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魔法界入学試験5





 それから五分ほど歩いて行くと、やっと悠人達の前にこれからお世話になる宿にたどり着いた。その宿には楕円系の板が宿に張り付けられている。


「グリュック僚?」


 悠人は語尾に疑問符を付けながら読み上げる。悠人にとってこの世界の文字が読めるのが不思議だったからだ。

 宿は見るからに古い木で出来た木造建築である。グリュック僚と書かれた看板は、この宿に当たる一階と二階の中間地点に付けられている。夜には梁にコウモリでもとまってるんじゃないかと悠人は身震いした。

 ジャンは、ジャンで、グリュックの中の設備に不安を募らせていた。


「どうしたんですか? 早く中に入りましょ」


 二人の気持ちに全く気づいていないアネ先生は、そそくさとグリュック僚へと入っていく。ノブを回して中に入っていくアネ先生の後を追って二人は入ると、左側にカウンターと待合室を予て右側にソファー、その前に異彩を放つ楕円のテーブルが置いてある。そのさらに奥には二階にあがる階段があるだけだった。


「誰もいないな」


 初めに口を開いたのはジャンである。それに釣られるようにして、本当だね、と悠人は相槌をうつ。


「いるわよ。皆部屋にいるだけよ」


 その発言に、ここに良く来るのか? と悠人は思った。どっから見ても、こんな僚に入ろうと思わなければ、逆にこっちから願い下げだ。


「それにしても、僚には簡単に入れたし無用心ですね」


 悠人は僚の中を眺め渡してからアネ先生に話しかける。


「盗まれる物なんて何もないのよ。それに盗みにもこない」


「どうしてですか? だいたい、僚って言うくらいなんですから女子だって居るんじゃないんですか?」


「それが?」


 短く切り返されて、悠人は口を噤む。察してくれると思っていたので、悠人にとってこの返しは予想外だった。


「大丈夫。言っとくけど、ミリテリア魔法学校って結構名門なのよ。そんじゃそこいらの泥棒さんなら逆にやっつけてしまうわ」


 なるほど、と悠人は唸った。けど、それなら僕が襲われたときどうするんだ。誰も襲わないと思うが。と悠人はまた自分の魅力のなさに唸る。


「それよりも行きましょうか。三人目のあなた方のパートナーがお待ちかねだわ」


 先程と同じようにアネ先生が先導してフロアの奥にある階段を上った。階段を一歩登るごとにギシッと音がたつ。おいおい。スっぽ抜けたりしないのか? と平気で登っているジャンを横目に、悠人は抜き足差し足でアネ先生について行く。

 階段を上がりきって、右の部屋から三番目が悠人達の部屋になった。


「では、ごゆるりと。先生は下にあったソファーにでも座って待ってるわ」


 そう言って、アネ先生は登ったばかりの階段を、踵を返し降りて行った。

 悠人は部屋の扉を見る。同じ目線に金色のプレートがあり、021と書いてある。多分だが、部屋の番号だろうと推測する。


「じゃあ、開けるよ」


 悠人はジャンに確認を取る。その答えにジャンは首を縦に降る。


「…………」


「…………」


「…………」


 三人は同時に固まり無言となる。



 悠人とジャン、それに彼女との三人の初めての顔合せは、最悪のものだった。いや、不運だった、と言うべきだろう。

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