第22話 衝撃のオジサン勇者
場所名 封印の上
説明
地下四メートルに邪神プランポーの封印したダンジョンがあります。
百年ほど前からオジサン勇者スズキ(地球名鈴木義一)が閉じ込められています。
ピーン♪
『邪神の存在を感知しました。』
『銀河統一神様警察に通報しますか?』
YES/NO
『通報しました。……時間軸移動により邪神プランポーを逮捕いたしました。ご協力感謝いたします』
『近々感謝状を進呈いたします』
また邪神いたじゃねえか!!
なんだよ邪神って、ポンポンポンポン出てきやがって。
感謝状二枚目だよっ!!
……しかしこれ、どうしようかな……。
スズキさん閉じ込められてるらしいが、百年とか……ええ?寿命とかどうなってんの?
とりあえず……掘ろうか。
いや、でも、うーん、百年も土の中のダンジョンに入ってるなら、もうなんか環境に適応しておかしな化け物になっちゃってるんじゃないのか?
なんかそんなおっかない映画あったぞ。
もう、このままそっとしといてあげた方がスズキさんは幸せなんじゃないだろうか……。
いやいやいや、なに考えてんだ俺は、とりあえず掘るべ掘るべ。
「プラム婆さん、スコップ貸して」
「?、またキノコ見つけたのかい?」
「……いや、ちょっと……とりあえず、掘ってみないと」
俺は地面を掘る。
ていうかまんじゅうに手伝って貰うべ。魔法の手百本出せるからな。それで掘って貰うべ。
「ちょ、まんじゅう掘ってくれ」
リンリンリン。
百本の腕でみるみる穴が深くなってる。
よし、じゃあ掘るのはまんじゅうに任せて、鑑定してみるか……。
正直スズキさんがなんだかよくわからない化け物になってそうで、めっちゃ怖いんだが……。
場所名 封印の上
説明
地下四メートルに邪神プランポーの封印したダンジョンがあります。
百年ほど前からオジサン勇者スズキ(地球名鈴木義一)が閉じ込められています。
ちなみにそのダンジョンと外では時間の流れが違うのでスズキの体感では五年程度。
おお、そうか、五年か、そうかそうか、なら安心だわ。
……いやいやいや、五年もかなりきついんじゃねえかな?
感覚マヒしちまってるわ。
五年でもあれだわ、なんか精神病んで殺人鬼みたいな精神状態になってるかもしれん。
ニコニコしながら近づいてきてなんか尖った物でぐさり、そんな映画もあった。
よし、じゃあ、次はスズキさんに鑑定を……。
名前 スズキ(地球名、鈴木義一)
年齢 36
職業 無職
称号 無し
レベル 1
HP 23/23
MP 0/0
STR■■
AGI■
VIT■
INT■■
MND■
DEX■
装備
なし
所持スキル
缶詰精製
剣術レベル1
たて斬り
パーティーメンバーステータス確認
余談
高次元宇宙へ移行する瞬間にヤスダなどと同じく管理者のいるこの異世界に普通に飛ばされるはずだったが、移動中に邪神にちょっかいをかけられてダンジョンに閉じ込められた。
より正確には、邪神プランポーにダンジョンマスターになりダンジョンに入ってくる人間を殺してダンジョンを成長させるように言われた。
それを断ったために閉じ込められた。
故に一応ダンジョンなのだが魔物などはおらずただの洞窟っぽい空間しかない。
精神状態は良好。
体調は体脂肪率が高くあまりよくはない。(スキルにものを言わせた食っちゃ寝生活だから)
精神状態が良好な理由は地球でスズキが育てていたサボテン(名前、トゲ蔵1号)をたまたま手にしていて持って来ていたため。
地球産の生き物は全て高次元宇宙への移行に伴い神に準じる能力を得ており、トゲ蔵1号は精神を安定させる能力を持っているためスズキが病むこともなかった。
そして好きな缶詰を召喚できる能力であるスキルの缶詰精製で生き延びていたようだ。
ちなみに彼はヤスダとは違い持ち物と肉体のみ転移した。
地球に帰れる資格あり。
おお、ステータスがまさかの目盛りだ。
分かりづらい。
……缶詰……。
ていうかそうか、なんか大丈夫そうだな。
よし、出会い頭に頭から食われる心配がなくなった。
じゃあ早く助けてあげよう。
お、まんじゅうが呼んでる。掘り終わったようだ。
おお、これが邪神製のダンジョン……。
なんとも言いがたい前衛的なデザイン……なのかな?
なんだろうなこれ、ドアついてっけど。
これダンジョン?
「先生、なんだいこれは」
「うわー、すっげー」
「なにこれ?」
「いやなんか、勇者が閉じ込められてるらしいんですよ」
「なんだって!?」
「え!?勇者!?」
みんなが驚きの声をあげる。
うーん。
まあ、あれだな封印されてるらしいけど、どうすればいいんだこれ?よし、鑑定。
場所名 プランポーのダンジョン
説明
封印は中からは開けないだけで、外からは簡単に開けます。
ああ、そうなんだ。
よし、じゃあ。
「ほっ!」
扉に手をかけて、掛け声と同時に開く。
ギイイイイイ、と嫌な感じの音と共に封印が解ける。
「………………」
……まごうことなき、まごうことなきオジサン勇者がいたわ。
「…………」
「…………」
「……………………」
「……………………」
目があったままお互い微動だにしていない。
すげえびっくりした顔のままだ。
俺も多分そうだろうな。こんなオジサンオジサンしてる人だとは思ってもみなかったしな。
……おおう、沈黙が痛い。
でもどうするべこれ、え~と、え~と。
「…………あ~、え~、は、はじめまして、安田龍臣といいます」
「あ、ああ、え~、鈴木、鈴木義一です」
おう、普通に自己紹介しちまった。
「…………」
「…………」
どうするべこの空気。
「……あの、とりあえず、何か食べませんか?」
「え!?しょ、食事ですか?え、今?」
……なんだか知らんが、てんぱって飯誘っちまった。
俺なんで飯誘ったの?
五年間土の中に閉じ込められてた人に、いきなり一緒に飯食おうぜとか、アホか俺は……。
スズキさんはキョロキョロして、口を開けたり閉じたりしながら……逡巡してこっちを見て……。
「……あの、カップラーメンとか、ありますか?」
食いついたっ!?
正解でしたっ。
なんと飯誘ったの正解っ。
「あ、ありますっありますよ、シーフードのやつなんですけど大丈夫ですか?」
「ああ~懐かしいな~、是非、是非お願いします」
よし、じゃあ俺の大事な秘蔵のカップラーメンを出すとしよう。
「あ、ちょっと待ってください」
そう言うと、走ってなにやらを持ってきた。
ああ、サボテンだわ。
あれが噂のチートサボテン……。
……そして鈴木さんは出口付近で一度立ち止まり、少しキョロキョロしてから表に出る。
「うわ!?」
外に出て鈴木さんは、辺りを見回して、カワウソ族やら犬族にびっくりしている。
「この世界の人達ですよ」
「……ああ、そう言えば、昔そんな話聞いたような、異世界とかそんなでしたね……へえ…………すごいなあ」
それから辺りを見回して、ゆっくり上を見上げる。
「……ありきたりなセリフ言ってもいいですか?」
「どうぞ」
「空が青いなあ」
「……うん、超ありきたりですね」
「ハハ、そうでしょ、でも本当にそう思ってしまった………ハハ、青いなあ、こんな色だったなあ」
サボテンの植え木鉢抱えた手を震わせて、ずっと空を見てた。
次話は多分月曜日になります。




