子連れのレディー③
レディは、ドーザーの言葉を聞き、グラスの中の酒を軽く揺らした。
「賞金首の護衛ねぇ……」
「そういうことだ」
ドーザーはニヤリと笑い、指を軽く鳴らした。
すると、部下の一人が立ち上がり、店の奥に消えていく。
数瞬の沈黙の後、重い金属音とともに裏口の扉が開く。
そこから連れてこられたのは、痩せた体に薄汚れたコートを羽織った男だった。
手首は後ろ手に拘束され、顔には擦り傷と疲労の色が濃く刻まれている。
それでも、その目には強い意思が宿っていた。
「こいつが、今回の護衛対象か?」
レディがじっと男を見つめると、男は静かに頷いた。
「……アレック・シェルマン」
「で、何やらかした?」
レディが尋ねると、ドーザーの部下が苦々しい表情で答えた。
「ナクシス南部の施設から抜け出したらしい。重要な情報を持ち出したとかで、色んな奴らが探してる」
「なるほどね」
レディは興味なさげに鼻を鳴らす。
「つまり、こいつを無事に届ければ、約束の報酬がもらえるってことか」
「そりゃそうよ」
ドーザーは肩をすくめた。
レディは少し考え込んだ。
五万クレジットは悪くない。
だが、こういう話には決まって裏がある。
それに──
「どうした?」
ドーザーがニヤニヤと笑う。
レディは鼻で笑いながら、軽く顎をしゃくった。
「いいぜ、やってやるよ」
「決まりだな」
ドーザーが満足げに頷いた、その時だった。
遠くでかすかな閃光が走る。
次の瞬間──
「伏せろ!」
鋭い音が響き、店の窓ガラスが弾け飛んだ。
レディはカイルの腕を掴み、素早く身を屈める。
背後で何かが砕け、ガラスの破片が床に散らばった。
「くそっ……やっぱり来たか!」
ドーザーの部下が叫ぶ。
レディは素早く状況を確認する。
店の外、影が複数動いている。
「追っ手か?」
「間違いねぇ」
レディは微かに笑い、腰のホルスターに手を伸ばした。
「カイル、下がってろ」
「……」
カイルは無表情のまま、静かに状況を見つめていた。
レディは短く息を吐くと、素早く駆け出す。
敵の一人が何かを構えたが、その瞬間、レディの蹴りが武器を弾き飛ばしていた。
銃を奪い、すかさず相手の動きを封じる。
「くっ……!」
さらに、別の敵が接近する。
レディは身を翻し、相手の動きを封じると、手首を固定し、反撃を封じた。
その隙に、カイルが静かに何かを拾い上げる。
しかし──
「カイル!」
レディは素早く彼の腕を掴む。
カイルの瞳には、計算された冷たい光が宿っていた。
──違う。
レディは、それがただの子供の目ではないことを本能的に察した。
「下がってろ」
短く言い放つと、レディはナイフを蹴り飛ばした。
敵の一人が拾おうとするが、その瞬間、レディの素早い動きが先に出た。
「甘いね」
彼女は瞬時に動き、相手の腕を捉え、体勢を崩す。
残りの敵たちは警戒しながら距離を取った。
レディは軽く息を吐き、彼らを睨む。
「さて、どうする? まだやるか?」
追っ手たちは互いに視線を交わす。
そして──
「……撤退だ」
静かな声とともに、影たちは闇の中へと消えていった。
レディはタバコを取り出し、火をつける。
「やれやれ……」
紫煙を吐き出しながら、カイルの方を振り返る。
カイルはレディを見上げていた。
「……終わり?」
「ああ」
レディは短く答えた。
「仕事の続きだ。行くぞ」
シェルマンを連れ、レディとカイルは夜の中へと歩き出した。
二つの衛星が、静かに彼らの道を照らしていた。