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勝手に魔王認定された魔女は勇者に魔力を奪われたので取り戻すために旅をする~なお500年経っても魔力は戻っていない~  作者: 山岡桃一


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『勇者王決定戦』出場申請

「役所、ですか? 役所ってあの、お役所仕事の人がいる役所ですか?」

 お役所仕事。形式ばかりで時間をかけ、融通が利かない人を揶揄する言葉だ。

「アリスが持つ役所のイメージは漫画から得ているのかも知れないが、役所というのは……まぁ全ての人が、とは言わないが……ちゃんと規則に則って仕事をしているだけだからな。

 それが人によっては、決まったパターンでしか動けない魔術、いわゆる魔術的のように見えて、それが融通が利かない、と思えてしまうのかもしれないなが、実は役所の仕事も大変なんだぞ」

 昔、貴重な資料を閲覧するため……あわよくば持ち帰ろうと思って役所の職員を装って忍び込んだことがあったが、できるだけ怪しまれないよう繁忙期に忍び込んだのがよくなかった。

 大したミスではなかったが、その結果、役所の仕事手伝うハメになってしまい、仕事が終わる頃にはぐったりで、しかも職員を装っているだけなので給料桃もらえず、弁当一つで頑張ったという。

 新人にしては頑張ったな、という労いの言葉も全く嬉しくなかった。

 一応当初の目的通り資料を閲覧できたのが唯一の救いでは会ったが、その内容は裏金の流れという、私にとってはどうでもいい内容だった。

 情報屋いわく『魔力の集束地』に関する情報だったから飛びついて買ったというのに……

 今度あの情報屋に会ったら、そのフサフサの頭髪に特性魔導永久脱毛材をぶっかけてやろう……と思ってから30年。

 どこか別の地で偽情報を売っているのか、結局あれから一度も会うことはなかった。

 まぁ私だけじゃなく、いろんなところから反感買ってそうだから、始末された可能性はあるな。

「へぇ。そうなんですね。

 私、役所には行ったことがないのですが、どこかの役所には美味しい食堂があると雑誌で見たことがあります。

 はっ! まさかこの町の役所がその」

「違う違う」

 この熱意をもっと魔導学の方に向けて欲しいのだが……

 そうだ。アリスに魔導料理を覚えさせればいいのか。それなら魔力制御も自然と身につくようになるし、今回の作業とも相性がいい。

「食堂はあるかもしれないが、今回の目的は『勇者王決定戦』に出場するための申請を出しに行くんだよ」「え? ということは、ルシアさんが勇者らーめんを作るのですか?」

「まぁな」

「それ、試食しても?」

「もちろん構わないさ」

 材料を聞いて試食する気になるかどうかは知らないがな。

「わぁ。楽しみです。

 けど先ほども言っていましたが、魔導料理は料理が上手であることが前提なんですよね?

 でもルシアさんはあまり料理はしない、と。

 それでも大丈夫なのですか?」

「もちろん普通に料理したのでは勝ち目はないが、ちゃんと秘策はある。

 そのためにはアリスの協力が必須だ。

 それにこれが成功したら先ほど食べた赤青よりも美味しい勇者みそらーめんが完成し、優勝間違いなしだ」

「それは凄いですね。それなら私にできることは精一杯お手伝いします」

 よし。これで言質は取れたな。

 今回出場するにあたって必要な、特に飲食店に関する書類や免許は既に偽造済みだから、あとは調理道具と材料を揃えるだけだ。

「ところで、ルシアさんが自分で料理してまで出場するほど『勇者王決定戦』というのは凄い賞品がもらえるのですか?

 まさか、自分の腕を試すだけ、ではないですよね?」

「まぁな。そもそも料理の腕を磨くつもりもないしな。

 私が出場する理由は、今回に限ったことではないのだが『勇者』という冠のついた大会では『勇者』に関する賞品がもらえることがある。

 しかし、ただの記念品や栄誉というケースも少なくなく、私も数々のガラクタをもらってきたが、この大会では優勝者が次の『勇者王決定戦』まで所持できる『勇者が身につけていた魔導石』が授与されるんだ。

 もちろん今まで通りただの石という可能性が高いが、それでもわずかな可能性がある限り『勇者』に関するものはできる限り手に入れたいからな。

 それで今回、ようやく都合がついてこの『勇者王決定戦』に出場申請ができるようになった、というわけだ」

 その都合とは、他の研究と重なっていないことと、勝てる見込みだ。

 何回でも挑戦はできるが、何回も挑戦するのは効率が悪いし面倒臭い。

「はー、なるほど。

 ではルシアさんが勝てるように私もお手伝いがんばりますね」

 そう言ってにっこりと笑うアリスだが『この時はまだ自分が材料になることなど知る由もなかった』……というプロローグが似合いそう。

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