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魔導研究オタ歴500年の独善魔女、規格外すぎる幼女を拾ってモチベ爆上げ被害も爆上げ  作者: 山岡桃一
我こそが勇者王(らーめん)

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2人のらーめん屋店員

「離せ! このガキ!」


「いやですうううっ!」


 観光客が多い町ともなれば、残念ながらそれを狙った犯罪も発生する。


 特に後ろポケットに見えるように財布を入れようものなら、盗ってください、と言っているようなもの。


 それを逆手に取ったエグい魔法もあるが……


 状況を見るに、アリスもそんな卑劣な犯罪者の餌食となってしまった。


 犯罪者の手にはアリスが持っていたバッグが握られており、アリスは犯罪者を逃さまいと、犯罪者の足にしがみついている。


 あのバッグは一見おしゃれで可愛いものに見えるが、ちょっとやそっとでは壊れない耐久力も備えている。


 そのため価値の分かる人が見れば高価なものだと一目でわかるし、私の術式を付与してあるので、その価値はさらに上がっている。


 だからバッグだけ見て、アリスをお金持ちの子供だと思って狙ったのかもしれない。


 まぁ実際のところ、アリスの使えるお金には制限があるものの私と共用なので、大富豪とまではいかないが、お金持ちといえばお金持ちだ。


 なので犯罪者としては目の付け所はよかったと言える。


 ただ、バッグの中には確かにちょっとお高い防犯魔術は入っているものの、大半はここに到着するまでに見つけた、新しいお菓子だったはずだ。


 さらに計算外なのは、ひ弱そうなアリスが必死になって足にしがみついてきたことだろうか?


 ただ、これは私にとっても予想外で、アリスのことだから簡単に諦めそうなものを、まさかあんなに必死になるとは。


 もしかすると、私に怒られるとでも思っているのだろうか?


 もしそうだとすると、それは逆だ。


 アリスに捕まる程度の犯罪者となれば、居場所なんてすぐ割れるので、別に怒ったりはしない。


 むしろ犯罪者に詰め寄って慰謝料を請求できるし、組織なら面白い魔術を持っているかもしれない。


 そうやって、私が何度自分自身に罠を仕掛けたことか。


 それにしても、見た目は幼い子供が襲われているのだから、周囲の人間が助けてやれよ……と思わなくもないが、訓練も何も受けていない一般人にそれをやれというのも酷な話だ。


 ぶっ飛んだ犯罪者は、何するかわかったものではないからな。


 自分の命が一番大事。それは私もそう。


 関係ない人がひったくりにあっても、私は自慢の魔術で止めたりはしないだろう。


 周囲の人間は私と同じ考えのようで、結局誰の助けも入らず、非力なアリスでは長く持ちそうにない。


 取り出したのは、見た目がオモチャっぽい魔銃で、正規の防犯用魔銃を私が模して作ったものであり、性能はこちらの方が数段上。


 正規品だとあらかじめ捕縛系魔力が装填された、親指と人差し指で円を描いた程度の物理系魔力弾を発射するものだが、私が作ったこれは、中身の魔力が自由自在。


 今回は正規品と同じように、麻痺魔力弾を装填してある。


 ただし、いくら『非常時には一般人の攻撃系魔力が認められる』とはいえ、正規に存在しない魔術を使用した場合、後で詰められる可能性もあるので弾丸は正規品と同じ物理系だ。


 問題なのは、魔力系魔力弾ならアリスに当たっても無効化されるが、物理系魔力弾だとアリスに麻痺は効かないが、当たるとそれなりに痛いこと。


 私の腕ならいくら犯罪者が暴れていてもアリスに当てることはないが……なんて考えながら照準を絞っていると、犯罪者はついに拳を振り上げた。


 このクズ野郎が。

 私でも子供には手を出したことがないのに。


 ……まぁアノ時のアレはお仕置きと教育だし……


 それと、本当の学生時代の同級生や、魔女ではないけど見た目ロリだったアノ時のアイツはノーカンで……


 しかしアリスがこれだけの時間を稼いでくれたので、私はゆっくり冷静にバッグの中から防犯魔術を取り出し、犯罪者に向かって照準を合わせることができる。


 これがスナイパーライフルなら瞬時に組み上げられるのだが、そんなものをこんなところで使用したら、私も捕まってしまう。


 麻痺魔力弾なら、若干効果に差はあるが基本どこに当てても構わない。


 しかし私は少しだけ銃口を低めに構えて引き金を引く。

 するとその瞬間、発射音が重なる。


「ぐうあああはあああんんん……」


 二つの魔力弾は犯罪者の土手っ腹に。


 そしてもう一つは股間のど真ん中に直撃し、犯罪者が力なく倒れると、アリスは私の方に顔を向ける。

 それに対して私は、グッ、と右手親指を立てる。


 それを見たアリスは安堵した表情を浮かべ、落ち着いてバッグを取り返そうとする。


 しかし犯罪者が倒れた時、バッグは犯罪者と地面に挟まってしまったようだ。


 なのでアリスは犯罪者を必死に転がそうとするも、なかなか動かない。


 仕方ない。こんなことで魔法を使うのは魔力の無駄遣いではあるが、あんな犯罪者には触りたくない。


 浮遊魔法で浮かせて、どっかに捨てよう。不法投棄でも、これなら許してくれるだろ。


「子供に対してひったくりを働こうなんざ言語道断! 厳罰をもって償うべし!」


 ん?


 そう高らかに言い放ったのは『元祖勇者みそらーめんレッド』と刺繍の入った赤色のエプロンを着用した屈強な男。


 その右手には防犯用魔術が握られているので、こいつが犯人を撃った1人か。


「町の治安を悪化させるものには正義の鉄槌を」


 と、ほぼ同時に声を上げたのは『元祖正義みそらーめん』と刺繍の入った青色のエプロンを着用した、こちらも赤色と同じくらいの屈強な男。


 見ての通り、正義感溢れるらーめん屋の店員なのだろうが、勇者を想起させる屈強な男、というのが私にとってマイナスポイント。


「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」


「え!?」


「かわいそうに。こんなに怯えて」


「ひっ……」


 2人は心配そうな表情でアリスに歩み寄り、筋肉の圧をかけながら(少なくとも私にはそう見える)優しそうに声をかけるのだが……


 どう見ても怯えさせているのはお前らだろ。

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