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メモリー  作者: tko
2/4

子連れのレディー②

「よぉ、レディ。久しぶりだなぁ」


先頭に立つ大柄な男が、ニヤついた笑みを浮かべる。

傷だらけの顔に、不揃いな歯。

レディもよく知る顔だった。


「この町に顔出すってことはよ……」


男の目が、ゆっくりと細くなる。


「金、返す気になったっつうことか?」


そう言いながら、レディの隣にどかっと座る。

カウンターの上に肘をつき、レディのグラスを手に取ると、そのまま一気に飲み干した。


「ちっ……安酒じゃねぇか」


レディは無言で、空になったグラスを見つめる。


その後ろで、別の男が動いた。

無造作に、レディのこめかみに銃口を押しつける。


「……で? どうする?」


周囲の客が、そっと席を立ち始める。

巻き込まれたくない、という雰囲気が場に広がる。


だが、レディはまるで気にした様子もなく、

グラスの底を指先で軽く回しながら、面倒くさそうに口を開いた。


「ドーザー。三年前の金のこと言ってんなら、あれはあんたがよこした仕事のせいだろ?」


男――ドーザーは、ニヤついたまま、黙って聞いている。


「あたしは自分の仕事をしただけだよ。むしろ報酬を弾んでもらえると期待してたのに、あんたがよこしたのは鉛玉だった。……忘れたの?」


ピクッ、とドーザーの部下の指がトリガーにかかる。


「おいっ……!」


その刹那、レディの視界の隅で、カイルが動いた。


ポケットに滑り込む手。

冷たい刃が、月光を反射する。


殺すつもりだ。


レディは即座に叫んだ。


「カイル!」


同時に、手を伸ばす。


カイルの手首を掴み、力いっぱい引き戻す。


その衝撃で、ナイフがカウンターの上に滑り落ちた。

刃先が木の表面に突き刺さる。


レディは、その瞳を覗き込んだ。


──冷たい。


暗い。


まるで、何か別のものがそこに宿っているような──


「やめろ、カイル」


レディはさらに力を込める。


「危険はない、死ぬほどのことじゃないよ」


カイルは微かに瞬きをした。


その瞳が、じわりと揺らぐ。


ゆっくりと、カイルの体から力が抜けていく。


レディは、そのままカイルの肩を押さえながら、ドーザーへと視線を戻した。


ドーザーはゆっくりと笑い、未だ銃を握る部下の肩を軽く叩いた。


「おいおい、やめとけやめとけ」


「実はよ……ちょっとした仕事があってな。お前にピッタリな案件だ」


レディは眉をひそめた。


「仕事?」


「ああ。お前にとっちゃ悪くねぇ話だ」


ドーザーは、わざとらしく間を置いて囁く。


「──賞金首の護衛だ」


レディは、一瞬だけ目を細めた。


賞金首の護衛──

用心棒家業の中でも、とびきり厄介な仕事だった。

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