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勝手に魔王認定された魔女は勇者に魔力を奪われたので取り戻すために旅をする~なお500年経っても魔力は戻っていない~  作者: 山岡桃一


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アリスの不正疑惑

「これで決着!!

 今回の『勇者王』は『らーめん研究所!』だああ!!」

『うおおおおおおおおっ!!』

 司会がまたポージングしながら勝者宣言すると、それに応じて観客から割れんばかりの歓声が上がった。

 底辺魔女である私が勝者として讃えられるのは嬉しい反面、今回ばかりはとにかく魔力的にきつく、もうそれどころではない。

 それにあまり目立って歴史に名を残すのは、後々面倒なことになりかねない。

 今回は賞品が目的だったので仕方ないけど。

「ルシアさん! やりましたね!」

「……お、おぉ……」

 飛び跳ね喜ぶアリスに対し、私の気分は低空飛行。

 やはりこの手の大掛かりなイベントは、勝者が決まってからも長い。

 しかしこの盛り上がった空気に『いいから賞品をとっととよこせ。私は早く帰りたいんだ』なんて言わない私は、空気の読める女。

「さあ! まずは勝者を称えて」

「ちょっと待ちな!」

 司会が順調にセレモニーを進めていくなか、納得がいかない様子の『魅了の賢者』の女性店員が声を上げた。

 若干偏見にはなってしまうが、見た目が上品な割には意外と強気な喧嘩腰スタイルなんだな。

 というか、負けて納得いかないのか? 無駄な時間を使うな。

 私はしかめっ面を浮かべているだろうが、どうもそれは私だけではなく、この盛り上がりに水を差したことで、周囲の人間もあまりいい表情はしていない。

 というか勝者が決まったことで、笑顔の審査員たちがますます私たちに近づいてきてるんだが、本当、なにするつもりなんだ?

 まさか本当に勝者を称えて胴上げとか?

 ……本当にやめてほしい。アリスだけにしといてくれ。

「なんでしょう? もはや勝負は決しました。

 ここから覆ることはありませんよ?」

 あの暑苦しい司会がここは事務的に冷静になりつつ、女性店員をなだめるが、それでも負けたことに納得しない様子。

「その子が歌ってから、明らかに審査員の動きが変わった。

 おかしいんだよ。

 まさか、その歌声は魅了効果の魔法じゃないだろうね?」

「え? えぇ!? 私ですか!?」

 アリスは突然女性店員から、鋭い視線と共に名指しされ、焦ったように一歩下がり、不安そうに周囲に視線を向ける。

 もしかすると、何もやっていないはずなのに疑いを向けられ、罪悪感を感じているのかもしれない。

 しかしそんなアリスの不安をよそに、審査員たちからの疑いの色は微塵もなく『この子がそんなことするはずない』とでも言いたげな、暖かい表情を浮かべていた。

 みんなアリスに取り込まれたのか。

 だが女性店員の指摘も理解できる。

 確かにアリスの歌声から場の空気は一変した。

 ……正直なところ、私もちょっと上手くいきすぎだなぁ、とは思っている。

 余裕があれば魔力測定でもしてみたかったが、ここの大会では不正探知を行っている。

 魔力制御が下手なアリスでは、仮に無意識のうちに魅了魔法を使っていたとしてもそれを隠すことができない。

 なので運営から指摘され、即失格になっていたはずだ。

 しかしアリスという隠れ蓑は結果的に大成功となったな。

 しかも一部の層を狙った脇や太ももではなく、アリスの天然無垢……いや、漫画を真似ただけの受けの良い店員像に全員が引き寄せられるという。

 これはこれで、魔女らしい、といえばそうなのかもしれない。

「あー、そんなに疑うなら、もう一度アリスに歌わせるか? 

 もちろん徹底的に魔力検査をしてもらっても構わない。

 ただ、仮にアリスが魅了魔法を使用していたとしても、今回も同じような結果になるとは思えないぞ。

 すでに勝者は決まっている。

 運営も不正探知はできていない。

 無駄だとは思うが?」

 これ以上無駄に時間を使うな。早く私を休ませてくれ。

「……いいだろう。

 無意識下という可能性もある」

 ……やるのか……

「アリス。歌えるか?」

「はい。大丈夫ですよ。

 それに私は魅了魔法なんて使えませんし」

 皆の注目する中ではあるが、アリスは全く躊躇することなく、もう一度歌うことを選んだ。

 本当、自分の命に関わらないことであれば、意外と度胸あるよな。

「ええと……」

 とはいえ、いくらこちらが提案しても運営が許可を出さなければ、ここで話は終わる。

 そのためか、司会は一度運営席の方へ視線を向けると、何やら協議していた運営陣の1人が、両腕で丸サインを出す。

 ……やっぱりやるのか……

 不正魔力、検出されない……よな?

「ではエクストラステージだ!

 アリス嬢! どうぞこちらへ!」

「あ、はい」

 さすがはプロの司会。

 臨機応変に場の空気を作っていく。

 それはいいとして、いくら紳士的にアリスが転ばないよう手を差し出しても、それをパンツ一枚でやるなよ。

 幼い少女が変な方向に目覚めたら……って、この町ではそれが普通なのだった……

 パンイチ紳士に案内され、アリスがステージ中央に立つと、

『ア・リ・ス! ア・リ・ス!』

 と、観客の方から歓声が上がる。

 完全に覚えられてしまったな。

 いくら大きいイベントで仕方ないとはいえ、魔女としての今後を考えると、あまり記録や記憶に残されたくはないのだが……

 5年後ぐらいには、ここから遠く離れた地に移動して、しばらく寄り付かないようにしよう。

 私が今までそうだったように、30年も経てば同じ姿でも、あの時の子の子供? と思われる程度だ。

「気を抜くなよ」

『はっ!』

 一方、難癖をつけてきた『魅了の賢者』の面々は準備万端で、様々な魔力探知魔術をセッティングしていた。

 ……なぜ『らーめん大会』でそんなものを?

 これはむしろ、自店の不正魔力を外部に探知されないためにチェックしていた、と自白しているようなものでは?

 しかしその点は誰も指摘せず、アリスが今度はちゃんとしたステージの上で歌い出す。

「では歌います。

 おふろー、みずをあたためたらおゆー、きもちぽかぽか、おふろー」

 これは新作。私も聞いたことがないぞ。

「とろけちゃうおゆー、でもさめるとおみずー、つめたいのもきもちいい、おふろー」

 どういうことだろう? 相変わらず歌詞の意味がわからんが、やっぱり音程はなぜか取れるという謎の才能。

「どうだ!?」

「……ダメです。魔力は一切探知できません。普通の歌です」

「な、なんだと……」

 ……よかった。無意識に不正魔力を使用してなくて。 

 しかし食物魔法以外ではダメダメなアリスなんだから、そりゃ当然のことだ。

 同じく運営陣の方に視線を向けても、やはり探知はされていない模様で、運営の1人の腕が大きなバツ印を作る。

 これで潔白は証明できた。

 さぁ、とっとと終わろう。

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