第16話 ダンジョン都市の領主さん
さて、兵士っぽい人達にでっかい扉を開けて貰い、城っぽい建物に入っていく。
兵士っぽい人達もなんか刺々しい感じを出してたが、こっちを見た瞬間に何やらビビった顔になり目をそらしてくる。
ふふふ、装備でかましてやる作戦成功だな。
なにせ、頭から光の柱を出しながら手がいっぱいある上に浮いてるからね。しかも色んなとこでちょいちょいラスボスに選出される天草四郎のやつ巻いてんだぜ?
ラスボスの要所押さえてっからね。
ふふふ、びびるがいい。
城の中を進むと、なんかムキムキのお爺さんがいた。
この町の領主あの人かな、すっげー怒った顔してるわ。
蹴られたり殴られたりしないだろうか?怖いから鑑定しとこう。
あ、この人レベル高い。
名前 マックスウェル・ダンガンポート ♂
年齢 72
職業 領主
称号 鬼の如し
レベル 26
HP 190/190
MP 53/53
STR 103+10
AGI 110
VIT 87
INT 58
MND 42
DEX 73
装備
力石の大剣
所持スキル
剣術レベル4
縦斬り、横斬り、兜割り、五連突き、岩斬波、一閃無明斬り
体術レベル2
直突き、前蹴り、肘鉄
威圧レベル1
重い眼力
あ、こっち見た瞬間、ええ?って顔になった。
「久しぶりじゃのマックスウェルよ」
「パニニか、お前が勇者の従者になるとはな」
「勇者の福音がなったのじゃ、伝説は本当じゃったよ。空から音がなっとったわ」
「……あれは本当だったのか?」
ピンタさんの親父さんのパニニじいちゃんと、ダンジョン都市の領主は知り合いのようだ。
なんか昔パーティを組んで、ダンジョンに潜ったりしていた仲らしい。
「そちらが勇者殿か」
「どうも安田龍臣です」
「あ、話せるのですね。ダンジョン都市領主のマックスウェル・ダンガンポートです」
「そりゃ話せますよ。なんだと思ったんですか?手がたくさんある化け物だとでも思ったんですか?」
「……ち、違うんですか?」
よし、かつらを脱いでまんじゅうから離脱っ。
「ああ、その下の箱が噂の宝箱ミミックだったのか。手は……闇魔法のダークハンドか、なるほどな」
おお、色々詳しい。さすがダンジョン都市の領主だな。
「それで勇者殿、ダンジョン開きを無理な理由で遅らせた真意を聞かせていただきたい。見たところ血の気が多いわけでも、欲の皮の突っ張った方でもないようだ」
お、なんか裏があるのばれてるな。
まあ、俺の見た目ただのヒョロ男だからなあ。
俺はどうしようかとピンタさんとパニニじいちゃんに目をやる。
「ふむ、ではワシから話そう」
「父上」
「安心せよピンタ、こやつはまあまあ信用してもよい」
「まあまあかよ」
「マックスウェル、人払いを」
領主さんが執事やらメイドやらを部屋から出した。
パニニじいちゃんが、領主さんにダンジョンの中に魔物が溢れてる事とアホ王子のことも含めて話す。
領主さんビックリしたと思ったら鬼みたいな顔になった。
ああ、怒りに満ち満ちておる。
「ムツキ王子か、ただの病弱かと思いきや、それほどの人でなしか、おのれ」
鬼の領主さんが一呼吸ついて落ち着いてからこっちに顔を向けてきた。
「勇者様、ダンジョンポートの危機にわざわざ汚名を被ってまで救っていただけたこと、町を代表して礼を申し上げます。今のように面と向かって説明されるならば信用出来ることでも、魔導通信で事の子細を説明されても信じたかどうか怪しい所です。本当にありがとうございます」
「ああ、いえいえ別にいいですよ。守りたい名誉だとか特にないんでね」
「……飄々と人々を救う。伝説通りですな。勇者はみんななんだかんだ人々を救う。文句をいいながら、当たり前だと言いながら、嫌だと言いながら、時になにも言わずに、しかし結局人々を救ってくださる。善き勇者に巡り会えたこと、光栄に思います」
みんなお人好しの日本人力が存分に発揮されてるな。
「やめてください、照れるんで」
「して、どのダンジョンに罠が仕掛けられているのですか?やはり一番大きい北のダンジョンですか?」
そういや、いくつもダンジョンあるって話だったからな。鑑定で出てなかったな。なんか切羽詰まってる時はあんま説明でないんだよな。まあ、本気で切羽詰まってる時に詳細に説明されても困るか。
「えーと地図とか有ります?」
ダンジョン都市の地図を持ってきて貰う。
五つダンジョンがあって北のダンジョンとか南のダンジョンとか方角で名前決まってるのか、分かりやすくていい。
どのダンジョンに罠が仕掛けられてるのかな?
よし、ウルトラ鑑定発動。
場所名 ダンガンポート
説明
全部。
短いっ、鑑定結果が短いっ。
ていうかなんの鑑定結果でもない。
「全部だそうです」
「全部ですか!?……ムツキめ、いつそのような仕掛けを……」
ああ、そういや前に鑑定した時、ダンジョン開きしたら町が数十分で全滅するとかあった気がするわ。
一方向からだけ魔物の大群来るならいくらなんでも三万人いる町が数十分で全滅はないわな。とにかく反対方向に逃げればいいんだから。
町囲んでる五方向からいっぺんにきたら確かに逃げ場なく数十分で全滅しそうだ。
「あの、魔物が溢れたりしたときの為の備えとかないんですか?城壁みたいのも無かったように見えましたけど」
「いえ、有事に備えて町の回りに結界は配備してあるのです。城壁では意味がないのですよ。鳥や虫などの魔物も多いですから。特に虫系は厄介で、やつらは飛んだり飛ぶ能力がなくとも壁などは簡単に上りきってしまう。故に結界が施してあるのですが、それも大量の魔物には壊されてしまうでしょうね」
ああ、まあ天井に張り付いてる虫に壁とかあってないようなもんか。
体重とかの関係でそんな簡単にいかない気もするが、ファンタジー世界だしな。
ていうか結界があるのか、結界ってバリアみたいなもんだろうか。まあ、そうなんだろうな。話の腰を折る訳にいかんから後で聞こう。
「では、一ヶ所ずつダンジョンの封印を解いて行くことにしましょうか。普段は五ヶ所いっぺんに封印を解いてダンジョン開きを盛大に行うのですが、仕方ありませんな。冒険者ギルドからも腕利きパーティを集め最前列に配置するようにしましょう」
「うむ、それがよかろう」
「我々カワウソ族もそうして下さい。腕が鳴ります」
領主さんとピンタさん親子が盛り上がってる。
俺とまんじゅうも頑張るしかないなあ。まんじゅうは生まれながらの戦闘民族だから大丈夫だろうけども。
俺はなあ、実践経験ほぼ皆無だからなあ、オーガと相撲取った位しか経験ないんだよなあ。
いつも通りウルトラ鑑定に期待するかな。
……うーん、ん?
なんか出してもいないステータス板が急に飛び出してきた。
なんだこれ?
名前 ヤスダ ♂
年齢 26才
職業 最強の教師
称号 もう一度地図鑑定しろ者
レベル 86
HP 889/889
MP 0/0
ちから 197
はやさ 226
みのまもり 222+100
ちりょく 255
せいしん 255
きんりょく 197
所持スキル
ケンカキック
ブーメラン(十)
ウルトラ鑑定
パーティメンバーステータス確認
装備
大防御のペンダント
あ、また何者かから称号の欄にメッセージ来てるわ。なんでいつも称号の欄で伝えてくんだよ。
なんだっけこの世界の管理人?の人からなんだろうけど。
もう一度地図を鑑定しろ者?また者ってついてるしさあ。なんなんだよこれ。
……どれ、もう一度地図を鑑定と。
場所名 ダンガンポート
説明
血の気の荒い領主の息子のマックスバリユ・ダンガンポートが、部下に命じて五つあるダンジョンの封印を、全部解こうとしてるのでなんとか止めて下さい。
特に裏などなく、勇者の脅しなんか効くかよ的なスタンスのようです。
……ええ……。
「……領主さん、血の気の荒い息子さんいます?」
「はい?ああ、まあ、いますね血の気の荒いヤツが一人」
「肝座ってます?」
「ああ、まあ、アイツの唯一の長所が肝座ってるとこ位ですな」
「……勇者の脅しなんて効くかよ、とか言いながらダンジョンの封印解いたりしそうですか?」
「………………やってるんですか?」
「ちょうど今やってますね」
俺達は大急ぎで連絡を入れて、とりあえず領主の息子の部下を止めて、一番でかいダンジョンの封印を解こうとしてる領主の息子自身を止めようと、まんじゅうウイングで飛んでる所だ。
まんじゅうのダークハンドは最大百本の腕が出せるのでカワウソ組と領主さんも余裕で一辺に運べるのだ。
一応もう一度鑑定しとこう。
場所名 ダンガンポート
説明
四ヶ所のダンジョンの封印を解く作業は領主の命令で中断できました。
しかし、一番大きな北のダンジョンでは領主の息子が封印を解こうとしてるのを止めに来たダンジョン都市の兵士を蹴散らしながら「勇者の言うことを素直に聞こうなんざ親父も丸くなったもんだぜ」とかとんちんかんなことを言いながら、ダンジョンの封印を解こうとしています。
……あ、今解いちゃった。
……領主の息子はニヤニヤしています。
……ダンジョンから土煙が上がるのを見て、ん?て顔になりました。
……土煙が魔物の大群が巻き起こすものだとわかり、迎撃体制にはいりました。
……戦ってます。
「ヤバイ、封印解いちゃいました。ピンタさん戦う準備しといた方がいいです」
「はいっ」
ピンタさんいい返事だ。
あ、見えてきた。すごい戦ってるわ。
ダンジョンと町の間の平原にある建物がダンジョンの封印を解いたりする施設かな。
その施設の前で戦ってる人達の中の一際でかいムキムキの人が領主の息子なんだろうな。
着地した瞬間に領主さんが先頭きって雄叫び上げながら魔物たちに向かって行った。
おお、さすがダンジョン都市の領主様だ。勇ましい。頼りになる。
「うおおおおおおっ!!!!」
ドーンっ!!!!!!
という派手な音を出しながら領主さんの拳が巨体を吹っ飛ばした。
魔物ではなくムキムキ息子が宙を舞った。
領主さんはとりあえず息子を殴りたくって仕方なかったようだ。
俺達パーティの、記念すべき初戦闘で討伐した最初の獲物は領主の息子になった。