怒っているのですよ?
「……で、何の用ですか?」
急に訪問してきたエルフ達を無力化し、全員纏めて縛り上げた後、私は意識を取り戻したエルフ達にそう問いかけました。
自分でも驚くような低い声です。
それだけ私は不機嫌なのでしょう。
……ですが、それも仕方のないこと。
睡眠を邪魔されたのは勿論のこと、エルフという存在さえもが私にとって害悪です。そんな彼らが急に押しかけてきて、ついでにミリアさん達との雰囲気が悪くなってしまいました。
「何の用かと、聞いているのですが?」
私は手に魔力を集め、エルフに向けながら再度問いかけました。
しかし、彼らは殺気を込めた視線を送るのみで、何も言おうとしません。
「私、今すごーく不機嫌なようです。このまま何も口を開かないのであれば、強制的に開かせることも出来るのですよ?」
エルフは何も言いません。
ですが、私の脅しに少しは反応を見せました。
……と言っても、更に殺気が濃厚になった程度ですけれど。
「殺されるとわかっていても、あえて私を敵視しますか……」
うーむ、私が彼らに何かをしたという記憶はないのですが……まさか、この森に住んでいたエルフさん達と親戚関係だったり?
でもそれだったら良い迷惑です。だって彼らを殺したのは私ではありません。魔王です。私を恨まれても困ります。
「このままでは埒があきませんね。ウンディーネ」
『はーい。捕まえてきたよー』
ウンディーネは何処かに姿を消していました。
それは私のお願いを実行してくれていたからです。
彼女の背後には、人が何人も入れるようなサイズの水の球体が浮かんでいました。その中には四人のエルフが眠るように気絶しています。
この森よりも遥か遠く。私達を監視するような動きを見せている人を発見したので、ウンディーネに頼んで持ってきてもらいました。
もしかしたらと思ってのことでしたが……ビンゴ。私達の行動を監視するために配置されたエルフのお仲間だったのでしょう。
「──!?」
ここで初めてエルフ達が動揺の色を見せました。
一瞬だけ見せた表情で関係者だというのはすぐにわかりました。
「この方々に見覚えがありますか?」
「…………知らん」
しかし、それでもエルフが強情です。
「あ、そうですか。では殺しちゃっても構いませんね?」
私は『マジックウェポン』から剣を作り出し、今も眠っているエルフの首元に突きつけました。
殺すのは少々心苦しいですが、まぁ構いませんよね?
「っ、やめろ!」
「……その動揺。今更感がありますが、まぁ及第点としておきましょう」
私は武器を霧散させます。
その代わりにロープを取り出し、最初のエルフ達同様に縛り付けました。
これで私達を影から見張っている反応は全てなくなりました。
「……で? 三回目が必要ですか?」
そろそろ面倒になりました。
わずかに殺気を込め、エルフを睨みます。
「私は怒っているのですよ? 城下街に侵入してきたエルフといい、あなた方といい、どうしてエルフは面倒事ばかりを持ち込むのですか?」
私は溜め息をつきました。
それは今までのことを思い出した溜め息と、これからのことを予想した溜め息。どちらだったのでしょう。
……いえ、これはどちらもです。私は両方の意味で、溜め息をつきました。
出来ることなら、今すぐにでもこの方々を殺して「私何も知りませーん」と言いたいところですが、流石にそれをやったらもっと面倒なことになるでしょう。
最悪、ミリアさん達にも迷惑をかけてしまうことになります。それだけは絶対にダメです。
「あなた方の目的を話してください」
「…………」
「話しなさい」
「…………」
「よろしい。ならば──」
「──っ、ガァアアアア!?」
私は腕を振るいました。
それは風の刃となり、全てのエルフの右腕を切り落としました。
「ァア、腕が、腕が……ぁ?」
ですが、血飛沫は起こりません。
私の回復魔法によって一瞬で止血は済みました。
吹き上げた血液のせいでウンディーネの泉を汚すわけにはいきませんからね。
「次は左、その次に両足を落とします。そしたらもう……死ぬしかないですね?」
私はほくそ笑みました。
「話す! 話すから許してくれ!」
これまで強情だったエルフも、限界が来たのでしょう。
恐怖に顔を歪めながら、懇願するようにそう叫びました。
……私、今めっちゃ魔王幹部してます。
「まずお前達の城に囚われている同胞を解放しろ」
「…………(ぶんっ)」
「──グ、ァアアアアアア!!」
発言した男の左腕を切り飛ばしました。
なんで? どうして!? と言いたげな視線を向けてくる男に、私は微笑みます。
「口調」
「はぇ……?」
「立場がわからないのですか? 口調を改めてくださいと、そう言っているのです」
やはり傲慢なのは変わらないようですね。
……はぁ……ファンタジーで登場するエルフはもっと良い人物なはずなのに、どうしてこの世界のエルフは歪んでいるのでしょう。
それが不思議でなりません。
──って、自分も人のこと言えませんね。
アッハッハ……はぁ…………。
「さっさと寝たい」
私はポツリと、弱々しくそう呟くのでした。




