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エグジスタンス  作者: 柿村きづき
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解放の日

メアニト・ラインは審判の神アヌビスの神祠で、ダンやアビスとは、近い存在だった。


原初神ではないものの、普通の神祠より頭ひとつ抜けている。


だが神と神祠の間、また人間と神祠の間には禁忌というものがいくつか存在していて、その禁忌を破れば牢獄に閉じ込められる。

メアニトは禁忌を犯してしまい、今日がその解放の日だ。

昔から開放される神祠には何かひとつだけ願いを叶えさせるという掟があり、それに従っている。


「そんな冷たくしなくてもいいじゃんかー困っちゃうー」


アビスの冷たい視線にも動ぜぬメアニト、そしてそれを監視するように見ているダン、三人の間のみ奇妙な空気が生じる。


「いい加減にしないとまた牢獄に戻すぞ?」


アビスのその言葉には流石に嫌だったのか、メアニトが思ったままの顔をする。


「はいはい、んじゃ俺よりもこっちの方がいいと思うし」


そういって下を向いて少し経つとメアニトは人が変わったように真面目な顔になって、目も紫に変わっていた。


「久しぶりですね。アビス、ダン。望みはメアニトよりも私の方がいいと思いましてね。」


「その通りだわ。テミス。」


メアニトの口調が変わったと思えば、アビスの口調も柔らかいものになっていた。


「メアニトのおかげで挨拶が遅れてしまいましたね。」


メアニトは変わったようではなくて変わっていたのだ。


実は二重人格で、軽いお調子者のメアニトと、頭が良く冷静という正反対のテミス・モラーナーに分けられている。

二人とも同じアヌビス神の神祠であり、力も同等だ。


「五百年ぶりですね、アビス。いや、人間界でいえば五十年ぶりですか?」


人間界と神の世界では時間の進み方が異なり、人間界では十年でも神の世界では百年にあたる。


「そんな前置きはいいわ。望みを言ってちょうだい。」


「そうですね、我々の望みは奴の力です。」


その答えにアビスは渋い顔をし、同じ部屋にいた神官たちに、外に出るよう命じる。


「では、話に戻りましょうか。力が目覚めたことは知っているのね?」


「はい、もちろん。」


テミスは柔らかい微笑みを浮かべ、その質問に答える。


「キリの力が目覚めたのでしょう?」


「いえ、違うのよ。後継者の方が目覚めてしまったの。」


予想外の答えだったのか、テミスが一瞬顔を強ばらせるがまた元に戻す。


「後継者...では、やはりキリは...」


「そのようね...悲しいわ。」


少しの間沈黙が流れる。


「それで、そいつの力はどれほど強大なんだ?」


この沈黙を破ったのはダンだった。


「え、ええ、そうね。キリの力を受け継いで、より強力なものにしていたから...恐らく叶わないでしょうね。私達原初神でも。」


「それほどのことですか...」


「彼はまだ気づいていないの。本性に。でも気づいていないのに闇のオーラを感じたわ。」


「それは...危険ですね。」


「それであなた方を罪滅ぼしのために彼の監視役に任命するわ。」


「だと思いましたよ。」


テミスが即応するのに、アビスが少しの動揺を見せる。


「異論はありませんよ。何をすればよろしいのですか?」


「そうね...」


アビスは神祠の中でも司っている神が戦略の神であるため、十のことを同時に考えられるし、少しの時間があれば、一年後くらい先までは予測できる。


「あなた方は、悪魔でも接近はしなくていいわ。ただ、気づかれるまで傍を離れないようにしていて。気づかれたら終わらせて戻ってきていいわ。」


「わかりました。」


すると、拳を構えて笑顔で牢の壁に添える。

その後すぐに、爆発音がなり、テミスは音と共に去っていった。

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