表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勝手に魔王認定された魔女は勇者に魔力を奪われたので取り戻すために旅をする~なお500年経っても魔力は戻っていない~  作者: 山岡桃一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

116/145

特訓開始

 朝食を終え、一息ついたところで早速特訓開始だ。

 今回の特訓目標は『隠蔽魔法の存在に気づかれないようにらーめんを作ること』

 そして『仕込みの最適タイミングをつかむこと』だ。

 本番さながらの特訓と行きたいところだが、本番で使う大きな鍋はここにはないので、代わりに洗面台を鍋に見立てて特訓を行う。

 調理器具は必要ない。魔導料理なので両手に軽く魔力を纏わせ、料理手順をイメージ。

 頭の中で理想の魔導料理人を描いたら、洗面台にお湯を溜め、その中に魔力を纏わせた両手を入れて料理する場面をイメージして手を動かす。

 側から見れば単に手を洗っているようにしか見えないという、私自身が客観的に見ても『アライグマかよ?』とツッコミを入れたくなる状況だが、道具がないので仕方がない。

 あとはどの段階で隠蔽魔法を使用すれば、不正検知魔術にも周囲にも気づかれないか。

 これから様々なパターンを試していく。

 一方のアリスは、魔力制御の話を聞いてちょっとやる気をみせたものの、肝心の茹で卵が手元になく手持ち無沙汰となっているので、現状やることがない。

 なのでベッドに横になってスマホをいじり、お菓子を作り出して料理動画を見ていた。

 ここでバラエティでなく料理動画という点でやる気は見える。その内容も卵料理を中心とした動画のようだし。

 私の特訓は昼前には一区切りついたので外出し、アリスのリクエストに応じて昼食をとる。

 その後、特訓に必要なものを買い揃えてホテルに戻る。

 それとは別に、町の雰囲気を改めて見てみると『勇者王決定戦』が近づいていることもあってとても賑やかで、各店舗のアピール合戦が始まっていた。

 流石に先日の強烈な筋肉アピールとまではいかないが、各店舗、魔術を使用したアピールには私の目も惹かれ、歩く速度が少しずつ遅くなっていく。

 一方で、らーめんの特有の『匂い』はほぼ変わりがなく、もしかするとほぼほぼ同レベル帯で、パフォーマンスによって差をつけようと考えているのだろうか?

 でもそんなことに力を入れるよりも、魔導料理人としての腕を磨いた方が後々客が途切れることがないと思うのだが。

 もしかしてこれ以上上げられないと諦めていている軟弱ものか?

 しかし店の宣伝というのは悪くない。

 もし私たちが『美人姉妹がつくるらーめん』と可愛くアピールでもすれば人は寄ってくるだろう。

 しかし『女という武器を使わなければ勝てない』と思われるのも癪だ。

 そもそもそんなことをしなくても、私の不正らーめんは確実に勝つので、余計なことに労力を割く必要はない。

 さて。特訓用材料も揃ったことで、これからがアリスの特訓本番なのだが、やることは初日と同じ。

 茹で卵を風呂の中で魔力浸透を意識しながらコロコロするだけ。

 その間、私はやはり洗面台でイメージを繰り返す。

 それを見たアリスは、

「料理前の手洗いを入念にしているんですね」

 と、やはり私の特訓は側から見ると、ただの手洗いに見えるらしい。

 ちゃんと説明したら納得してくれたが。

 とまぁ、こんな地味な特訓がこれから一月ぐらい毎日続いていく。

 この期間は何か問題が起きな限りは不正らーめん制作以外の魔導研究を行うことはなく、若干物足りないと感じるかもしれない。

 しかしこの期間は私が生きていく上で絶対に必要な魔力制御、その『研鑽集中期』とでも考えれば、無駄な時間どころか、とても有意義な時間となる。

 そんな特訓期間で懸念があるとすればアリスだ。

 今まで一緒に過ごしてきて、一月もの間同じ作業を繰り返し行なったことはない。

 アリスが途中で飽きてしまい、集中力が途切れてしまっては、魔力量そこそこの、そして怠惰した魔力は質の悪い茹で卵にしかならないかもしれない。

 それでも一応使うことはできるが、問題なのは魔力制御の特訓が退屈なもの、と思ってしまうと、今後同じようなことをやっても長続きしないし、当然集中力は養われない。

 となればアリスの成長は見込めない。

 それなってしまっては私としても困るが、とりあえずは10日ほと様子を見ることにする。

 それで段々怠けている姿が見えるようであれば、少し注意をした方がいいかもしれないが、反抗期に目覚められても困るなぁ……

 アリスの精神年齢って見た目まんまだし……

 しかしとりあえずやってみなくてはわからないこともある。

 特訓開始だ。

 1日目、昨日とほぼ同じ。

 2日目。同じ作業。アリスにはまだ怠惰の様子はなし。

 3日目。同じ作業。アリスも変わらず。

 4日目。どこで……いや多分動画で覚えたのだろう、アリスは鼻歌を歌い出す。

 5日目。同じ作業。昨日と変わらず。

 6日目。同じ。変わらずアリスは自分の茹で卵を美味しく食べている。

 7日目。歌詞がついた。しかも上手い。

 8日目。アリスが口ずさむ歌は全て料理関係。

 9日目。毎日毎食ゆで卵を食べても、アリスは不満そうな顔を見せない。むしろいつもの笑顔だ。

 10日目。同じ作業。アリスに怠惰の様子は見られない。

 この時点で私の隠蔽魔法の仕込みは完璧と言ってよく、このまま『勇者王決定戦』で使用しても、誰にもバレることはないだろう。

 だが本番では一部の隙も失敗も許されない。まだまだこれからとことん詰めていく。

 今日の特訓を終え、そろそろ就寝しようとベッドに向かうと……

「……………………」

 アリスは既に就寝しており、そしてその胸元には卵……

 ……どういうことだろうか?

 まさか母性に目覚めて孵化させようと……いや、それはないか。

 アリスは言いつけ通り、毎食自分で魔力浸透させたゆで卵を食べいるから、孵化しないことはわかっているはずだ。

 もしかして、風呂の中で魔力浸透させる方法には飽きたので別の方法、今目の前で行われているように、自分が寝ている間に魔力を浸透させられたら、と楽な方法を考えたのだろうか?

 しかしそれを『楽をするな』と私は注意するつもりはない。

 むしろアリスが自分で考えた上での行動なのだから、まずはその行動を褒めるべきだ。特にアリスは褒めて伸びるタイプ。その方が良い結果になるだろう。

 その後、魔力を測定して意味がない、とわかればアリスの行動を理解した上で諭してやれば良い。

 とりあえず、明日の朝にでもこの状況の理由を聞いてみよう。

 そう思って私も寝支度を整え、ベッドで横になる。

 翌朝。

「お母さん鶏が大事に卵を温めてヒヨコが産まれるように、私も大事に温めていれば、もっと美味しい茹で卵ができるかも、と思いまして」

 アリスが卵を抱いて寝た理由。それは『愛情の真似事』といったところだろうか?

 実はそれは間違いではなく、とある研究では『親が子を大事に抱く(卵も同様)ことで、親の微量な魔力が子を守っている』という結果が出ている。

 なのでアリスも、おそらく動画の中からヒントを得て自分の考えでそこに至り、アリスなりにしっかり考えて魔力制御特訓を行なったのだろう。

 これはちゃんと褒めるべき行動だ。そしてやはり、アリスの食べ物に対する思いというか、執念というか、これは人一倍どころではないことを再確認する。

 ただ、問題、というほどでもないのだが……

「なのでこれはけっしておもらしではないのです」

 アリスが慌てて早口で弁明するこの状況。

 アリスが胸元で温めていた卵は、アリス特訓用茹で卵ではなく、アリス湯から茹で卵を作ろうと思って買っていた生卵。

 そのため、その大事にしていた卵はアリスの寝返りによって肘が直撃した模様で、アリスの肘と衣服、そしてベッドには潰れた卵によって黄色く汚れていた。

 珍しく私より早く起きていたから何事かと思えば……

 まぁアリスとしてはそりゃ青ざめるか……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ