タイトル『のんびり魔導研究旅』(仮)
「服ってどういうものを選ぶんですか?
ルシアさんってバトルものですか? それとも現代ものですか?」
「それは漫画に例えると、って意味か?」
「はい。ルシアさんも私と同じで各地を転々としていると言っていましたし」
「漫画で例えなくても、現代ものだよ」
私の『魔王』関連の逃亡編は遥か昔に終わっているし、現状魔女として追われる立場でもない。
「この現代でバトルものなんてやろうものなら、傷害や器物破損ですぐに捕まるぞ」
警察などにバレない『特殊な事情』というのもたまにあるが、それは秘密。
私の危ない橋を教えるのはまだ早い。
「ということは、魔物を相手にしたりとか、悪の組織に乗り込む展開はないということですね」
「え……うん。
えーと……私たちの旅に強いてタイトルをつけるなら『のんびり魔導研究旅』かな?
ほら、私は魔導研究者って言っただろ?」
しばらくは『魔導研究だから』で押し通すしかないな……
「あー、そういえばそうでしたね」
「そうそう。だからバトルもののような、それ防御力大丈夫? と疑問に思うビキニアーマーなんて着たりしないぞ」
でも昔『冒険者ギルド』があった時代は、それに近い人もいた。
なんでも身軽に動けるらしいが、それと引き換えに羞恥心を捨てる必要があったようだが。
「それに現代ではカジュアルな衣服でも、魔術さえ施せば旅はもちろん、探検や戦闘だってできるからな。
アリスが今着ている服だって、私が魔術付与した魔導衣服だから、結構丈夫なんだぞ」
「え!? ルシアさんって服も作れるんですか?
さすが魔導研究者はすごいですねぇ。私なんてお裁縫もできませんよ」
「だろ。凄いだろ」
と、私は自慢げに笑うが、実際のところ、服は市販のものでそれに魔術を付与しているだけだ。
ただ裁縫はできなくもない。
逃亡時代はそれで目立つようなこともなかったから、ある程度は自分で直していた。
「ちなみに、これにはどんな魔術が使われているんですか?」
アリスは言いつつ、自身の服を軽くつまむ。
バトルものにつながるような、物騒な魔術付与は省こうかな……
「私がまず行うのは、覗き見防止、防水、防塵、強度上昇だな。
簡単に言えば、丈夫な服で真下から覗かれても大丈夫な服だ」
「なるほど。つまり、ラッキースケベが起きない服ですね」
「……まぁそうだな……」
そう言われると、なんか急に安っぽい感じに聞こえてしまうな……
なんか変な小ダメージを受けているうちに、目的の店に到着する。
ここは、この首都でもお手頃な価格で衣服と下着が購入できるアパレルショップだ。
「私、お店に入ることは滅多になかったのですが、挨拶とかした方がいいですか?」
「いや、必要ないよ」
迫害されて村を出た少女が、なぜこんなにも礼儀正しく育ったのか?
しかも上位魔女だから『お客様は魔女様』と踏ん反り返ってもおかしくないというのに。
アリスの善性がちょっと眩しい。
それはさておき。
まずはアリスの下着からだ。さすがに新品とはいえ、いつまでも私のものというわけにはいかない。
「アリス。気に入ったものはあるか?」
「えぇと……数が多過ぎて……」
たかが下着。しかしデザインの数は無数と言っても過言ではない。
それにここは下着専門店ではないが、種類は豊富。
今まで興味を示さなかったアリスでは、好みを見つけるのも大変だろう。
「では今回は私がアリスに似合いそうなものを選ぼうか。
でも次からはスマホなどで色々と情報を得て、これが欲しい、これが可愛い、というものを考えておくんだ。
それと、必要ない、という答えは却下だからな」
アリスが必要ないとか言い出したら、私はどうなるんだよ?
というわけではなく。
小さい胸をバカにする愚かな脳みそしか持ち合わせていない男にはわからないだろう。
しかし小さくあっても必要なものは必要なのだ。
「わ、わかりました。勉強しておきます」
「よし。それじゃぁ……」
採寸は昨夜の健康診断時に行っていた。
あとはアリスのイメージに合いそうなものを数点、そしてデザインはできるだけ違ったものを選ぶ。
これで今後、アリスは無意識にでも好みのものを着用するようになるはずなので、選ぶ方向性を見出せる。
次に、一応店員にはフィッティングは私が行うので何かあれば呼ぶ、と伝え、フィッティングルームへ。
カーテンを開けると、二人は余裕で入れる広さに、荷物を置くスペースもちゃんと確保されている。
ではまず、アリスに服を脱いでもらい……
「失礼します」
「……用があればこちらから呼ぶと伝えたはずだが?」
アリスに合わせていたところ、いきなり店員……っぽい人が入ってきた。
普通の店員なら、まずは外から声がけするだろうし、そう伝えている。
ただの同性を狙った、もしくは女装した変態犯罪者か?
あるいはこれがこの店の本来のやり方で、先ほどの店員に言ったことが伝わっていなかったのか?
現状判断がつかないので、一応話だけは聞いてやろう。
しかし怪しい動きを少しでも見せたら、その眉間に魔力弾を打ち込む用意はしておく。




