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6.優しいお姉さん

 岬さんに仕事のことを教えてもらう。

 聞いている限りは社長のスケジュール管理が主で、後は書類作成や電話応対とか、雑務もあるみたい。

 ビジネスマナーを身につけていけば大丈夫とは言われたけど、一番は社長との相性かもしれない。


「社長は悪い人ではないけれど、ここだけの話……少し奔放なところもある方だから。全て真に受けちゃダメ。でも小鳥さんは大丈夫そうかしらね」

「どうでしょうか? 私、あの氷室さんの方がキツイと思います」


 私の言葉に岬さんが苦笑する。


「氷室さんは言葉遣いと表情で誤解されやすい方だけれど……本来は優しい人だと思うわ。何度も助けて頂いたし、厳しい方だけれど相手だけではなく自分にも厳しいタイプね」

「私、やたらと噛みつかれている気がして。まだ始まってもいないのに……」

「それは職業柄もあるかもしれないわ。ボディガードもしてるから」

「え? でもそれって会社で雇うとか、そういうことじゃないんですか?」


 私が疑問をぶつけると、岬さんが少し考え込んだ。

 なにか複雑な事情でもあるのかな?


「勿論、何人もついているのだけれど。その中で一番傍にいるのが氷室さん。社長もとても信頼しているから。氷室さんは橘家と親交が深いと聞いたことがあるの。それもあるのかもしれないわね」

「何だか私にとっては別世界のお話みたいです」

「私も一般家庭だから、あのお二人の御苦労は最初よく分からなかった。でも、仕事をするようになって私たちと同じような悩みもあるし、同じ人間だって。そういう風にも思えるようになったから。小鳥さんも大丈夫」


 岬さんが優しく微笑みかけてくれる。

 このままずっと一緒にお仕事とお話もしていたい気持ちになるけど、もうすぐいなくなってしまうだなんて。


 社長の拘りで秘書は一人だけみたいだし。

 やっぱり、不安の方が大きい。


 私の表情を見て、岬さんがふわりと笑って優しく手を取ってくれる。


「そんな顔しないで。暫くは私もいるし、私がいなくなっても不安になったらいつでも連絡してね。それに社長と氷室さんも、いざという時にはかならず小鳥さんを助けてくれるから」

「お二人が、ですか?」

「秘書は社長を支える存在でもあるけれど、それはお互いに言えることだって。いつもそう言われていたの。社員を守ることも大切だって、よく言っていたから」

「そう、なんでしょうか? そういうのって失礼ですが社交辞令なイメージがあって。私はあまり信用してないです。いざとなった時は自分がしっかりしないとどうにもならないって思いますけど……」


 私の言葉に岬さんが一瞬驚いたように目を丸くする。

 でもすぐにまた優しい笑顔に戻る。


「小鳥さんは強い子なのね。凄いわ、誰でも真似できるようなことじゃない。一生懸命に生きてきて、だからこそ優しい雰囲気なのに強さを感じるのかしら。私じゃ頼りにならないかもしれないけれど、いつでも頼ってね」

「そんなことないです! 私はたまたま、そうなっただけで。今も岬さんに頼りきりです」

「ふふ。ありがとう。いっぱい頼ってね」

「はい!」


 こんな風に言ってもらえるのは初めてだったから。

 凄く嬉しいな。


 優しいお姉さんができたみたい。

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