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連鎖する依頼  作者: 鶴ヶ島
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都市伝説

「あなたってとっても流行に敏感なのね」

 とっても冷たい声が返ってきた。サチは机の上にあるペンや教科書をカバンの中にしまっている。目を合わせようとはしてくれない。

「で、その宇宙人がなにしたの」

「お、興味持った」

 にやにやしながら言った。サチは一瞥もしないでカバンを手に持ち、歩き出した。俺も後に続く。教室から出たところで追いついた。でも、横には並ばずにそのまま後ろをついていく。サチが歩くたびに形のいい尻が揺れる。見とれていると、尻の動きが止まった。顔を上げる。

「ごめんね」

 サチの言葉は、心にすとんと落ちてきた。「えっ」と言おうとしたとき、目の前に人の形をした光が現れた。サチは前を向いていて、その光に気づいていない。光が強くなって、俺を飲み込んだ。光が消えると、視界が一転した。

 そこは俺のよく知っている場所だった。俺の家の目の前だ。辺りを見まわす。俺がなんでここにいるのかわからない。さっきまでサチと一緒にいたのに。

 とりあえず家に入ろう。そう思って歩き出そうとすると、おばさんがこっちに向かって歩いてくるのが見えた。携帯をいじりながら歩いていて、前を見ていない。フィーチャーフォンが珍しくて、つい見てしまう。少なくとも、友達で使っている人はいない。でも、電車でおじさんが使っているのをたまに見る。視線に気づかれないようにおばさんから目をそらす。

 俺の家の玄関に目を向けると、視界の隅に黒い服が映った。そちらを見ると、学生がいた。ルーズソックスを穿いたミニスカートの女の子。その手に持っているのは、フィーチャーフォンだった。おばさんよりも珍しくて、二度見してしまう。でも、気づかれないように無理やり目をそらした。こういう子に見ていることを気づかれると、面倒くさい。

 ふと思うことがあって、歩き出した。おばさんの後を追う形になる。少し歩いていると、またフィーチャーフォンを持っている人を見かけた。大通りに出ると、フィーチャーフォンを持っている人ばかりだった。スラックスのポケットからスマホを取り出してみる。スマホにちらちらと視線が集まるのがわかった。その視線を無視しながら、スマホを操作する。スマホに電波は入っていなかった。よくわからない。スマホをポケットにしまう。

 とにかく、家に戻ることにした。パソコンで調べればわからないことも解決できるかもしれない。家の前に着くと、左隣の家の玄関が開いた。男が三人。二人が一人の男を間に挟んで体を支えながら歩いている。真ん中の男は目隠しをされている。しかも、真ん中の男は俺のよく知っている男だった。サチのお兄さんだった。

「レイ?」

 話しかけた瞬間、世界が一変した。そう思ったけど、そうでもなかった。気づかないうちに俺の家の玄関を見ていただけだ。左隣の家の玄関はしまっていて、さっきの男たちはいない。目を俺の家の玄関に戻そうとしたとき、視界の隅に見覚えのあるシルエットが映った。目を向ける。

 そのシルエットは、フィーチャーフォンを持っているおばさんだった。


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