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勝手に魔王認定された魔女は勇者に魔力を奪われたので取り戻すために旅をする~なお500年経っても魔力は戻っていない~  作者: 山岡桃一


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ようやく手に入れた物

「改めて!

 優勝は『らーめん研究所』だあ!!」

『うおおおおおおおおおおっ!!』

 ……3回目……

 審査員も観客も、よくこの熱意を保っていられるな。

 まぁ私も三日三晩、寝ずに魔導研究を行なっていたことを考えれば、熱意の方向は違えど気持ちはわからなくもない。

 しかし、そろそろ本当に終わってくれ……

 魔力はまだ大丈夫。でも体力の限界が……

 トイレに行きたわけではないけど、トイレを我慢しているようなこの感覚。

 私は下腹部に少しだけ力を入れて、若干内股になる。

 ……はたから見ればトイレを我慢している感じだな……

「おいしかった……私はこのらーめんに負けたんだな……」

 不正がバレた女性店員は、私の不正らーめんを食べた後、改心したかのように穏やかな表情を見せていた。

 まぁ幻覚に陥っているのだから、今までの怒りは何処へやら、と、納得せざるを得ないんだよな。

 しかし、おまえが余計なことを言わなければ、私は魔力を無駄に使う必要がなかったというのに……

「見事な『勇者裁き』を見せ、1つの店を救った姿、それはまさに『勇者』!

 さぁ! 『らーめん研究所』のお二方! どうぞこちらへ!」

 司会も先程までの断罪モードから暑苦しい司会へ戻り、ステージ上から私たちを呼ぶ。

 ……この何気無い段差も、ちょっときついな……

 しかしこの階段を上った先に、私の求める『賞品』がある。

「ルシアさん。もう少しですよ」

 アリスはそう言って、歩きづらそうにしている私の腕をとって助けてくれた。

 ……まるで介護気分だが、今は仕方がない……

「満身創痍の中、仲間の手をとって助け合うその姿……

 私は感動の涙が抑えられません!」

 私たちの姿を見た司会は、模範的感動コメントとともに、天を仰いで涙を流す……ように見えたけど、魔法だな、あれ。

 演技派だなぁ。

『がんばれルシアちゃーん!』

『アリスちゃんも偉いぞー!』

 と、観客からは拍手とともに、私たちを讃える声が溢れていた。

 この感動的な場面に私は……

 まもなく手に入る『賞品』を思い、疲労困憊の中、溢れる笑みを隠すのに必死だった。

 ……もう、邪魔は入らないよな?

「さて。まずは看板娘のアリスさんから一言」

 私たちがステージ中央に立つと、司会の涙は一瞬で止まった。

 そしてアリスに視線を合わせるように膝を曲げて、ニコリと笑いながらマイクを向けた。

 子供に対する優しい笑顔、というより、仕事用の笑顔っぽいな。

「え……えぇと……」

 アリスはこんなとき、何を言えばいいのかわからないのか、キョロキョロと周囲を見渡してから、やがて口を開く。

「らーめんおいしーでーす!」

『うおおおおおおおおおおおっ!!!』

 その一言だけで盛り上がり、拍手喝采の審査員と観客。

 ……もはやこいつら、何言っても盛り上がるのでは?

「素晴らしい言葉ですね。

 私もこの『勇者王決定戦』の司会冥利につきるというものです」

 確かに、この町のイベントの司会としては適役だろうな。

「では、店主のルシアさん……いえ『勇者ルシア』さんからのお言葉をお願いします」

 相変わらず『勇者』呼びには複雑なものを感じるが、ここで『勇者』と呼ばないでくれ、と言うほど、私は空気が読めない女ではない。 

 私は差し出されたマイクに向かって、最後の気力を振り絞る。

「私たちの『ルシアリスらーめん』が満票を獲得できたことは光栄に思う。

 しかしこれは特別なことではなく、誰しもが努力を重ねることで到達できる場であることに間違いはない」

 幻覚魔法とその隠蔽。そして維持ができれば誰でも可能だ。

「だが私はその手助けをするつもりはない。

 そして一切のヒントを残すつもりもない」

 そう言って私は、私たちが料理していた場所を指差し、ポケットから手のひらサイズのスイッチを取り出す。

「誰の手にも、そう、片付けてくれるスタッフの手にも触らせるつもりはない」

 そう力強く宣言し、スイッチをポチ。

 すると轟音が鳴り響き、砂煙をあげる。

『な、なんだなんだ!?』

『テロか!?』

 慌てふためく群衆だが、私が仕掛けていた魔術が発動して、綺麗にぶっ飛ばしたのだ。

 つまり証拠隠滅。

 万が一のための自爆用魔術だったが、このままいけば使わずに無事優勝できそう。

 と、思ってい矢先のいちゃもんだ。

 この先何があるかわからない。調べられる前に片付けておく必要がある。

 そのための口上。タイミングはバッチリだ。

「みな、自分の手でこのいただきに辿り着いてほしい」

 膨大な魔力が必要になるから、魔女以外は無理だろうけど。

『うおおおお! やるぞおお!!』

『オレもだあああ!!』

 うん。この町の傾向からして、こうなるだろうな、とは予想していたが、まんまとその通りになったな。

「素晴らしい! なんと素晴らしいお言葉!

 そんな『勇者ルシア』さんには、やはり『魔導黄石』を授与される資格があります!」

 司会がそう言って、ばっ、と左腕をあげた。

 するとアシスタントの女性が、高級そうな黒いトレイに大事に乗せた、直径2センチぐらいの黄色い魔導石を持ってきた。

 きたあああああ! それそれえ!

 そのために私はここまでがんばったんだよ。

 私は待ちに待った瞬間に、思わずよだれが溢れ出そうになるところ、なんとかその気持ちを抑える。

「おめでとうございます」

「ありが……とぅ……」

 嫌な予感がした。

 女性から『魔導黄石』を手渡された瞬間、なんの魔力も感じ取れなかったのだ……

 しかし『勇者に関する魔導石』のはずだ。

 厳重な封印が施されている可能性は否定できない。

 それに今の私は疲労困憊。魔力察知能力だって低下している。

 きっと何かの間違い……

 そう信じたいが、この手の偽物は山程見てきた。

 それでも『勇者』に少しでも関係する可能性があるものは、すべて手に入れたい。

「それでは皆さま! 『勇者ルシア』さんに、今一度盛大な拍手をお願いします!」

『おめでとおおおおおおっ!』

『連覇も期待してるぜええええ!』

「…………」

 そんな声など全く耳に入らない。

 不正らーめんは計算通り爆破してある。放っておいても問題ない。

「おめでとう!」

「完敗でした!」

「…………」

「あ、え? ルシアさん?

 み、みなさん、さよーならー」

 なんか見たことのある筋肉たちがポージングしながら私を称えてくれ、アリスはそれに対応していたみたいだが、私は、もはや喋る時間も惜しい。

 ここで嫌な奴だと思われても構わない。

 私はセレモニーが終わると、気力を振り絞ってとにかく急いでホテルに戻る。

 そして出発前にこの『魔導黄石』を手に入れたという前提で準備していた、簡易検査魔術にセットする。

 ……魔力反応なし。

 いや、封印が施されているだけかもしれない。

 次、術式解析。

 ……封印なし。

 次、鉱石判断。

 ……石。

 色識別。

 ……塗料……

「……ルシアさん? ルシアさーん!?」

「…………」

 アリスの叫び声聞こえる中、私は絶望の中、すぅーっと意識が飛んでいくのを感じた……

 ……ただの黄色い石……

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