魔力探知
セイヴィアークが絶滅種であるということは、魔導関係の書籍だけではなく、一般教養の教科書にも載っているほど有名である。
なんといっても『魔王討伐のために勇者が使った魔導植物』だ。
勇者本人に関する本当のことが書かれた文献は全くと言っていいほど残っていないのに、セイヴィアークに関することだけはしっかりと残っている。
おそらくだが『セイヴィアーク』に関しては勇者を召喚した国が、国を挙げて探し出した説が一番有力だ。
あの時は私も指を加えて見ていたが、誇張などではなく、全兵士が『セイヴィアーク』を求めて国中を探し回っていた。
余談だが、若干出来の悪い部隊は『どれでもいいから適当に持っていけ』という指示を出したみたいで、山に生える植物を全て刈り取り、勇者に献上したそうだ。
結果、山はただの土の塊となっていた。
そんな逸話が残るほど超有名な『セイヴィアーク』だ。
発見した人は一躍時の人となるし、売れば大金が手に入るし、私が嗅ぎつければしつこいでは済まない譲渡交渉をする。
もちろんそれだけでは済まない。
魔導協会、あるいは国からの寄付の連呼を浴びる羽目になり、精神的に追い詰められそう。
そんな『セイヴィアーク』だが、扱いを間違えると全ては水の泡。
金も名声も手に入らない。考えようによっては手に入れないほうがいい、ということもあるが。
ではここから見える3人の人影はどうか?
もしただの金の亡者なら雑に引き抜きかねない。
もしそんなことを目の前で見せられたら、私の方が発狂しそう。
……どうするかな……
ここから確認できる3人の人影は、1人は細身で、2人はガタイのいい体格。
多分3人とも男性だと思われる。
外見だけでは、ちゃんと希少種だとわかって丁寧に扱う魔導研究者か、ただの愚かな金の亡者かは判断できない。
なので私の決断は急がなければならない。
まず話し合いは無理だろう。
金銭で解決するにしても、一般的な家一軒分ぐらいでは、私だったら譲らない。
まぁ豪邸でも譲らないが。
ここはやはり『偶然』霧が濃くなって視界が悪くなるのがいいだろう。
そして『偶然』無防備な頭の上から極太の木の枝が落ちてきたら気絶してしまうのではないかな。
それはもう防ぎようのないケースだ。誰かが誰かを責めることもあるまい。
ただし極太の木の枝は頭の上から落ちてくるとは限らない。
気絶さえさせてしまえば極太の木の枝でなくてもいいが、あとで思い出した時『攻撃を受けたんだ』と断定されると、後々面倒なことになりかねない。
ようは私の姿さえ見られなければ、追っ手を撒くような面倒なことをする必要もない。
そうと決まれば、自作の(違法)小型魔導通信端末(通称スマホ)を取り出し、魔力探知アプリケーションを起動させる。
漫画に出てくるような超人武闘家なら気配だけで人数を察知できるのだろうが、そんなことは私には無理だ。
なので視界が悪く、複数人を相手にしなければならない今回のケースでは、必須の魔導アプリだ。
昔の索敵は、魔法あるいは大掛かりな魔術を使用して、尚且つ対象の魔力が残った所持品が必要だった。
それが現代ではスマホの爆発的な普及により、スマホに使用されている魔力を探知することで、簡単に索敵できるようになった。
ただし『人間』を検知するわけではなく、あくまでスマホのみ。
そのため、スマホを持っていなければ意味はない。
訓練された傭兵なんかはハンドサインができるので、人数の完璧な把握はやはり難しい。
………………
起動からおよそ10秒。
私を除いたスマホを起動している反応は、目の前の3人だけ。
スマホを所持していない人物が隠れている可能性は十分にあるが、スマホとは別に周辺の魔力探知をしても意味がない。
命あるものは必ず魔力を持っているので、それは当然草木にも当てはまる。
なので調べたところで魔力反応ばかりになるため、時間の無駄だ。
この点は魔導研究の課題でもある。
生命体の魂の判別ができるようになれば、簡単に人間、動植物の区別ができるようになるが、難易度が高すぎて研究の糸口すら見つけられない。
それは私がポンコツだから、というわけではなく、少なくとも『表の人間』が可能にしたという話は聞いたことがない。
この手のピンチを迎えるたびに、凄腕傭兵に弟子入りして超人武闘家並みの気配察知能力を身につけたい、とは思うのだが……
私は美少女魔導研究者。やはり魔術で解決しないとな。うん。
部隊訓練とかキツすぎてついていける自信ないし。
それはさておき。
もう少し時間をかければ、周囲に侵入防止用魔術がしかけられていないかも調べられるが……
あろうことか、細身の人間が『私のセイヴィアーク』へ雑に手を伸ばそうとしている。
霧も極太木の枝も用意している時間がない。
高威力魔術で攻撃すれば阻止できるが、位置的に『セイヴィアーク』に万が一のことがあれば、私は泣き崩れてしまうぞ……
……仕方がない。




