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勝手に魔王認定された魔女は勇者に魔力を奪われたので取り戻すために旅をする~なお500年経っても魔力は戻っていない~  作者: 山岡桃一


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3日寝込む

「……もう昼か……」

「ルシアさんがお寝坊さんって、珍しいですね。

 ……その……体は大丈夫ですか?」

 私が目を覚ますと、アリスは心配そうな顔で歩み寄ってきた。

 なお手元には食べかけのパン。見ていた動画はお笑い系。

 ホントに心配してた?

 まぁアリスらしいちゃあアリスらしいが。

「ん……まぁな。

 でも流石にショックが大きい。

 でもこういう時は、3日ほど寝込むと気分も一新されるんだ。

 だからアリスはその間、適当に過ごしていてくれ。3日分の食費ぐらいはまだあるよな?」

「はい。それは大丈夫です。なくても私が作れますし。

 でも体が大丈夫ならよかったです。

 それじゃあ私はルシアさんが寝込むのを邪魔しないようにしていますね」

 アリスはそれだけ言うと、私から離れて再びパンを食べながらお笑い動画を見始めた。

 ただし、音量は先ほどよりも小さめだ。

 過剰に心配する様子はないが、それでも気を遣ってくれているようだ。

 こういう時はそれぐらいの距離でいい。

 この3日寝込む、それも体を丸めて布団の中でじっとしているのは、私の癖みたいなものだ。

 それにこの1ヶ月、不正がバレないために、普段より集中して頑張ってきたのだから、ここで休憩するのも悪くない。

 『セイヴィアーク』事件直後では、アリスという極上の魔女との出会いが私を癒してくれた。

 なので寝込む必要もなかった。

 しかし今回の『魔導黄石』こと『ただの黄色い石』は、私の心を癒してくれるものが何もない。

 ただただ本当にこの1ヶ月の疲れが、どっと押し寄せてきた感じだ。

 ……いや、それでも収穫があったのは救いだ。

 アリスの魔力浸透力。

 結局、特訓期間中にアリスの魔力制御力が上がることはなかったが、この魔力浸透だけは異常レベルだった。

 それがなぜなのか? というのはまだはっきりしていないが、これを知ることができただけでも、かなりの成果と言える。 

 あとついでに。アリスの歌が上手いことは、まぁ、今後何かの役に立つかもしれない、かな?

 さて。時刻はすでにお昼時ではあるが……

「ルシアさん。私、お昼ご飯を食べこようと思うのですが、何か必要なものはありますか?」

 動画を見終わったアリスはスマホをポケットにしまい、私に声をかけるが……

 お腹は減っていないんだよなぁ。

「いや大丈夫だ。

 それより、アリスも優勝者なのだから気をつけろよ。

 昨日名前を覚えられんだから、筋肉たちに囲まれるかもしれないぞ」

「そ、それは困りますね……

 サイン攻めにあったらお昼ご飯が食べられなくなってしまいます……

 でも大丈夫です。

 私、隠れて移動するの得意ですから」

 アリスはそう言って、えへん、と言わんばかりに得意げに胸を張る。

 ただ、私と出会ったことで、その能力的なものが失われてなければいいが……

「では行ってきますね。必要な物があったらいつでも連絡して下さい」

「ああ、気をつけてな」

 それだけ言って、アリスは部屋から出て行った。

 まぁ私と一緒に行動していなかったら、アリスの豪運も発動するだろうし、大丈夫だろ。

 さて、私は寝込みますか。


「どこに行きましょうか……」

 ホテルから外に出ると、昨日までの賑わいが嘘だったかのように、町はしんと静まり返っていました……

 なんてこはなく、昨日までと同じようなお祭り騒ぎです。

 もしかしてこの町は、ずーっとお祭りをしているのでしょうか?

 とても楽しそうで、私もワクワクしちゃいます。

 屋台もまだまだいっぱい出ていますし、美味しいものに困りそうにありません。

 この期間中、らーめん屋さんは制覇したはずなので、何か別のものを食べましょう。

 そうだ。

 私は魔力制御が上手くなって『究極のサンドイッチ』を作りたかったのです。

 なのでサンドイッチの美味しいお店を探してみましょう。

 でも右を向いても左を向いても、らーめん屋さんばかりです。

 らーめんサンドイッチも悪くありませんが、問題はスープですね。

 どうやってこぼれないように、パンに挟めばいいのでしょうか?

 これも魔法でなんとかなりますかね?

 あとでルシアさんに聞いてみましょう。

 でもルシアさんは3日寝込むと言っていましたし……

 そうだ。何かルシアさんが元気になる食べ物を買っていきましょう。

 それと喉が渇いているはずですからお水も必要ですね。

 何かありませんかね?

 周囲をキョロキョロと見回しながら、歩みを進めます。

「あ」

 ちょっと細い道を発見です。

 漫画ではこういうところに『隠れ家』があるんですよね。

 でも、前からも後ろからも悪い人に挟まれちゃう展開もあるので気をつけないと。

 太陽の光が届かないこの細い道はちょっと暗いですが、私の読み通り、やはりお店が何軒かありました。

 しかもここ、らーめんマップに載っていないお店のようです。

 これはワクワクしてきました。こういう『隠れ家』のお店は美味しいんです。

 では早速、1つ目のお店に入ってみましょう。

「いらっしゃい」

「こんにちわ」

 お店の人は白髪のおばあさんです。

 私も白髪なので、もしかするとおばあさん仲間だと思われちゃいますかね?

 お店の中はカウンターだけで、5人も入ればいっぱいになってしまいますが、私の他にはお客さんが1人だけです。

「何にする?」

「ええと……」

 私は足の付かない、少し高めのカウンター席に座りメニュー……がありません。

 どうしましょうか……

「では、寝込んだ人も元気になれる、すんごいらーめんをお願いします」

「……嬢ちゃん」

「はい? なんでしょうか?」

 やっぱり無理な注文だったでしょうか?

「いい注文だね。待ってな」

「はい。お願いします」

 どうやら正解だったようで、おばあさんの目には、まるで炎でも宿ったかのような気合と気迫を感じます。

 これは期待できそうです。

 そしておばあさんは凄く早い動きで料理を始め、私では何をしているのかがわかりませんでした。

「ほいよ。お待ち」

「わぁ。ありがとうございます」

 そのらーめんはとてもシンプルで、具材などは一切乗っていません。

 そしていい匂いです。

「いただきます」

 まずはスープを一口。

「おいしいです!」

「当たり前さ。

 最近のやつは見た目を豪勢にすれば美味いらーめんだと勘違いしているが、本物はスープを一口飲めばわかるのさ。

 この凝縮された旨味が元気にさせるのさ」

「な、なるほど……言われてみれば力が沸いてくる気がします」

 おばあさんの説明を聞いているうちに、私はあっという間に食べてしまいました。

 なるほど。これが元気になるらーめんですか。

「これ、寝込んでいる人に食べさせたいのですが、お持ち帰りはできますか?」

「本来ならやってないだけどねぇ。

 でも嬢ちゃん、あんた『勇者』だろ。特別にやってやるさ」

「ありがとうございます。

 でも私のこと知っているんですか?」

「あぁ。見てたよ。

 それにアタシは『元勇者王』だ」

「そうだったんですね。

 どうりで美味しいはずです」

 私の勘もなかなか鋭いところがありますね。早速当たりを引いてしまいました。

「元気にさせたいのは、もう1人の嬢ちゃんだろ?

 持って帰んな」

 おばあさんは言いつつ、ボールのような入れ物に、らーめんを用意してくれました。

「ありがとうございます」

 これはルシアさんにいいお土産げができました。

 では2件目のらーめん屋さんに向かいましょう。


「というわけで、飲むと元気になるらーめんだそうです」

「お、おぅ……」

 アリスが持ち帰った、計3つのらーめんボールと、コーヒーなどを入れるカップに入った、らーめんスープ(ストロー付き)

「気遣いはありがたいが、飲むと、と言ったか? 食べると、ではなく?」

「はい。間違いなく『飲む』と言っていました」

 ……うーん……

 確かにスープには色々な食材が使われているだろうから、あながち間違ってはいないと思うが……

 まぁせっかくだから、このカップのやつをいただくか。飲みやすそうだし。

「では、これをいただこう。

 というか、流石に4食は食べられないから、残りはアリスが食べていいぞ」

「そうですか? ではいただきます」

 そこで首を傾げられてもな……私は少食、と以前言った気もするが……

 それはさておき、いただいてみるか。

 カップを手に持つと、ほんのり温かいだけで、このままなら火傷をする心配はなさそうだ

 では軽く、すっ、と吸い込む。

「あっっっっつうああああ!」

「ル、ルシアさん!?」

 ……昨日頑張りすぎて、魔力探知が疎かになっていた……

 これ魔導カップだから、熱さを軽減させてるんだった……

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