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勝手に魔王認定された魔女は勇者に魔力を奪われたので取り戻すために旅をする~なお500年経っても魔力は戻っていない~  作者: 山岡桃一


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魂喰いの魔女

「貧しい村でこのような魔法が使用できたのなら、村の人たちからは感謝されたのでは?

 それとも秘密にしていたのか?」

 私だったら食べさせて反応を見るかな。

 とはいえ、さすがに毒を食べさせるわけにはいかないので、入念にチェックした後になるが。

「いえ、確実に作れるようになってからは村の人たちにも食べてもらいました。

 その時はいっぱい村の人たちからも褒めてもらえて、嬉しかったです」

 そう言った少女は少し誇らしげに胸を張って、えへへと笑う。

 無自覚な上位魔女だから、善人寄りなのか?

 私が出会った上位魔女は、もれなく性格悪かったんだがな。

「しかし村の食料を賄うには、君の魔力だけでは足りないのでは?

 魔力不足に陥って目眩や吐き気、疲労感などに襲われなかったか?」

 魔力≒体力なので、魔力が枯渇すると身体的な不調に陥り、最悪死亡するケースもある。

 ただし、魔力を1消費したからといって、体力も1消費するわけではない。

 膨大な魔力を保有する上位魔女なら、魔力10000に対して体力を1消費(推測)なので、基本的に体力切れを起こすことはない。

 私の場合は魔力も少なく体力も少ないので、多分魔力10に対して体力1消費ぐらいの感覚だ。

 なので体力を大幅に消費する移動系魔法はあまり使わないのだ。

 特に飛行魔法なんて兵隊はもちろん、スポーツ選手や配達など、体力勝負専門の魔法だと思っている。

「特にそのようなことはありませんでした。

 むしろ村の人たちに食べてもらって喜んでいるのを見ると、元気をもらえるぐらいでした」

 村人分の食料実体化で疲労感がないとか。

 どれだけ魔力的にも体力的にも才能があるんだ?

 ……やばい、我慢してたヨダレが溢れ出るかも知れない……

 普通ここは、健気な少女に感動する場面なんだろうけど、すぐに魔導素材として見てしまう私って……

 やっぱり魔導研究者の鑑だよな。うん。決して薄情な人間などではない。

「ですが……」

 そこで少女のトーンが落ち、少し視線を落とした。

「なぜか村の人たちは次第にやつれていき、ついには死者が出るまでになってしまいました。

 私にも原因はわからなかったのですが、村の人たちに私の魔法は『食料の対価として魂を食べていることが原因』と言われ……

 次第に迫害されるようになってしまいました……」

 魔法に詳しくなければ、その答えに行き着いてしまっても仕方ないが、原因は間違いなく餓死だ。

 魔力に栄養はない。

 空腹をごまかすことはできるが、生き続けることはできない。

 それにもかかわらず、少女が生き続けていることが最大の謎。

 ただ、今はそれよりも、この話って……

 「でも私は全然平気なので、原因は他にもあると言ったんです。

 でも全く信じてもらえませんでした。

 それに、私にはそれを証明することもできませんでした」

 原因は少女で間違いない……病死の可能性もあるが……今は伏せておこうか。

 あまりショックを与えない方が得策だ。

 トラウマになって今後『異常魔法』が使えなくなるのは、魔導研究的に困る。

「なので私は逃げるように村を飛び出しました。

 それからというもの、各地を転々としながらひっそりと生きているんです」

 少女は重く沈んだ表情で語るも、同情を誘ってお金を恵んでもらう、という作戦ではないように見える。

 一方の私は、溢れ出る笑みを我慢するに必死だ。

 もちろん命を落とした村人は気の毒だし、少女にその真実を告げるのは、いささか酷だと思う。

 私だって魔導研究のために、喜んで命を奪うほど狂人変態ではない。

 せいぜい命に別状がない程度に、ぶっ倒れる程度までだ。

 そんな私だが、今回は大きな喜びポイントがある。

 それは少女がかの有名な『魂喰いの魔女』という可能性が浮上してきたことだ。

 いくら『魔王戦争』以前は『魔女至上主義』という『魔女様万歳』の時代だからといって、全ての行為が許されるわけではない。

 犯罪者は犯罪者。

 魔女だって悪いことをすればちゃんと裁かれる。

 ただ、後の報復を恐れてか、罰そのものはゆるゆるなものばかりだったが。

 だが『魂喰いの魔女』だけは別格だった。

 おのれの欲望のために村人の魂を全て食った、という話が広がり、いずれは自分たちが襲われるかもしれないと危惧された。

 そしてただちに討伐隊が編成され、逃げた『魂喰いの魔女』を追ったのだが、結局は見つけることができなかったそうだ。

 ただ当時には既に探索魔法があったにも関わらず、なぜ追うことができなかったのか?

 魔女の方が上手で途中から追えなくなった。

 あるいは悪逆非道の魔女を追うにはリスクが高すぎる、という判断だったのか。

 そしてもう一つの原因として、生き残った村人が嘘の証言をしたのではないか。

 少女の言葉を信じるなら、こんな少女に村が脅かされ、村人が束になって少女を追い出したという『恥ずべき行為』を隠し、嘘の証言をしたのではないか。

 と、現代に残る文献だけでは何が真実だったのかは、今になってはわからない。

 なんせこの出来事は、今からおよそ600年ほど前。つまり、私が産まれる100年ほど前の出来事だ。

 私もたまたま文献を見つけて興味を持ち、暇があったら真相を探ってみようかな? と思っていた程度だったのだが……

 この少女が本当に『魂喰いの魔女』なら、村人が嘘の証言をしたという仮説も理解できる。

 こんな年端もいかない少女を村全体で迫害って……そりゃ正直に言えないわ。

 そもそも少女は魔女だと疑われなかった可能性もある。

 魔女の見た目年齢にも当然個人差はある。

 私のように10代中盤の美少女だったり、今でいうアラサー魔女だっている。

 そして、魔女化が若ければ若いほど、才能ある魔女だと称えられていた。 

 ただ体感だが、私の本当の学生時代のことを思うと、私と同年代魔女が多かったかな。

 しかも上位魔女もそれなりにいたという、魔女のバーゲンセール状態だった。

 なので、私のように10代中盤の魔女化は本当は凄いもてはやされるものなのだが、魔女として弱い私はあまり注目を浴びることはなかった。

 まぁ私としては魔導研究の邪魔にならなくてよかったと思っている。

 だから途中まで魔女だと言わなかったのだ。

 そしてこの少女が本当に『魂喰いの魔女』だとするなら、当時10代前半という若さで魔女化したことになる。

 『魂喰いの魔女』の時代を考えれば、10代後半から20代前半ぐらいが、平均的な魔女化年齢だったらしい。

 そう考えれば異例も異例で、この少女が『魔女』だと、誰が思おうか。

 見た目が幼いだけで20代という可能性もあるにはある。

 しかし自分で『稼ぐことのできない少女』と言っているので、見た目そのままの年齢なのだろう。

 こんな才能の塊である上位魔女が、せっかく勝手に辛い身の上話をしてくれたのだ。

 魂は肉体に引っ張られる、という性質がある。なので私もいつまでも若い気持ちで生きているのだ。

 だから、いくらこの少女が実年齢は私より上であっても、精神は若く幼いはず。

 そこへ優しく寄り添う形で口車に乗せていけば、リスクを負うことなく、特大の魔力庫と才能を手に入れることができる。

 これが笑わずにいられるだろうか?

 いやまだだ。まだ顔に出すな。

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