64:ここに『無体』を全員集めるほうが丁度いいんですが?
「まぁ、割と怖めに言っているが、俺のが特別怖く感じるだけだ。
そんな気にするなよ」
当然、こんな話をすれば、みんなは深奥というものに関して少し勘違いをしてしまうかも知れない。
でも、だからといって変に油断しないほうが良いのも事実。
「確かに深奥は強力ですが、誰もが誰もこんなに操れない、というわけではないのですわよ」
宵も話してくれることで、みんなの偏見は取れたのか、俺の事を見る目が変わる。
「普通だったら発狂モンだけど、俺の場合はもとの能力もあって『慣れ』ちゃったからな。
現に『進化』の深奥には3日で慣れたが、そこからは実戦の連続だった」
「そういえば、具体的に何をしたのかは私達も聞いたことはありませんでしたね」
宵がそこで俺に話しかける。
確かに、俺の訓練内容なんて話してもみんなにメリットないし、話したことなかったな。
「俺の訓練内容は、みんなとはかけ離れてるぞ。
俺のはただ本物の戦場に行っただけだよ」
「ん?」
そこで反応するのは、『生徒会』のメンツでも、一年の誰かでもなく、宵だった。
俺は何に反応しているのか分からなかったが、
「え、ムスビは13歳の頃に実戦をしたって……」
「あぁ、それはあくまで無体の結成が決まってから、依頼として、って話だろ?
その前にも三年間くらい行ってたぞ」
宵はその言葉に額に手を当てる。
「確かに、あなたの実戦『慣れ』には能力もあって慣れていると思っていましたが、そういうことですか……」
「何に呆れているかは知らんが、『慣れ』ろよな」
「……一回殴るくらいしても怒られませんわよね?」
「誰も怒らなくても俺が怒るぞ?!」
そこで、みんなを置いてけぼりにしていることに気づく。
「……話を戻すぞ。
それで、俺は当時発生していた超能力事件に実戦として関わってた。
けど、その途中で気づいたんだ。
俺だけ強くなろうとも、またレイの二の舞になるだけだ、って」
「そうだよね。
いくら覆瀬くんが強くたって、そのレイさんを倒しちゃったらまたそれを倒せる人、の繰り返しだよね?」
そう、俺は確かに深奥も相まって、将来的に確実にレイを倒せることは確定していた。
それでは逆に俺はレイを正面から堂々潰せる人間になる。
求められているのは、『レイだけを確実に仕留めることのできる能力者』だ。
だが、俺の能力が悪かった。
相手に『慣れ』る能力では、厄介な能力者を一人増やしただけに変わりはない。
更には、手綱をつけるには俺が力を付けすぎた。
レイが直々に訓練を行っているせいで、気づいたときには首輪を付けられないくらいになっていたのだ。
「だから、俺とレイはもうその時には名前を変えていた期間……『WMM』に相談したんだ」
『WMM』
正式名称を『World Mystery Management』という。
表向きは『超能力促進機関』として名を売って入るが、その実態は『国際超能力管理委員会』とは変わらない。
やばい奴らを取り締まるのだ。
「深奥に到れる存在を多く保有した組織を結成し、来る超能力災害を食い止める組織にしよう、ってな」
「嘘を話すのは感心しませんよ」
そこで宵から唐突にツッコミが入る。
その言葉に、みんなの視線がきつくなる。
別に嘘はいってない。
ただ、上辺の事を話しただけだ。
しばらくその視線にさらされ、俺は観念したように両腕を上げる。
「はいはい。
本当は『俺が最強になるんで、俺も食い止めないといけないから深奥に至れそうな人増やしてもいいですか?』って言ったんだよ」
当時の俺は、『WMM』の中でも結構発言力を持っていた。
同じ職員からはその深奥の力を。
共に戦場を駆け抜けた連中からは、俺の戦闘のときの力を。
更には、その頃には、
「その時は稀にレイに勝てるようにになってたんだよ。
だから、このままだと強くなりすぎる、って思っただけだ」
「……確かに、今の実力を知っていると、否定できないのがムカつくわね」
被瀬のムカつく発言は置いておき、
「そこで生まれたのが、無体
深奥に至ったものだけで組織された相互管理組織。
また、超能力による災害や事件を食い止める組織になったんだ」
「そして、不本意ながらその中でもリーダーとして位置しているのがこのバカですわ」
「……ま、今は俺は無体ではないんだけどな」
「どういうことだい?」
会長が質問してくる。
「別に俺が何かをやらかしたとかではなく、ただ戦いから離れたくて、俺は無体を無期限に抜けることにしたんだ」
「ま、その結果が超能力絡みの『事件』に関わることになって、挙句の果てには全力で戦闘をするとか、どうなっているとは思いますがね」
宵の視線が俺に突き刺さる。
確かに成り行きとはいえこうやって事件の解決に参加してしまったのは事実だが、
「結果としては俺がいてよかったじゃないかよ」
「結果論で話すなら、ここに無体を全員集めるほうが丁度いいんですが?」
「……それは辞めてもらいたい」
俺の嫌そうな顔に、冷ややかな視線を向ける宵。
そこで、柊が手を上げた。
「ちょっと話が急だから整理すると、覆瀬くんは、小さい頃に深奥に至った。
その目的であるレイさんに勝てるようになったけど、強くなりすぎるかも知れない。
だから、深奥に至った人たちだけで組織したチームを作った。
それで、その一員が四杯先生」
俺は話の内容を聞いて、うなずく。
宵も同様に頷いているのが視界の端に見える。
「……ちょっと頭痛くなってきた」
「ま、分かるっすけど、むーさんっていつもこんな感じだし、これくらいの過去がないほうが逆におかしいっすよ」
「ま、そうね。
逆にそこまで変な人生してたのによくこんな普通の世界に戻ってこれると思っていたわね」
被瀬の言葉は、確かに分かる。
けど、俺としては、
「この年にして学校に通っていたのが戦闘している期間より圧倒的に多いのもどうかと思ってな。
本当は普通の会社に就職できたのも事実だけど、こうやって学生生活してみたいって思ったんだ」
「ムスビが学校を選んだ理由は、まともに女の子とデートとかしてみたい、という理由だったですわ」
俺の言葉を打ち砕かんと放たれる事実という言葉。
苦笑いのまま表情は凍り、
「それに、ランキング戦も見てみたいと思って「ランキング戦の連中弱すぎるからなんとかなるだろ。ま、これでモテモテロードまっしぐらだな! といっていましたわ」……」
いや、視線が痛い痛い。
なんでそんな目で見るんだよ。
「ちなみに、プロのランキング戦のランカーはこの事実を知っていますし、中には一緒にお仕事した人もいますわ」
宵が話すことによって、現実味を帯びていく話。
自分に刺さる視線の矢にビクビクしながら、次の言葉を紡ごうとするが、なかなか出てこない。
「えっ。
覆瀬くん、プロのランカーとあったことあるの?」
待て柊、目が怖い。
「前に覆瀬くん、ランキング戦は見たことないって……」
「アレはランキング戦の形式では、だ。
確かに1から10までのランカーなら全員顔と名前は知っているだけだ」
「でも現に暇つぶしに、とランカー相手に大人気ない無双を披露していましたよね」
「それはアイツラが弱いんじゃないかなー、って」
そこで俺は言葉を間違えたことに気づいた。
この学園はランキング戦に憧れているものが多い。
現に『生徒会』のみんなはランキング戦の結果が悪いと『生徒会』にいることができなくなることもあるらしい。
「……今度、ランカーさんと会えない?」
「ひ、柊さん?
それ私欲混ざってませんか?
俺が呼んでもアイツラだって多忙だし来てくれないかも知れな「それくらいしてもいいと思うけどな」……はい」
俺の観念した言葉に、みんなの雰囲気が良くなったのを感じた。
宵は俺の方を見て、面倒くさいけどワタクシは知らないわよ、という目をしている。
無体のやつらはいざとなれば一瞬だけでも呼出すことはできるのだが、プロのランカーとなると話が別だ。
アイツラはテレビやラジオ、CMにもでる。
だからか、アイツラは基本的に時間に追われているイメージだ。
そもそも、プロのスポーツ選手と何ら変わりはないので、そりゃ宣伝効果は抜群だろう。
世界ランキングに乗っているやつなんて、俺が声をかけても気づくのだろうか、という感じだ。
なんてったって、会ったのはまだランキング戦がここまで大きいものになっていないときだ。
……ダメ元でやってみるか。
「ん?
今、何の話していたっけ?」
「やっと話が戻ってきたわね。
今はあんたが無体を作ったところまでよ」
柊からの問い詰めが終了し、いつの間にか忘れていた話を思い出す。
「それで、お互いに管理し会える深奥能力者の組織を作り、そのときに丁度出てきていた『ウィクトゥス』絡みの事件だよ」
「ワタクシたちの主な仕事は『ウィクトゥス』使用によって起こる範囲の削減と、被害を抑える役目を預かっていましたわ」
「だからそんなに詳しいんっすね。
おふたりとも」
「まぁ、仕事に関するものだから、一応全部は知っているつもりだ」
宵は本当だろうか、という視線を俺に向けてくる。
……いやいや、流石に戦闘しか取り柄がないと言っても、それくらいは覚えている。
「そこで事件が増えまくり、一昨年までは忙しすぎて『ウィクトゥス』=無体みたいになっていたからな」
「それが幸いにもムスビが抜ける前にちょうどよく収まってくれたので、今回の休暇を許したのですわ」
「休暇って……。
俺は別に復帰する気はサラサラないぞ」
「……元に戦っていますけどね」
返す言葉もない。
黙りこくる俺に、宵は話をを続ける。
「ま、だいたいですが、深奥と無体の繋がりはこんなもんですわ」
「あのー」
「なんですか?
美加久市さん?」
「深奥に至れば無体に入れるってことですか?」
美加久市さんの指摘はもっともだ。
しかし、話忘れていたことがある。
「深奥に至る場合、全ての人ができれば到れる、そういうわけではありませんわ」
宵の続きの言葉を、俺が変わる。
「端的に言うぞ。
深奥に至ると、大体が死ぬ」
「深奥はその体に対して力が大きすぎるんだ。
無体の連中はその点かなり弱い深奥だとも言える。
もしこれが強い深奥だったときは、死を決断するしかない」
「それか、能力に飲まれる場合がある。
その時も、俺らが殺してやらなきゃならない」
「だから、みんなもそこら辺考えた上で、少し、話がある」




