お風呂です
ミリアさんを確保……もとい抱っこした私は、サッカーで付いた汚れを落とすため、ヴィエラさんに許可を得てからお風呂場へと向かいました。
「はいミリアさん。服を脱いでくださいねー」
「うむっ!」
ミリアさんは元気に返事して服を脱ぎます。
……元気なのは良いことですけど、服を放り投げるのはやめてほしいです。
『リーフィア。洗濯はうちはやるから、二人でお風呂入っちゃって』
「でも、良いのですか?」
『うちは汚れないし、すぐに乾かすことも出来るから……それに、たまにはお手伝いくらいさせて?』
……ここまで言われてしまっては、断ることも出来ませんね。
洗濯するのも新しい服を持ってくるのも面倒なので、ここはウンディーネの言葉に甘えるとしましょう。
「では、頼みました」
服を脱ぎ、ウンディーネに渡します。
私は回復魔法の『浄化』で汚れを落とせるのですが、流石にミリアさん一人でお風呂に行かせるのは心配です。
ここのお風呂場は魔王城ということもあり、とても広く設計されています。溺れてしまったら大変なので、誰かは必ず見張っておくようにと、ヴィエラさんが言っていました。
「ほら、早く行くぞ!」
「風呂場で走るのは危ないですよー」
「んびゃ──!?」
ミリアさんは足を滑らせ、頭から地面にダイブしました。
めちゃくちゃ痛そうな音がしました。実際に我らが君主は涙目です。
……いや、よく考えたら風呂場で転んで泣く魔王って何?
「……ああ、もう。言わんこっちゃない」
私はミリアさんに歩み寄り、回復魔法を掛けます。
顎は……割れていないようですが、強く強打したせいで赤くなっていますね。
「大丈夫ですか?」
「痛い……けれど、痛みが和らいできたぞ」
「そりゃぁ回復魔法を掛けていますからね」
私の回復魔法はカンストしています。
死んでいなければ、どんな負傷も治すことが可能です。
「うぅ……ありがとう。リーフィア。ヴィエラは回復魔法使えないから、いつも痛かったのだ」
「いや、待ってください。いつも転んでいるのですか? そろそろ反省するか学習するかしてくださいよ。それでもあなたは魔王ですか」
今回は特別にお風呂に入っていますが、本来私はお風呂に浸かることをしません。その必要がありませんし、ベッドから動くのが面倒です。
もうミリアさんとお風呂に入ることは無いでしょうから、ここで反省をしていただけなければ、また顎を強打することになります。
自分で「余はお子様ではない!」と言っていますが、これでは誰も信じません。
「……これからは走らないようにする」
「はい、そうしてください」
でも、今回のことでミリアさんは反省してくれたようです。
私は「それで良し」と言い、ミリアさんと体を洗いっをこしました。
「リーフィアの肌……綺麗だな。とてもすべすべだ」
「そうですか? 自分の体には興味ないので、あまり気にしたことはないですね」
主に胸以外は、ですけれど。
「余は何十年も生きているが、体は小さいままだ。大人の体が羨ましいと思える」
ミリアさんのそれは、いわゆる幼児体型というものですね。
でも、幼児のお肌はもちもちしていて、一部の女性はそれに憧れているようです。私はどちらかと言えば眠っていられれば全てオールオッケーなので、そういう『〇〇肌』というのは詳しく知りませんけれど。
「ミリアさんだって健康体ではないですか。それは他人からしたら、本当に羨ましいものです。……少しでも自分に自信を持っては?」
「……うーむ。そう、だな……。うむ! リーフィアの言う通りにしてみよう!」
「そんな簡単に決めて良いのですか?」
「リーフィアのことは信用しているからな!」
「…………そうですか」
どうしてそこまで私のことを信用するのか不思議ですが、それを質問するのは野暮というものでしょう。
今は我らが魔王に信用してもらっている。それだけで十分。……そう思うことにします。
「だが……眠ってばかりで健康も何も無いお前が、ここまで綺麗な肌をしているというのは……やはり気に食わぬな」
「痛いです。摘まないでください」
確かに私は、健康とは程遠い堕落生活を送っています。それでも私の肌はすべすべで、綺麗な肌をしていました。
……これも、神様が用意してくれた体のおかげなのでしょうか?
肌荒れを気にせずに生活出来るというのは、女性からしたらとても魅力的な体なのでしょう。
だからって嫉妬で肌を摘むのは、やめていただきたいです。しかもミリアさんは力加減を知らないお馬鹿ちゃんなので、マジで痛いです。
「ほら、体を洗ったら湯船に浸かりますよ」
今も肌を摘むミリアさんをひょいっと持ち上げ、私は湯船に運びます。
「……はーい」
流石に抵抗する気はないのか、おとなしく私に運ばれるミリアさん。
「あ゛ぁ〜……生き返るぅ……」
いや、おっさんか。
「女の子がはしたないですよ」
「別に構わないだろう。ここには余とリーフィアしかいないのだし」
「……まぁ、そうですけれど」
それでも魔王がおっさん臭くなるのは回避したいところです。
主君が子供というのも問題はありますが、幼児体型のおっさんというのはもっとヤバいです。まずヴィエラさんやアカネさんが黙っていないでしょう。
勿論、私も嫌です。
──私の主君は幼児体型のおっさんです。
いやいや、何のジョークですかって。
この世界でも元の世界でも、そんなことを言えば笑われますよ。普通の笑いではありません。鼻で笑うような嘲笑です。……絶対に嫌ですね。
「ほんと、人前ではやめてくださいよ。一応魔王なのですから」
「わかっている。これを晒すのは部下の前でだけだ」
……うぅむ。本当はその『おっさん化』をやめてほしいのですが、まだ人前でやらないだけマシなのでしょうか。
「…………」
「……なんです?」
そのように考えていると、ふと胸元の方に視線を感じました。
それを向けているのはミリアさんです。
「お前のそれ、良いな」
指差すのは私の胸。
「良いなと言われても……普通ですよ?」
「余のものを見てそれを言うか?」
「ああ……御愁傷様です」
「手を合わせるな!」
幼児体型の痛いところが露見しましたね。
所詮幼女は『つる&ぺったーん』だけが武器ですか……。
「まぁ、世の中にはミリアさんのような方だが大好きな人も居ますので、ワンチャンありますよ」
「それ絶対危ない奴だろ! 余は嫌だぞ!」
「嫌だぞと言われても……それでは将来が……」
「ほんと酷いなお前!?」
でも、それ以外で貰い手がいないのも事実。
このまま魔王が子供なのは確定でしょうし、もう望みはロリコンの皆様だけでしょう。
ミリアさんは嫌がっていますが……時には諦めも肝心だということを教えるべきでしょうか?
「このっ! 酷いことを言うのはこれか、このっ……!」
ミリアさんは私に近寄り、涙目で胸を揉みしだきます。
私はそれを平然と見下ろし、一言。
「楽しいですか?」
「──ちくしょう!」
「ぶふっ……」
ミリアさんが腕を振り、その飛沫が顔面に掛かりました。
正直なことを言いましょう。首が持って行かれたかと思いました。
……どれだけ馬鹿力なのですか、うちの魔王様は。
「はっはっはっ! どうだ余の攻撃ぶはぁ!?」
私はお返しとばかりに手で水鉄砲の形を作り、ミリアさんの顔面にぶつけました。
「何をする!?」
「何って……お返しです」
「このっ、またお返しだ!」
「ぶっ、っ、この……!」
私はまた水鉄砲をミリアさんの顔面に撃ちました。
そうしたらミリアさんが腕を振るい、私はそのお返しに水鉄砲を撃ちます。
これを繰り返しているうちに私達は白熱し、周りを顧みずに激闘を繰り広げました。
その後、騒ぎを聞きつけたヴィエラさんに怒られ、二人して正座させられたのはまた別の話です。
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