Ⅱ・『魔砲を滑るものたち(ウィザーズガンナーズ)』★
名作紹介は続く……
石川県珠洲市の朝は早い。
今日は地元の商工会の依頼で漁師と民宿のオーナーさんの為のPCセミナーの準備に駆り出されていた。
今週は本社出張や富山への日帰りなどもあったためかなり疲労がたまっている。
Web予約の説明や、漁業組合の出荷システムなど、我が社のシェアも着々と広がりは見せているものの基幹システムは全て大手メーカー系に介入されているため売上的には微々たるものだ。
まぁこれ以上忙しくなるのは困る。
何せ営業所は僕一人しかいない。
昼前には予定の全てが消化でき、後は地元青年部へのマニュアル配布と軽いレクチャーを済ませようやくオフィスへと帰ってこれた。
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さて、貰ってきたお昼のからあげ弁当を啄みながらネット三昧だ。
僕はいつも通りPCのブラウザを立ち上げるとお気に入りのサイト『小説家になろうぜ』を開いた。
新着メッセージが1件あります!
マイページに赤字で表示される新着通知がある。
「またか……」
早速クリックして見た。
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件名:おいおい倉田
送信者:熱血バカ
本文『アイツがこっちにいる原因小畑なんだって!? ちょっと東京まで行って文句言いに行け!』
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もう諦めてとっとと結婚しろよお前ら、と言いたいけどくっと堪える。
もうスルーする方向で返信する。
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件名:Re:それより
送信者:倉田信也
本文『それより、またお気に入りの小説を発掘したんですけど感想を聞かせてもらえませんか?』
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件名:Re2:それよりって
送信者:熱血バカ
本文『おいおい……それよりってなんだよ、それよりって!
まぁいいや、本当にお前も小説好きだよなぁ。で、どんな作品なんだ?』
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件名:Re3
送信者:倉田信也
本文『http://ncode.syosetunarouze.com/n1834cb/
タイトル『魔砲を滑るものたち(ウィザーズガンナーズ)』
筆者『南樹 幽助』
超本格派魔砲バトル小説です。細部まで拘り抜いた南樹先生の世界観、そして洗練された文章は必見です。様々な組織の思惑がぶつかり合い手に汗握ります。
主人公の『巻坂送也』に秘められたあらゆる砲撃を無効化させる謎の力。ヒロインとの偶然の出会い、友人の死、ヤンデレ幼馴染み、巻き込まれ加速していく物語!
何と言ってもヒロインの『神上蛍子ちゃん』!彼女の徹底したおっちょこちょい無くしてこの物語は始まりませんし終わりません!絶対に読んでください!
そして感想を聞かせてください』
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「送信と……」
まぁこれで誤魔化せるだろう。
南樹先生の圧倒的な完成された物語に驚き、のめり込むがよい、あはははは。
さて、ではミコミコ動画でも巡回しながら弁当を平らげてしまおう。
「ん……?」
新着メッセージが1件あります!
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件名:読んだぞ……
送信者:熱血バカ
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はやっっ! はやすぎるだろっ!
23万文字越えてるんだぞコレ!
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件名:読んだぞ……
送信者:熱血バカ
本文『注意力散漫な蛍子……馬鹿だろ、コイツ!
送也も送也だ……カワイイ幼馴染みを終始振り回して。幼馴染みに想いを寄せられているってすぐ分かるだろ、鈍感野郎! まぁ物語なんてこんなものか、あはは。
しかしホント息もつく暇ない怒涛の展開だな。
アユは本当に裏切ったと思ったし、シルヴィエも敵かと思ったんだがな。
エリクラは本当にラスボスって感じのラスボスだったし南樹先生は流石だな。
最終決戦の送也の覚醒はホント拳を握りしめ思わず声を張り上げてしまったぜ!
まあ最後の最後まで蛍子は蛍子だったな。いやぁ本当に一本取られた……。
早速評価10付けてしまったよ。南樹先生の『多種族を見つけた奴はみんなの敵!』も面白そうだったんでお気に入りに入れといたぜ』
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小野寺先輩……お前が言うなよ、お前が!
気付けるんならとっとと気付けよこの鈍感!
ってか、この人本当に23万文字をこの短時間で読んだのか……一体どうやって……。
しかし読了後『多種族を見つけた奴はみんなの敵!』に目を付けるとはなかなか目が高い。
このウィザーズガンナーズとは一味も二味も違う南樹ワールドにきっと彼も大ハマりするだろう。
魔法がある世界にも憧れるしVRMMOの世界も憧れる。何せ僕が異世界に行って得られた力はギャルゲの如き好感度メーターだ。今のところ仕事では役に立っているが出会いが全くないこんな田舎では真価を発揮することはできない。
「あ~、女だけの世界に行って、やっぱりハーレム作りたいんだよなぁ」
切腹大覚悟。でもこっそり更新。