脳内自己賛美
「そこまで喜んでいただけるなんて! 僕はなんて幸せ者なんだ!
本当ならもっと雰囲気の良い場所でお渡ししたかったのですが、ここで再会できたのも運命でしょう。
そう! 2人は同じ時代に生まれ、そして出会うべき時に出会う、まさに運命の2人だったのです!」
……何を言ってるんだ、こいつは……
今私は、無性に私と同じ時代に生きていることを後悔させたくなったのだが。
ここは立入禁止区域であり、まともに歩けるような道もない。
そのため、この『ブロードセリアの森』の管理者である役所の人間も、滅多にやってこないらしい。
それは足跡などの、誰かが侵入してきた痕跡が全くないことからもわかる。
しかしこの愚かな3人組がこの場所にいるということは、私とは違うルートからやってきたのだ。
もし同じルートからやってきていれば、早々に対策が練れたのに……
なので、人と思われる生命体3つが謎の失踪をしたとしても、この場所にやってきた、という答えにたどり着くには時間がかかる。
それに前回、私が指をくわえて見ていた『根こそぎ事件』で判明したことがある。
『セイヴィアーク』は溜め込んだ魔力を散らせると、同じ場所に現れることがないのだ。
あれから400年経った時点で、かつて『セイヴィアーク』が存在していた場所に行ってみたが、魔力は欠片も残っていなかった。
つまり、この場所はすでに用無し。
さて、それではいかにして『失踪』してもらうか?
先日改良したばかりの試作魔導手榴弾はどうだろうか?
大中小と三種類あるので、それぞれで威力を確かめるにも都合がいい。
この後、美少女魔導研究者に拘束された上に、プレゼントまでもらえるのだ。
こいつらの人生の最後には、少し贅沢すぎるかもしれんがな。
計画は完璧。
…………
とまぁ、ここでヒョロガキたちに『旅立って』もらうことは簡単だ。
とはいえ、私だって絶対にミスをしないとは言い切れない。
とてつもなく優秀な魔女や魔法使いが『失踪事件』としてこの場所を調べた時、わずかにでも残った魔力を確認されてしまうと、そこから追跡されかねない。
確か300年ぐらい前、魔女が『魔女狩り』から逃げる際、わずかな魔力から追跡され、捕縛されたと聞く。
3人爆殺となれば極刑間違いなし。それは嫌だ。
まぁ、そもそも私は自分の魔導研究のために人の命を奪ったことはない。
とりあえず冷静に……冷静に……怒りを鎮めて、こいつらの情報を得る。
そして毟り取れるものがあれば、とことんむしり取る。
冷静になるための、私はいつもの儀式を始める。
「すぅはぁ……」
大切なものを失った怒りと悲しみを乗り越え、大きく深呼吸をして立ち上がる。
私はルシア・ガルブレイ。
見た目年齢は17歳ぐらい。
セミロングの黒髪は手入れを欠かしたことはなく、500年以上生きていてもツヤツヤ。
声は少し渋いと言われたことがあるが、それはおばあちゃんのような声ではなく、威厳のある声質らしい。
身長156センチ。
胸は(私の)手のひらに収まる程度で、お世辞にも大きいとはいえないが形は素晴らしく良い。
そしてしっかりくびれたウエストに引き締まったヒップ。
これで身長が高ければトップモデル間違いなし。
まぁそもそも胸の大小で優劣を決めるのは愚かの極みである。
特に男。その視線、気づかれていないと思っているのか?
くたばれ、おっぱい星人とかいう愚民。
服装は『時代遅れ』にならないよう気をつけているため、私が500年以上前の人間だと悟られることはない。
むしろ『魔導研究者は引きこもり』というイメージを払拭するほどの、美少女魔導研究者。
趣味は魔導研究で生きがいでもある。
この世に魔力が存在する限り、私の探究心が衰えることはない。
強いていえば、この世界が終焉を迎える時、ようやく私の長い長い道のりが終わりを告げる時といえよう。
いや、その時になれば過去に戻れる魔術を開発して、やり残した魔導研究を再開するのも悪くない。
そんな素晴らしき私が『魔女狩り』を恐れて再び逃亡生活なんてまっぴらごめんだ。
そんなことになると、魔導研究はもちろん、髪や身体の手入れ、オシャレもできない生活を送ることになってしまう。
そんなことがあっていいはずがない。
と、私の素晴らしさを再認識する脳内自己紹介、いや『脳内自己賛美』は、いつも私に冷静さを取り戻させ、気持ちが再び前を向く。




