1話
週一で投稿します
雪の降るとても寒い日、僕は運命に出会った。
休日に友人と買い物に出かけていた僕は、帰り道の途中、今では地元の人以外にはあまり使われなくなった旧道で一人たたずむ少女を見つけた。 彼女はとても儚く目を離したら消えてしまいそうで、しかし彼女の黒く長い髪はしんしんと降りしきる雪とのコントラストでとても美しく映えていた。
そして僕はその光景に美しさとともに小さな違和感を感じた。
普段だったら流れていく景色とともに見逃してしまうような小さな違和感、それは彼女の頬を流れる一筋の雫だった。
いつもの僕であったならきっと、彼女が流したであろう涙など見ないフリをしてそのまま通り過ぎてしまったと思う、でも、その日は違った。 彼女の頬を伝うその涙を見た僕は何故だか胸が締め付けられるように苦しくなって、彼女に話しかけた。
「こんな所で寒くない?」
本当ならもっと気の利いた言葉をかけるべきだと思う、でもあまり人と話すことが得意ではない僕ではこの言葉で精一杯だった。それに
「大丈夫、です」
とそう答える彼女は本当に寒そうで服装も薄着とまでは言えないが家の中で過ごすかのようなものだった。
「本当に?早く家に帰った方が良いんじゃない? 」
だから僕はそういった。
「本当に大丈夫です、それにお母さんにも心配、掛けたくないし」
きっと彼女は泣いているところを母に見られたくないのだろう。そう思った僕は、けれど彼女を一人にしておくことはできなくて
「風邪ひくと大変だからとりあえずこれでよかったら着なよ」
と今日買ったばかりの上着を差し出した。
上着を受け取り「優しいんですね」と、そう微笑む彼女に見惚れ、そしてどうしようもなく切なくなった。
きっと、 一目惚れだったのだろう。
彼女の涙を見過ごせなかったのも、一目惚れしていたからで、上着を差し出したのだってまだ一緒に居たかったから、それを優しさと褒められたことに少しだけ困惑したがそれも、彼女の笑顔の前ではとても些細なことに感じられた。
それから色々な話しをした。
彼女が僕の一つ上で19歳の大学生だった事学校の話、飼っている犬の話、本当にたわいもない話だったけれどその時間はとても楽しくて寒さすら忘れ、あっという間に過ぎて行った。だから気のせいだったのかも知れないけれど。
「そろそろ帰らなくちゃ、これありがとうね」
そう言って上着を僕に返す彼女の顔も心なしか寂しげに、そして哀しげに見えて。
「あの! れ、連絡先教えてくれませんか!?」
そう言った。
彼女は少し驚いて居たけれど「うん、いいよ」と微笑んでくれた。
僕の短い人生で一番緊張したけれど、間違いなく一番嬉しい瞬間だった。
「じゃあね」そう言って手を振る彼女に僕も軽く手を振り返した。
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