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冷たくて儚い  作者: mikito
3/5

帰る場所

あかあかと

そう、あかあかと。


燃え上がる炎が、ゆらめいていた。

愛しいあなたの、瞳の中で……






「マチルダ」

おぼろげな声が、私の名を呼ぶ。

「マチルダ」

忘れていたはずの、私の名を……



「おい、いいかげん起きろ!」

今度はハッキリと、私の鼓膜は言葉を感覚した。

ひどい頭痛を感じつつ、私はゆっくりと目を開いた。

「着いたぞ」

ああ。

そうだった。


私はまた、生きのびたのだった。


車の窓ガラスを通して、巨大なビルを見上げる。

私は「ただいま」と、声を出さずにつぶやいた。

私の中の憎悪を鎮めるために。


私の左側のドアが外から開かれた。

「歩けるか?」

ああ、声の主はコイツだったか……

と、私は命の恩人様様をうつろな目で見つめた。

深い緑の瞳は、私を気遣う優しさであふれていた。

言葉の調子とは、裏腹に。


痛い。

とてつもなく。

私の中、奥深くに隠したはずの心が、痛い。


ーーー人の愛など、反吐がでる。


私は痛む身体をぎしぎしと動かして、アンドリューの貸してくれる肩につかまり、何とか歩き出した。


冷やかしの言葉のひとつでも

そう、ひとつでも

かけてくれればいいのに。


気遣うような視線をちらちら送るだけで

彼はあくまで黙々と

私をヴィオ社のビルへと導いてゆく。


私の、たったひとつの、帰る場所へ。







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