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地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!  作者: あざらし かえで
第三章 自分のこと、これからのこと
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34.足跡を辿って

 聖セフィド病院に勢いのまま到着する。

 でも、よく考えたら来たところで個人情報をそう簡単に教えてもらえないし、どうしよう……。


 とりあえず当たって砕けろで自動ドアを潜る。

 受付の人に話を聞いてみると、暫くお待ち下さいと言われソファーに座って暫く待っていた。

 待った結果、詳しいことはやっぱり教えてもらえなかったけど、母を担当していたという看護師さんが会ってくれるということになった。

 これから休憩に入るから、わざわざ私のために時間を割いてくれるらしい。


 落ち着かないままロビーで待っていると、ボブに切りそろえられた黒髪の優しそうな看護師さんがやってきた。

 私とそこまで歳も変わらない感じに見える。


「小鳥……風音さんですか?」

「あ、はい。わざわざすみません。ご休憩の時に」

「いいえ。大丈夫ですよ。私、南本(みなもと)といいます。小鳥さんって少し珍しいお名前だったし、色々と明るくお話してくれていたから……もしかしてと思って」


 歩きながら話しましょうと、中庭に案内してもらうことになったので看護師の南本さんの後に続いて歩く。


「前に一度だけ話してくれたことがあったんです。娘さんがいたんだって。ただ、どうしても育てられなかったから施設に預けたと」

「そうですか……施設の園長先生から身体が弱かったとは聞きました」

「持病をお持ちだったんです。それが原因で三年ほど前に。自分には母親である資格はないから、このまま何も知らずに育ってくれたらって。少し寂しそうに仰っていたのを覚えています」


 看護師さんというお仕事をしてる方だし、今までもたくさんの人を見送ってきたのかもしれない。

 その中でも母のことを覚えていてくれたことが、私も何故か嬉しかった。


「風音さんのお名前は、お父様とお付き合いされていた頃に自分は音楽が好きだから、もし子どもが産まれたら音の字が付く名前をつけようってお話されていたそうです」

「それで、私も音が付く名前に……父がどんな人物だったとか、話していましたか?」


 私が矢継ぎ早に質問してしまうと、南本さんが苦笑する。

 なんだか、恥ずかしい……。

 必死に笑ってごまかす。


「お互いに愛し合っていたけど、結ばれてはいけないと思って自分から身を引いたそうですよ。自分では分不相応だからって。優しい方だったそうです。だから、余計に傷つけてしまったんじゃないかって気にされてましたけど……」


 分不相応……。

 ドラマのように色々とピースが組み上がっていく。

 

 でも、そうだと認めてしまうのは怖くて。

 今は可能性が分かっただけでも十分だ。


 南本さんが良い人だとはいえあまり長く引き留めてもいけないし、そろそろお暇したほうがいいかもしれない。

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