再び出会う
「あちゃー。やっぱり物足りなかったかな。」
爆発音は、テミスが牢の鉄格子を破った音だった。
「破ろうとすれば破れたのですがね。でもここは、情報収集としては最適な場所ですからね。」
「そうだな。」
「頼んだわ。テミス。メアニト。」
牢を破り、パルテノン神殿から出たテミスはそのままある場所へ向かった。
「これは...テミス様!解放されたのですね。安心致しました。」
今テミスがいるのは、フィラキ。
フィラキというのは、犯罪や禁忌を犯した犯罪者を幽閉している場所だ。
この世界にはフィラキが多数存在しているが、ここはパルテノン神殿から少し離れたところに位置する、Aクラスを幽閉するためのフィラキで、ここは"常闇のフィラキ"と呼ばれている。
テミスも元々ここにいたが、Aクラスより上のSクラスだということが判明したため、上のレベルのフィラキに移されたのだ。
クラスというのは、神祠全体に神から与えられているもので、E.D.C.B.A.S.SSの順に並べられていて、SSが最高位のクラスだ。
小さな犯罪でも五十年は罰せられる。
強さで例えると、Eが平凡な人間五十名ほどを相手にできるくらいで、Cは小さな国一つ、Aにもなると帝国くらいは破壊できる。
原初神は皆SSクラスの力を持っている。
SSSクラスというのは見たことのあるものがいないため、信じられていない。
「今回はどのようなご用件でしょうか?」
「アリーネに用があります。」
「畏まりました。少しお待ちください。」
そういって足早に悪魔が去っていく。
「あの神官はCクラスですか...やはりここの警備レベルも上がりましたね。」
テミスは相手のクラスを見ることができる力を持っている。
数分待っていると、
「テミス様。お待たせして申し訳ございません。どうぞこちらへ。」
通された部屋には、一人の女性が座っていた。
「お久しぶりです~兄様!」
「百年ぶりですね。アリーネ。」
アリーネと呼ばれた女性は、長い漆黒の髪を二つにまとめ結き、目はテミスと同じ紫色だ。
アリーネ・モラーナーは昼の女神へーメラーを司る神祠でありながら、アヌビスの神祠であるテミスの実の妹だ。
メアニトとテミスは何かの時に融合したため、メアニトとアリーネは何の関係も持っていない。
だが、アリーネはテミスと同じ人の心やクラスをよむ力を持っている。
アリーネはゆるゆると、穏やかな話し方が特徴だ。
「アリーネ、少し強くなりましたかね。」
「兄様こそ、前にも増して力が上がりになりましたね~」
など、少しの微笑ましい雑談を交えた後、本題に入っていく。
「リリーの後継者が誕生したのは知っていますよね?」
「はい。Zのお目付け役が兄様ですよね~?」
「残念ながら監視役ですがね。」
二人とも少しの嫌味をぶつけ合いながら話を進める。
「彼のオーラが世界を滅ぼすと時間の女神ホーラ様が仰せになっていたようです。」
「大変ですね。あたしもあと、三年で出られるらしいですよ~」
「結構早いですね。では、出た時には貴方の力を借りに来ますよ。」
「光栄です~。それじゃあまた~。」
元気な笑顔をみせて、近くの悪魔に合図をし、元居た場所へ戻っていく。
その後ろ姿を見ていたテミスは罪悪感が募る。
「私の...せいですかね...。」