けていられないですね。……でも、今は彼を」



 皆の声でようやく。


 緊張の糸が解けて。


 本当に油断できない…危うい戦いだった。

 時間で言えばほんの数分間だった筈なのに、何時だって決闘は永遠に感じられて。

 


「……………俺の、負けか」

「とっても強かったよ。槍使いでは一番だったね」



 もう、いがみ合う必要なんてない。

 大の字に寝そべりながら呟くシンク君に歩み寄りながら、僕は話しかける。

 

 彼は、本当に強かった。


 それは才能という言葉で語れるようなものではなく。


 愚直な努力の末に得た物であることが理解できた。


 努力できる子供に悪い子はそういないんだ。

 僕の差し出した手に逡巡することもなく手を伸ばした彼は、ゆっくりと立ち上がって。 


 断られると思ったんだけど。

 やっぱり、根は素直だよね。

 それに、彼の顔には先ほどまでの刺すような剣呑さは無くて。



「――さて。青春の一ページも刻めたことだし、総評と行こうか」



 勝負の判定をしていた先生と。


 外側で見守っていた康太たち。


 ニヤニヤしながら近づいてくるの、やめてほしいなぁ。

 こちらに向いた先生は、幾つかの改善点を僕に示したのち。


 シンク君へと向き直る。


 その眼は、何処か申し訳なさを。


 彼への謝意を感じさせるようで。



「――いや、正直君を舐めていた。謝罪させてほしい」

「……だろうな、当然のことだ」


「どういうことですか? 先生」



 思えば、妙だったんだ。


 確かに、彼は強かった。


 でも、それは全部経験からくる技であり。

 聞きかじっただけの知識は欠片もない。

 言わば、鍛錬や実戦でしか経験を得られない――とでもいうかのような戦い方。


 そして、先生があんな条件を飲んだのもおかしい。


 彼は、こういう所では慎重な人間だから。



「――海嵐神の加護はね? あくまでも人々を統率する力……ある種のカリスマと、指揮する才能を与えるのみなんだ」

「「……………ん?」」

「じゃあ、つまり――」

「個人としては一般人と大差なく。武術の才に恵まれないことも多い、という事だね」



 先生の語られたのは。

 僕の中に在った疑問を氷解させるには十分なもので。



 ―――彼は、本当に努力だけで。



 ―――ここまで上り詰めたんだ。



 冒険者というのは、誰もが上へ上へと行けるわけじゃない。

 敵との戦いで死んでしまうのは勿論だけど。

 たとえ生き残ったとしても、()()という要素が無ければ袋小路で。


 決して上位へは至れない。


 そして彼にはそれが……無いのだろう。

 

 それでも、彼は鍛錬を続けた。


 目的が何であれ、戦い続けた。


 たった一人で、才能の差を埋めんと。

 ずっと抗い続けたんだ。

 今までそれを見せつけられることもあったはずなのに、腐らずにここまで至ったんだ。


 で、そんな事を。


 聞いてしまえば。

 

 お人よしの仲間たちが黙っている訳もなくて。



「――なぁ、勇者さんよぉ……俺たちと旅しねぇ?」

「……は? いや、あのなぁ――」


「一緒に訓練しましょう? 先生に教えてもらえますよ?」

「……それは――いや、だからな。俺は一人で――」


「じゃあ、この国! この国にいる間だけで良いから! 一緒に居ようよ!」

「………分かった。もうそれで良い」

 


 三人にしっかりと囲まれて。


 グルグル言葉を浴びせられ。


 これ以上の抵抗は無駄だと判断したのだろう。

 どこか恥ずかしそうに呟くシンク君はしかし、ちょっぴり嬉しそうで……。



「――暫く、世話になる」

「決まったみたいだね」

「……なぁ、良いのか?」

「無論、皆の意思を尊重するし、私も歓迎するよ。――で、彼女とは自己紹介をしたのかな?」



 ―――ひと段落ついた頃に。


 進み出てきたフィリアさん。


 機会を逸していたからね。

 


「――真紅の髪……赤い瞳……って――ぁ!」



 シンク君は少女を伺い。

 何か思い当たる所があったのか、どんどん顔色を変えていく。 



「聖女……様――ですか?」

「はい、オフィリアといいます。宜しくお願いしますね? シンクさん」



 その言葉に、軽く頭を下げるシンク君。


 やっぱりこの世界生まれだから。

 そういう特徴にも詳しいのかな。


 でも、そうなると。

 今までの流れで気付いてなかったのが驚きだけど、一つの事に真っ直ぐな性格という事だろう。


 顔を赤くしてそっぽを向く彼は年相応に見えて。


 僕たちは顔を見合わせて微笑み合った。




 ―――――あ、ミハイルさん。

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