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相羽総合サービス業務日誌5・異伝  作者: 笠平
所長・倉田信也 篇
7/8

Ⅶ・『月仁交錯―怒と山と釡の遺産―』

 もうすぐ二月だ。

 北陸の空はまだ寒い。

 特にここ能登地方は実家の加賀よりも殊更寒かった。


 僕は各イベントに精力的に挨拶回りをこなし、年度末の売り上げも急上昇中だった。


「営業マンは足で稼げ。だが頭も動かせ」


 先輩の教えが思い出される。

 ただの熱血指導ではなく、裏付けられた理論で動いていた彼の教えはまだ僕の血肉となり息衝いていた。


 ただ頭空っぽで件数こなせばいい、という旧世代型の数打ちゃ当たる戦法ではない。

 一業種毎細分化したプロダクトインからマーケットアウトへの手法。

 その先にあるワントゥーワン戦略。


 徹底した先輩のレクチャーがあるからこそ、まだペーペーの僕が一営業所を切盛りできている。


 新年度こそは増員要請も叶えられるだろう。

 今は更に精進あるのみである。



◇◆◆◆◆◆



 さて、今日もよく働いた。僕は疲れた頭と体を癒すべく事務所のデスクに甘い茶菓子を咥えながら倒れるように座り込む。

 そして毎回恒例のPCのブラウザを立ち上げるとお気に入りのサイト『小説家になろうぜ』を立ち上げた。


 新着メッセージが1件あります!


 マイページに赤字で表示される新着通知がある。


「はいはい、いつも感謝してますよ、っと」


 早速クリックした。


――――――――――――――――――――――――――――――――

件名:なぁ倉田

送信者:熱血バカ

本文『なんで高井さんも白井さんもカロッゾもアイツのいいなりなんだよ! ガリアスまで何か洗脳されてるし……。逃げ道無いのかよぉぉぉ』

――――――――――――――――――――――――――――――――


 はぁ……チェックメイトは既に打たれていたようですね。


――――――――――――――――――――――――――――――――

件名:Re:

送信者:倉田信也

本文『さてお気に入りの小説を発掘しました』

――――――――――――――――――――――――――――――――

件名:Re2:おいおい

送信者:熱血バカ

本文『マジそっけないな、てかもう面倒なんだろお前!

   まぁいい。少しでも気を紛らわしたい、どんな作品なんだ?』

――――――――――――――――――――――――――――――――

件名:Re3

送信者:倉田信也

本文『http://ncode.syosetunarouze.com/n8965bn/

タイトル『月仁交錯―怒と山と釡の遺産―』

筆者『早海 龍』

戦女神の地”ファニエビューラ”と呼ばれる衰退世界。

その地で巻き起こる亜人組織の壮大なファンタジーです。

ハーフバンパイア・リイちゃんと人族アーレスを中心に多彩な登場人物が織り成す過去から未来へとつながる物語。

リイちゃんのチーズパイで釣れるチョロインっぷりは萌え萌えです。

もう先輩もこれを読んで亜人の嫁さん貰う気分を先取りしてください』

――――――――――――――――――――――――――――――――


「うん。送信」


 ははは、もう重症のようだ。

 そんな気分の時にうってつけの作品。


 さすがの先輩もじっくりと読んでくれる――


「なぁ?!」


 新着メッセージが1件あります!


――――――――――――――――――――――――――――――――

件名:読み終わった……

送信者:熱血バカ

――――――――――――――――――――――――――――――――


 またかぁぁぁぁ!

 一体全体どういうことだってのぉぉぉぉ!



◆◇◆◆◆◆


――――――――――――――――――――――――――――――――

件名:読み終わった……

送信者:熱血バカ

本文『なんというか今までの倉田のお勧めとは感じが違う作品だな。

まぁ今までがガッツリジューシーの肉料理だとすると、コイツはフレッシュで良い香りが漂う果実のような小説だ。

またこんなたくさんの登場人物を殺すこともなく書き分けているのが凄い。

ジョノの天才肌も、ヒョウガのイケメンっぷりも、ラディのまっすぐさも、色んな漢がいて俺は好きだな。


集落に閉じこもっての閉塞感ではなく、世界を股にかけての広がるストーリーも秀逸だ。

散りばめられた過去篇でのキャラの掘り下げ、そして今後に広がっていくリイの出生の謎、うぉぉ、次話が待ちきれないぜ。


にしても早海先生、更新頻度すげぇな、毎日読みごたえある短編、これも要チェックだ』

――――――――――――――――――――――――――――――――


 うんうん、たまにはこんな本格ファンタジーもいいものでしょう。

 更新早いヤル気ある実力派の作者さんだけあります。

 またこの作品は色んなカップルの恋愛観もニヤニヤなんですよね。


 先輩、恋の形は色々なんですよ。

 ……ん、何故か鳥肌たってきた、どういうことだろう?



「なんだろう……僕も先輩もアーレスとラディのような真っ当な恋愛はできないような気がしてしょうがない……」

ぼちぼち続きます

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