48.気になって仕方ない
氷室さんに後押ししてもらって、心は決まった気がする。
おかげで気持ちがスッキリとしてきた。
「氷室さんが後押ししてくれたから、私もう決めました」
「そんなにすぐに決めていいのか?」
私は頷いて笑いかけた。
「私はこれからも私の人生を歩んで行きたいです。勿論、家族がいてくれれば心強いけど……やっぱり、今の生活が性に合っているから」
氷室さんは私が話す間も真剣に私を見てくれていた。
最後まで聞いてくれた後、小さく頷く。
「そうか。君らしい選択だ。私はその意思を尊重するよ。うまく言えないが……また落ち込むことがあったら、いつでも声をかけてくれ」
「ありがとうございます。何だか、最初に厳しく言われたのが嘘みたいですよね。もっと他の人にも優しく接すればモテそうなのに」
ウインナーコーヒーを飲みながら、自然に言ったつもりなのに。
何故か氷室さんの動きが止まる。
「正直に言って、君以外の女性と仕事のこと以外で会話することが少ないから、比較にならないかもしれないが。私は小鳥さんだから気になっている……と思う」
氷室さんは珍しく、妙に歯切れの悪い口調で呟いた。
私だから気になるっていうのは……どういう意味で?
……ここまで来たら、もう一歩踏み込んで聞いてみよう。
「それは上司だから……ですよね?」
聞かなければいいのに、聞いてしまった。
氷室さんは少しの間、考え込んでから私と目線を合わせる。
その真剣な表情から、目を逸らせない。
「勿論、それもある。だが、それだけじゃないのかもしれない」
「それって……」
先が気になってしまう。
胸がざわついて仕方ない。
でも、嫌な感じじゃなくって。
少し期待してしまうような、そんな感じ。
「私は少なからず君に好意を持っているみたいだ。特に悩んでいる小鳥さんを見ていると、どうにかして手を差し伸べて力になりたい」
「嫌われていないのは、嬉しいですけど……それに、色々と助けてくださってますし」
この先を聞いて私が期待している答えと違っていたら、少し怖い。
私も最近氷室さんと過ごす時間が、嫌じゃなくなっているし。
出生の話がきっかけで、距離感が縮まったのは確かだけど、あくまで心配しているだけ、かもしれないし。
私が一人緊張していると、氷室さんが静かに口を開いた。
「うまく伝えられなくてすまない。正直、私も分からない。だが、海音と小鳥さんが本当に婚約しなくて良かったと安堵した」
「そう、なんですか?」
「ああ。だから、これからも君のことを支えてもいいだろうか? 君のことを放っておけない」
支えても、って……側にいてくれるっていう意味で?
上司としての優しい気遣いなのか、それとも上司と部下とは関係なく、私個人への好意なのか。
緊張するけど、私から突っ込んで聞いてみよう。




