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魔導研究オタ歴500年の独善魔女、規格外すぎる幼女を拾ってモチベ爆上げ被害も爆上げ  作者: 山岡桃一
我こそが勇者王(らーめん)

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駅前らーめん対決・開始

「それで、アリスはどうするんだ?

 現状、すんごいサービスに、天使様と褒めてくれた青色が優勢だと思うが。

 他に行きたいところがあれば、無理せず断ってもいいんだぞ?」


 この手の誘いは後出しが優位。これに対して赤色はどうするか?


 もうやれることもなく、汚い罵り合いの末に、殴り合いになるのは勘弁してほしい。


 昔、ちょっと貴重な魔術欲しさに演じた『私のことで争わないで事件』みたいになると面倒だ。


 あとできれば、アリスには第三の選択肢を取ってもらって、この場から離れたい。


「そうですねぇ……」


 どうやらアリスの心はサービスと、天使様という褒め言葉では決定打にならないようで、赤色、青色、マップと視線をうろちょろとさせている。


 そして、この異様な雰囲気に周囲が飲み込まれたか、駅前の人混みとは思えないほど異常な静寂に包まれる。


 つまり私たちは今、すんごい注目を浴びていて、写真や動画を撮られているのだ。


 だが、心配ご無用。


 私には認識阻害魔術、別名『自前モザイク魔術』というものがある。


 なので、一般人が扱う程度の魔力撮影では、私たちの顔がはっきりと映ることはない。


「むむぅ……」

 そんな静寂の中、アリスはなかなか決められないでいる。


「お嬢ちゃん。迷っているようだな!」


 そこへ、静寂を破るかのように、赤色が大きな声を出す。


「ならオレが決着をつけてやるよ!

 『元祖勇者みそらーめんレッド』の漢気! 見せてやるよおお!」


 どゆこと?


 まさか、無理やり連れて行くことで、解決しようとするつもりじゃないだろうな?


「野郎ども! 持ってこい!」


 私が警戒していると、赤色はこの大通りの端から端まで届きそうな号令を出した。


 そして号令に応えて、これまた屈強な赤色エプロン姿の男三人が、テーブルとイス、そして調理器具と食材を持ち運んできた。


 ……まさか、やるのか? 今、ここで……


『うおおおおお!』


『なんだなんだ!?』


『すげええええ!』


 静寂を破った赤色に応えるように、周囲のボルテージが急上昇する。


 まぁ、これだけ派手にやれば盛り上がるし、店の宣伝にもなるだろうなぁ。


 美味いかどうかは別として。


「こちらも負けていられませんよ!

 厳選された食材をここへ!」


 負けじと青色が号令を出すと『元祖正義みそらーめん』の看板を掲げた店から、これまた青色のエプロン姿の屈強な男三人が、調理道具一式を持ち運んできた。


 ……うーん……ここまで用意周到だと、さっきのひったくり犯といい、やっぱり全てが仕込みなのではと疑ってしまう。


「お席にどうぞ!」


 声でっか……


 私が少し考えていると、あっという間に特設調理コーナーが設置され、声のでかい赤色店員から、イスに座るよう促された。


 興味ない面倒ごとに巻き込まれたくないし、目立ちたくもないのに、ここで座るともう逃げられない……


「あなた方のために用意した、特別なステージです」


 一方の青色店員は、やはり変なポーズを決めつつ、言葉だけは紳士的にアリスに座るよう促す。


「ど、どうも……」


 そしてアリスは簡単に受け入れ、少し大きめイスにちょこんと座る。


 ……仕方がない。


 煙幕魔術でも使って逃げることはできるが、この後のことを考えると、それはやめた方がいいか。


「本来なら漢気でここにいる全員に振る舞いたいところだが、さすがに今日は食材が足りねぇ。

 だが、これだけの人の前でお嬢ちゃんたちが『美味い!』と言えば、オレが『勇者王』に君臨することは確実よ!」


 いきなり下心を暴露しやがったな。何が漢気だよ。


 結局目的はそっちか。


「つまり、私たちに審査員をやれ、と?」


「おうよ!」


 赤色はあっさり認めやがった。


 となると、やっぱりあのひったくり犯も仕込みか?


 と思っていると、誰かが通報したのか、気絶しているひったくり犯を、警察が連れて行く姿が目に映った。


 いやいや、そっちも大事だけど、この駅前のど真ん中でらーめん食わせる店を注意しろよ。


 まさかとは思うが、これも許可をとっているイベントなのか?


「『勇者王』ってルシアさんが研究していて、最後は元気がなくなっちゃう、あの『勇者』の一番凄い人ですか?」


 アリスはそんな盛り上がりをよそに、きょとんとした表情で私に問う。


 私は自分の魔力を取り戻すために、手持ちの『勇者資料』とにらめっこをすることが多い。


 だが、結局仮説ばかりで確証が得られることはない。

 なので、最後はお決まりのように机に突っ伏している。


「その『勇者』とは違うけど、この町に限らず『勇者』の名を冠したイベントは、年中どこかしらの町で開催されているんだよ。

 まぁ、それだけ『勇者』は数多くの人、地域を救った英雄ってことだな」


 ただし『初期勇者に限り』と言ったほうがいいかもしれない。


 後期勇者は魔女の魔力を食うことだけを考えており、結果的に町は救われた、というのだから、救いはついでだった。


「見てわかるようにこの町では『勇者』って名前を冠したお店が多くて、年に一度『勇者王決定戦』っていうイベントが開催されるんだ。

 そこで優勝したら『勇者王』っていう栄誉が得られるってわけだ」


「なるほど!

 つまり、一番美味しいらーめんを作る人のことですね?」


 アリスは、ぽんっと手を叩いて目を輝かせた。


「まぁ、そうだな」


 アリスは食べ物のことになれば理解が早いのか、それともいつもの天然理解がたまたま正解だったのか。


「では、これを食べたら次は『勇者王』さんのお店ですね」


「お、おぅ……」


 アリスは目を輝かせたまま、らーめんマップに視線を移した。


 ……これを食べた後……


 まぁ、アリスにとっては前菜でしかないか……


 私は水だけ飲んでいようかな……?


「はあああああ!」


「ふおおおおお!」


 私が雰囲気だけでお腹がいっぱいになったところで、ついに筋肉野郎二人による調理が始まった。


 ……暑苦し……

 

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