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5.私が選ばれた理由

 席に着くと岬さんが、驚かずに聞いてね、と申し訳無さそうに呟く。

 内心緊張しながら、はい、と頷いた。


「社長はね、今婚約者を選べと言われているらしいの。それでなるべく真面目そうで清楚な女の子を探していたのだけれど……社長、あんな雰囲気でしょう?」


 最後の方を耳打ちするように悪戯っぽく言う岬さんが可愛らしくて、私も笑ってしまう。

 だって、社長はイケメンかもしれないけど……何だかチャラい感じだし。

 寄ってくる女の子もそんなイメージがどうしても付きまとう。


「で、社長も寄ってくる子は拒まずだったのだけれど……そういう訳にもいかなくなって。だからと言って大企業のお嬢様とも婚約したくないみたいで……」

「でも、社長は橘コーポレーションの御曹司なんですよね? そんなことを言っても大丈夫なんですか?」

「本来はダメなんでしょうけど……私も詳しいことは分からないの。自分で相応しい人を見つけたいのかもしれない。私が言われたのは、小鳥さんに秘書をしてもらうことと婚約者のフリをして欲しいということ」

「……え? えぇっ! 全く話が繋がってきませんが……」


 どういうこと? それと秘書が何で関係あるんだろう。

 私の見た目と関係あるのも分からないし……。


「そうよね。私も正直社長のお考えはよく分からない。もしかしたら本命がいて、その子と小鳥さんを比べたらよく似ているのかもしれない。もっと他の理由かもしれないけれど、前にいた秘書の子は社長目当てでコネ入社したみたいだから……」

「はあ……」

「氷室さんと全く合わなくって、その子の方が音を上げて先に辞めてしまったの。その後に社長の方で動きがあったみたい。今回は急なことだったけれど、小鳥さんが来てくれて良かった。社長が履歴書を見てこの子だ! って嬉しそうだったから」

「……私はとても複雑な気持ちですが」


 聞けば聞くほど納得できないことだらけで。

 私、とんでもないことを引き受けてしまった気がする。

 履歴書を見たのなら、私が施設育ちだってことも見ているはずだけど……それでいいのかな?


「私、実家がお金持ちどころか施設育ちですが……」

「それも確認しているはずよ。それも含めてだと思うわ。お給料は見合った金額が支払われるはずだし……悪いことばかりではないはず。でも、本当に無理だと思ったら私からそう伝えるから」


 岬さんがそこまで話して私を見つめる。

 突飛な話すぎて、また理解が追いついていないのに選択しないといけないだなんて。


(どうしたらいいんだろう……)


 秘書はまだしも、婚約者のフリは無理があると思う。

 私が考え込んでしまうと、岬さんも苦笑する。


「婚約者の件は一旦置いておいて。秘書のお仕事がどんなことか、先にやっていきましょうか」

「……すみません。少しだけ、時間をください」


 私が頭を下げると、分かったわ、と岬さんも頷いた。

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