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相羽総合サービス業務日誌5・異伝  作者: 笠平
所長・倉田信也 篇
6/8

Ⅵ・『はぐれOL、異世界へ行く(汗)』

まさかの連投

「魚が美味いんだよぉぉぉぉ!!」


 え、何の事かって?


 1月も中旬に差し掛かり僕は地元商店街への営業に精を出していた。

 そしてここ石川県は能登地方、冬の魚介のイベントが目白押しだ。


 穴水の牡蠣まつり、珠洲の鮟鱇まつり、宇出津の寒ブリまつり。

 まだ年も変わったばかりだと言うのに魚介祭りが盛りだくさんだ。


 そして近年のIT化に拍車がかかり、我々システム屋もこの手のイベントではひっぱりだこだった。

 小さい案件だと地元商工会青年部に対しタブレット端末のアプリ提供であったり、出店業者のwebサイトの改修。大きい案件だと官公庁系で入札が通ったばかりのポータルサイト構築やサーバー増築などなど。もっとも大きい方についてはあの熱血でおバカな某先輩がこっちにいる時に手を回していたものなのが少しひっかかる。


 脳筋のくせになんでこんなに仕事はマメなんだ、あの人……。

 


 そして今日も出先の帰り、あちこちから手土産を頂いてきた。

 基本自炊は出来ないのでお断りをしているのだけど、こっちの漁師さんの奥さんたちは皆気使い屋さんで、わざわざ弁当にして詰めてくれる。本当に頭が下がる思いだ。



 ああ、この厳選素材をジアスさんに料理してもらえたらなぁ……。


 僕はあの国内随一の調理人の腕に懐かしさを覚え、思わずきゅるると鳴る腹を押さえながら事務所の扉を開いた。



◇◆◆◆◆◆



 さて、些か貰い過ぎた戦利品を冷蔵・冷凍・今晩の食事用に分けデスクへ戻る。

 僕は摘まんだタコの煮つけを頬張りながらPCのブラウザを立ち上げるとお気に入りのサイト『小説家になろうぜ』を立ち上げた。


 新着メッセージが1件あります!


 マイページに赤字で表示される新着通知がある。


「はいはい、何の用ですかぁ?」


 早速クリックして見た。


――――――――――――――――――――――――――――――――

件名:なぁ倉田

送信者:熱血バカ

本文『くらたぁ。独身っていいよなぁ。自由だよなぁ。たくさん遊べるよなぁ。



ちくしょーーーーー! 俺の人生ゲームオーバーだぁぁぁぁぁ!』

――――――――――――――――――――――――――――――――


 ああ、もうそこまで追い詰め……話が進んでいるんですね。今の内にご祝儀くらい用意しておかないとなぁ。


――――――――――――――――――――――――――――――――

件名:Re:

送信者:倉田信也

本文『先輩、人生には大事な袋が3つあると言いますよ。まぁそんなどうでもいい話はさておき、またお気に入りの小説を発掘したんでしばらく読んでいてくれませんか』

――――――――――――――――――――――――――――――――

件名:Re2:……

送信者:熱血バカ

本文『…………。アドレス送れ……』

――――――――――――――――――――――――――――――――

件名:Re3

送信者:倉田信也

本文『http://ncode.syosetunarouze.com/ n5108by/

タイトル『はぐれOL、異世界へ行く(汗)』

筆者『はっくしょん』

非情に僕が共感できるインドア系OLの異世界トリップ物語です。

魔王を倒す勇者、というありきたりな題材を用いながらも大胆かつオリジナリティあふれる斬新な展開が広がっていきます。

一味違う転生勇者の冒険をご堪能ください』

――――――――――――――――――――――――――――――――


「うん。送信」


 それにしても落ち込み過ぎだろう。

 ここは一つ、さっくり読める楽しい冒険モノでも紹介しようじゃないか。


 これで少しは元気が――


「はぁ?!」


 新着メッセージが1件あります!


――――――――――――――――――――――――――――――――

件名:読み終わった……

送信者:熱血バカ

――――――――――――――――――――――――――――――――


 なぁぁぁぁぁぁ!

 落ち込んでても相変わらずはぇぇぇ! あっちとこっち時間の流れ違うんじゃないか!?



◆◇◆◆◆◆


――――――――――――――――――――――――――――――――

件名:読み終わった……

送信者:熱血バカ

本文『ははは、これは面白い。

いやいや、実際伊上さんもこんな世界いたら間違いなく魔王だ魔王と後ろ指さされるよなぁ。いやいや、まぁそれはさておきこの主人公の女勇者、趣味はお前で能天気さは久保田みたいな感じだが、いやいやどうしてお前等2人よりも全然機転が利くじゃないか。

そして魔法使いのクロム……ぁはっはっは、いやぁ、面白れぇぇ、ちょっと伊上さんにもこの小説見せてやろ、ぷぷ。

そしてハムスター型妖魔のウォニット、この愛らしいキャラが2人をいいかんじに中和している。


うん、能力の気付きや活用なんかはホント俺らよりも立派なもんだ。やはり小説ってのはこうじゃないとな。

まだまだ物語も途中みたいだがブクマしとくぜ。いやぁ、このはぐれOL勇者の今後が楽しみだ。

はっくしょん先生、早く次書いてくれなぁ!』

――――――――――――――――――――――――――――――――


 まぁ大方予想通りの反応だ。

 そしてもっと更新欲しいのは同意だ。

 先輩の感想、とくに魔王がコミカルな扱いされてる作品はこうなるだろうな。


 ……だけど。

 だけど先輩、本部長に送るのはヤメテください。

 絶対に原因が僕だと割れるし、一体どんなお仕置きされるか想像もつきませんってばぁぁぁ。


 そしてあの人はほんとーに過去の細かいことを無かったことにするなぁ。

 あの時だって、僕が素晴らしい能力分析を示したって言うのに、たくもうっ。



「まぁ今では違う世界の出来事……。異世界ではただのゲーマーだって勇者になれるんだ。僕だって負けてられるか!」

よぉし、クレームはないよな?

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