魔法界入学試験2
その男は悠人と同い年に見えた。癖毛のある赤い髪に碧眼が印象的な男である。どこからどう見ても日本人ではないのは明々白々であった。それなのにどうして話せるのだろうか? と悠人は疑問に思ったが、今はそれを飲み込んで会話に専念することにした。
「名前、なんて言うんだ? オレはジャン・ミラノ・グランツォーネ。呼び方はジャンでいいよ」
聞いても居ないことをペラペラ話す男は、ジャンと言う名前らしい。余りの声の野太さに悠人は気が引けた。
「僕は、中井悠人。悠人でいいよ」
「ユウトね。よろしく。生まれは日本か?」
おぉ、一発で当てたと悠人はジャンに拍手する。
「そうだよ。ジャンは?」
「オレか? オレはイギリスだよ。それにしてもお互い言語違うのどうして話せるんだ?」
悠人自身もそれは気になっていた事なので、返事をするかわりに首を横に傾ける。そうか、とジャンは言うと一緒になって首を傾けた。
それにしても、フレンドリーな奴がいてよかったと、悠人はホッと胸をなで下ろす。人見知りと言うわけではなく、悠人は話しかけるのが苦手であった。
話題もそれで切れてしまったので、悠人は無意識にまた外を見る。進行方向に、遠くではあるが町が見えてきた。心が踊る。どうやら、あまり期待はしていないがやっと本場の魔法が見れると思うと胸は高鳴るらしい。
「皆さん、こんにちは!」
突然、列車の前の方から声がする。前の席に手をかけて悠人は身を乗り出すと、黒のローブを着た女を見つけた。悠人の服とは明らかに違う。ちなみに、悠人は黒のポロシャツに白のアウター。それに裏地のドットデニムと今にも最近の男子らしい服を来ていた。
「もうすぐ『魔法中央都市』に到着します。列車の旅はどうでしたか? え、楽しかったって。それは嬉しいですね。ところであなたは誰ですかって? はい。私はこの度あなたがた入学する魔法学校の先生である、アネモーネ・ドラル・ラングと申します。アネ先生と呼んでくださいね」
アネ先生は、饒舌に快活に話し始める。背中を覆い尽くすブロンドで整った目や鼻、そして可愛らしい小さい口。到底、先生とは思えない童顔である。
アネ先生は自分のハイテンションを少しでも分け与えるために、しきりにテンションの低い生徒にウィンクする。
「それにしても暑いですね。皆さんは暑くないですか?」
誰も返事を返さない。それもそのはずである。アネ先生は、まだだるそうな顔をしている人のためにローブを脱ぎ始めたのだ。何をしているんだ!? と言いたい所だが、悠人も男でである。先生の動きに目が釘付けになる。
悠人とは、呻きそうになる。ローブの中から現れたのは世に放ってはいけないボディーだった。既に周りの何人かは、うっ、と声を漏らしている。アネ先生がこれでもか、と見せつけてきたのはチャイナドレスのような物だった。胸部分がかっぽりと空いており、谷間が見える。
何やってるんだ、この人、とは思うものの誰も目をそらさない。
「もう一度言います。列車の旅はどうでしたか?」
「楽しかったです!」
先程とは違い、主に男子の声が返ってくる。無論、その中に悠人も含まれていた。まぁ、これが男だと自分を正当化する悠人を不服そうにみるジャンが言った。
「おい。あれは止めとけ。ああいうのは腹黒いぞ」
うん。確かに、と思いつつ悠人はアネ先生をチラ見する。それを見て、だめだこりゃ、とジャンは頭を抱えた。
「お前、あれがタイプなのか」
呆れた声でジャンが言った。悠人は席に着くとジャンの方を向く。
「いや、そういうわけじゃないけどさ……ほら、ね」
口ごもりながら、悠人は手でお山を表現する。それを見て、ジャンは嘆息した。




