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勝手に魔王認定された魔女は勇者に魔力を奪われたので取り戻すために旅をする~なお500年経っても魔力は戻っていない~  作者: 山岡桃一


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アリス≧ルシア

「アリスは普段、入浴はどうしている?」

 改めてアリスの身なりを見ても、極端に汚れていて臭うというわけでもない。

 髪はボサボサだが、こちらも汚れているという感じでもない。

「綺麗な川があれば、そこを利用しています。ここからも1時間ほど歩けばありますよ。

 そうでなくても、食べ物を作る魔法で水を出して、それを浴びています。

 ただ、一度に出せる量はコップ一杯分なので、ちょびちょびとしか浴びられませんが。

 あとここには一応シャワールームがあるのですが、それも壊れているので、やはりここに住んでからは川が多いですね」

 魔法に関するちょっとした応用力はあるのか。

 長年こういう生活をしていれば身につく技術かもしれないが、膨大な魔力量という、宝の持ち腐れ甚だしい。

「その奥がシャワールームか?」

「はい。シャワーを動かすための魔術が設置されているので狭いですが」

 それを聞いてドアノブに手をかける。蝶番は錆び、ドアも傾いているので若干開けづらい。

 中は大きめの古いタイプの魔導タンクが設置されて部屋を圧迫しており、確かに一人用にしても少し狭い。

 ただ容量が大きい分、使いすぎなければ5日ぐらいは飲み水と併用しても問題なさそう。

 これが魔力を使用しない手動タイプなら、アリスが作るコップ1杯分の水を貯めて使用できたのだが。

 タンクの中を確認すると当然空っぽで、術式の稼働確認のために魔力を送り込んでも無反応。

 完全に機能停止状態だが、ここには美少女魔導研究者の私がいる。

 なので直せなくもないが、一夜のためにわざわざ分解して故障箇所を見極めるぐらいなら、魔法を使う。

「それにしても、動かないのに綺麗にしているんだな」

「はい。やることもなく時間はあるので、掃除でもしてみようかな、と」

「うんうん。綺麗好きなのはいいことだ。でもな」

「は、はい……?」

 掃除が行き届いていることを誇るアリスに対し、私はアリスの両肩に少し力を込めて両手を乗せる。

「綺麗な肌は乙女の義務が私の信条だ。

 これから私と生活するからには、常に身体を綺麗にしてもらうからな。

 川も当然禁止だ」

 ちなみに男もそう。女性に近づく前にまずは清潔でいろ。

 変態ジジィのように、汗びっしゃびしゃの半裸で近づくのは論外だ。

「私が教えてやる。魔術が使えない時の入浴方法をな」

「え? え?」

「さぁ今すぐシャワータイムだ。

 だが安心しろ。外で水浴びをしていると、危険なやつに狙われる可能性があるが、ここは私が魔術で防御した立派な小屋だ。

 それに、万が一怪しい変態が近寄ってきた場合、私が仕留めてやる。

 さぁ今すぐ綺麗にするぞ」

 私は言いつつ、バッグから乙女の入浴道具一式を取り出す。

「わ、わかりました……」

 アリスは私の迫力に押されたのか、言われるがままにシャツを脱いでシャワールームへ入る。

「では、始めるぞ」

「は、はい。お願いします」

 こういう展開は初めてか、アリスは若干緊張した面持ちだが、私はかまわず魔法を発動する。

 まぁ私も無理やりシャワーを浴びせられるような経験はないけど。

「ヴィレ・フロット」

「わ……」

 頭上に水の塊を出現させ、シャワーのように降り注がせる生活魔法で、水温は使用者の技術次第で自由に変えられる。

 この際、私もびしょ濡れになるが、どうせ私もこの後シャワーを浴びるし、魔導衣服はすぐに乾く。

 なお、私も裸になって一緒に浴びるとかいう百合展開はない。

 そもそも二人で浴びるにはちょっと狭い。

 それにしても、ほぼ魔法食物しか食べていないはずなのに、ガリガリにやせ細っているわけでもない。

「ちなみにアリスはいつ頃魔女に変化したんだ?」

「うーん……

 確証はないのですが、食べ物を作れる魔法が使えるようになったのが12歳なので、そのころかな、と」

「なるほど……」

 もしアリスが言う通りの年齢で魔女化しているのなら、当時からすれば異例の速さでの魔女化だ。

 その原因となるのも『異常魔法』という、これまた異例の才能。

 こんな天才を私の手で魔導の道にひっぱり込めると考えると……

 今後が楽しみで仕方がない。

 一通り綺麗に仕上げたのち、タオルで拭き上げ、

「トゥール・イーヴル」

 竜巻を発生させる魔法の応用で温風を巻き起こし、全身を乾かしていく。

「す、すごいです……これが魔法なんですね……」

 とても上位魔女とは思えない発言。

「そうだ。しかし珍しい魔法というわけではないぞ。

 このような生活魔法は魔術が発達する前の時代はもちろん、今でも私のように各地を旅するものや冒険家、インフラが整っていない地域で暮らす人々。

 そして災害救助にあたる職に就くのであれば、生活魔法が使用できることは最低条件だ」

「へぇ。私の村ではこういう魔法を使える人がいなかったのでよくわからないのですが、生活魔法、っていうのに一般の人は使わないんですか?」

「それだけ魔術が発達して便利な世界になった、ということだよ。

 ただ大きな災害が起きた時には苦労するだろうな。

 そんな時のために、今では学校でも習うはずだ。

 しかし結局のところ災害を甘く見ているのか、普段は低魔力で稼働する魔術に頼ってしまい、魔力鍛錬を怠ってしまう。

 そうなると魔力保有量が増えず、生活魔法もまともに使えなくなってしまい、自分が困るというのに」

 だから現代ではアリスのような超逸材でない限り、魔女が生まれにくい状況となっている。

 そのうち魔女も絶滅するのだろうけど、私はしぶとく生き残るつもり。まだまだやりたいことはたくさんある。 

「よし、完了だ。次は私が浴びるから、ちょっと待ってろ」

「わかりました」

 ドアが傾き部屋が見えるので、私の荷物を持って逃げることはできないし、見逃すこともない。

 ただアリスはそういうことは全く考えていない様で、私がシャワーを浴びている間、ラグマットの上にちょこんと座っている。

 それにしても……

 私自身は別に大きさなんて気にしていない。

 ただそれを比較して、バカにしてくるやつが許せないだけだ。

 大小で優劣を決めるなんて、愚かの極みだと、私は常々思っている。

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