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勝手に魔王認定された魔女は勇者に魔力を奪われたので取り戻すために旅をする~なお500年経っても魔力は戻っていない~  作者: 山岡桃一


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長い長い投票時間

 「そこまでえええっ!」

 司会の終了宣言とともに鐘の音が鳴り響く。

 それも学園などで使用されるものとは比べものにならず、まるで町中に響き渡るほどのものだった。

 『勇者王決定戦』は、この町の最大イベントだから、この鐘の音そのものが町のシンボルなのかもしれない。

「ルシアさん。お疲れ様です」

「あぁ……でもまだ気は抜けないからな……」

 アリスはあれだけの数の審査員を相手にしていたにもかかわらず、汗一つかいていない余裕の表情で、私にタオルを手渡してくれる。

 今更だが、アリスの体力ってどうなってるんだ?

 今まで1人で生きてきた、では説明がつかない気もするんだが……

 しかし今はそれよりも、私の勝負はまだ終わっておらず、背中に汗が張り付くほど、体力面はもちろん、魔力面でも気を抜くことができない。

 今回の作戦の核である幻覚魔法の仕込みに気づかせないため、隠蔽魔法に魔力を割かなければならない。

 この魔法は自動持続するわけではない。

 なので審査員に違和感を持たせないため、私はこの大会が終わるまで魔力を使用し続けなければならない。

 しかも、幻覚魔法の仕込みとその連鎖によって、私のらーめんは審査員全員が口にすることになった。

 つまり、100人分の隠蔽魔法を持続しなければならないということだ。

 とはいえ、これぐらいなら底辺魔女の私でも可能ではあるが、その分の疲労度が半端ない。

 なので、とりあえず、とっとと終わって欲しい。変なセレモニーとか勘弁してくれよ……

 ちなみに、審査員は全店のらーめんを食べるわけではなかった。

 ……それでも数人、制覇した人がいたみたいだが、いったいあの量はどこに消えているんだろう?

 その極め付けとして、アリスはおなかぽっこりどころか体重が全く増えないという謎。

 まぁアリスの場合は特殊な魔女ということもあるけど、審査員たちは普通の人間だよな?

 そんな特殊な例を除けば、多くても10店ぐらいだったので、やはり呼び込みが重要となっていた。

 アリスの謎の歌を皮切りに始まった呼び込み合戦だったが、まさかこのパフォーマンスが、この町に来て早々のド派手対決がフラグになっていたとは想像もできなかった。

 でもこれって『公平ならーめん勝負』とは言えないよな。

 呼び込みが弱い店には審査員の足が向きづらかったようだし、もしかしてそれも含めて『勇者王決定戦』だった、ということか?

 しかしあの『狂人変態勇者』はデカイ声は出してはいたものの、呼び込みなんてやったことはなかったと思うんだが。

 それにしても、呼び込みを含めたこの勝負、これはアリスに助けられた。

 もし私が1人で参加していたら、不正らーめん作りに集中して、呼び込みは行わなかったと思う。

 そうなったらもう『美少女らーめん』を売りにするしかないのだが、それではちょっと弱かったかもしれない。

 となると結果として、ポツンと寂しく悔しさを滲ませていただろうな。

 まぁそもそも、私はよほどのことがない限り勝算ない勝負に挑まないので、今回の『勇者王決定戦』は見送っていただろう。

 さて、審査員の投票方法だが、1人1人謎のポージングを決めながら、一番だと思った店の名前を叫ぶという、リアルタイム方式。

 ……なんて時間のかかるやりかたなんだ……

 その間私は、ずっと魔力を使い続けているんだぞ……

 もういっそのこと、私たちの店の名前である『らーめん研究所』と一斉に叫べよ。

 その投票は当然の如く『らーめん研究所』が独走しているのだが、一票、また一票と入るたびに周囲の他の店や投票を終えた審査員が集まってくる。

 ……なんなんだ?

 もしかして胴上げでもする準備なのか?

 祝福はありがたく受け取るが、勇者の件もあり、マッチョは私のトラウマなので、体に触れられたくないのだが……

 なんなら『大会にかこつけたセクハラ』として訴えて、旅の資金にしてやろうか……

 そんな疲労困憊に加えて、若干のストレスと感じている中、ついに投票されたポイントが優勝確定ラインを超えた。

「おおっとおおおおお! これは! これはあああっ!!

 史上初の満票優勝となるかああああっ!?」

 それを見た司会が熱く興奮しだす。

 でもとりあえず服は着た方がいいんじゃないか? いつまでパンツ一丁でいるつもりだ?

『うおおおおおおおっ!!!』

 観客も盛り上がってはいるのだが、私としては『へぇ。そうなんだ。それは知らなかった』程度の感想しか出てこない。

 私が興味あるのは賞品だけ。

 出場者の結果なんて微塵も興味がない。

 しかし私の気持ちとは裏腹に、やはりこの事実は観客たちのボルテージを徐々に徐々に上げていく。

 でも、ここまでくると、もはや別の店にポイントを入れるという雰囲気ではなくなるよな。

 なのでリアルタイム方式はそれはそれで面白いけど、このような結果になると、最後の審査員は忖度で投票をしなければならない、というデメリットがあると思う。

 しかし私の不正らーめんを食べているなら話は別だ。

 幻覚によって投票しているのだから、忖度などない。騙されているだけだ。

 そんな審査員たちの様子を冷静に見ている私と、

「わぁ……わぁ……

 ルシアさん、私たち、もしかして凄いですか!?」

「ん? あぁ、アリスの呼び込みの成果が出たな」

 と、得票ポイントと私、視線を行ったりきたりと興奮を隠せないアリス。

 アリスには事前に説明していたはずなんだが、こうやって場の雰囲気を楽しめるのもアリスの良いところなのかもしれない。

 私なんて、わかりきった結果をただ待つだけの冷めた感情しかないというのに。

 そして最後の審査員がステージ上に立ち、私たちに向かって渾身のポージングを決めると、

「『らーめん研究所』!!」

 これにて、私たちは満票優勝を果たしたのだ。

 それを聞いた瞬間、

「凄いです! すごーい!」

 アリスは飛んで喜ぶが……

「……はぁ……」

 私は周囲に聞こえないほど小さなため息をつく。

 ……時間かかりすぎ……

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