プロローグ
村が赤々と燃え上がる。少女は目を見開き立ちすくんだ。村人たちは悲鳴を上げ、村の外へと逃げ回る。
彼女の前に白煙の向こう側から巨体なシルエットが浮かび上がっている。少女は恐怖から吐き気を覚えた。その体は、どう見ても人間ではない。
何が起こっているのか彼女にはわからなかった。その刹那、赤い二つの目玉がこちらに向いた。二つの眼は少女を捕らえる。
彼女は、それに気づき逃げ出そうとするが、恐怖で足がうまく動かない。足はやつれて、彼女は地面につんのめった。
グオォオオォオオオオオ!!
巨体の怪物は、口を開くと咆哮する。その叫びは、地面を揺らし、白煙が吹き飛んだ。
少女はその姿を見て戦慄した。その姿はまさしく、
『鬼』だった。
体が言うことを聞かない。その間に鬼は、一歩一歩と歩調を緩めることなく近づいてくる。
赤い肌、頭から突き出た二本の角。そして、見れば見るほどおぞましい赤い眼。黒く長い髪は、背中を半分ほど覆い隠している。
少女の双眸から涙が流れ落ちる。誰か助けて! 切に願ったが、自分のことしか考えていない村人たちは、少女に見向きもしない。
それでも救いがあると信じて、少女は願う。誰か助けて! と。