分け目
「レン、あなたはとても辛い人生を歩むことになるわね。知らなければよかったのに...私のせいなのね。」
「今更後悔かよ?あいつも遅かったなー気づくの。」
ここはパルテノン神殿の地下。
暗い部屋の中に二人の話し声がする。
二人の前には、先程までレンが映っていた水晶石が置いてある。
声の片方は、アビス。
もう片方は、白銀の狼のような尾を持ち、艶のある茶色の切りそろえられた短めの髪。
キリッとした深い紅の眼光を周囲に散らしているアビスと同じくらいの青年だ。
「では審判に向かいましょう。」
「なんかあったかー?」
「メアニト達に会わなくてはいけなくなったの。」
「そんなにか...」
「ええ、世界の始まりは我々神が創ったものなのですから責任をもって最後まで創らなくては。」
「そうだな。ヘーパイストスの神名に誓って。」
「そうね、ダン。」
部屋を出た二人の足取りは少し重かった。
ダンと呼ばれた青年は健康的な笑を浮かべ、アビスの前を歩いていく。
アビスと話していたのはダン・リオーネ。ヘーパイストスとよばれる炎の神を司っている。
神を司っている者を、一般的には神祠とよばれる。
人間より上の存在であり、神の一歩手前に位置する存在だ。
そんな神祠の中にも九人の特別な存在がいる。
それが"原初の神祠"だ。
神祠でありながら、神と同等までとは行かないものの、相応の力を誇っている。
アビスは原初神のひとりを司った神祠だ。
暗い部屋から出てもまだ暗さは続き所々に小さな光が灯っている冷たい廊下を二人の足音が響く。
「ああ、わかった。...アビス、メアニトが到着したそうだ。」
「ありがとう。では、向かうわ。」
「それでは今から審判を始める。被告者メアニトをここへ。」
そこに空間が揺れるような現象が起き、先程までいなかった鮮やかな金色の少年が現れる。
「メアニト、今日が解放の日だ。何を望む?」
台本をそのまま読むような棒読みさの質問をいうダン。
「んー?おぉー!ダンちゃんじゃん!お久ー!」
質問とは全く関係ない言葉で返してくるこの少年が、ダンは好きにはなれなかった。
「そんな軽い言葉で遇うな。答えを述べよ。愚者が。」