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勝手に魔王認定された魔女は勇者に魔力を奪われたので取り戻すために旅をする~なお500年経っても魔力は戻っていない~  作者: 山岡桃一


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余裕のある朝・アリスの場合

 優しく身体を揺らされ、私は少しずつ目を開きます。

 この瞬間にはもう、つい先程まで見ていた夢を思い出すことができません。

 私の希望としては、美味しいご飯を食べている夢だったら嬉しいです。

 昔のご飯、特にパンも悪くありませんでしたが、やっぱり今の時代のご飯を知ってしまうと、私は迷わず今の時代を選びます。

「ふぁ……おはようございます……」

 私を揺り起こしたのは、森の中で、あるいは洞窟の中で私をご飯として狙う動物ではなく、私と同じ魔女であるルシアさん。

 私よりちょっと年上に見えるお姉さんで、いつも私を起こしてくれます。

 昔、私がまだ村にいるころは仕事のために起こされていたので、こんなに優しくはありませんでした。

「おはよう、アリス。朝食の時間だぞ」

 ルシアさんが毎朝起こしてくれる理由は、ご飯のためです。

 というのも、私は村を出てから決まった時間に起きることがなかったので、放っておくといつまでも、私の気の済むまま好きなだけ寝てしまいます。

 なので、ルシアさんも出会った最初の頃は私に気を遣って起こさなかったようです。

 でも、せっかく用意してくれた朝ご飯を食べられなかった私が、ちょっとしょんぼりしていたら、ルシアさんは次からは必ず起こしてくれるようになりました。

 そんな優しい人。

「ん……んん……」

 私が身体を起こすと、ルシアさんはカーテンを開きます。

 すると朝の眩しい光が私を包み込み、私は気持ちいい日差しの中で軽く背伸びをします。

 これだけ気持ちいい朝だと、もう一度このお布団にくるまって寝てしまいところですが、私は寝ることよりもご飯の方が好きです。

 だから漫画でよく見る『あと5分』みたいなことは決してやりません。早くご飯が食べたいです。

「朝食の時間、と言ったが、まだ余裕はある。

 ちゃんと準備するんだぞ」

「はい。わかりました」

 でもその前に、必ず身なりを整えなくてはなりません。

 私自身は寝起き姿のままでもいいのですが、ルシアさんはいつも『乙女はいつまでも常に可愛くなければならない』というので、私は身なりを整えることを教えてもらいました。

 でも正直なところ『可愛い』というのがよくわかりません。

 私の見た目は子供だから、大人から『可愛い』と言われるようなことはありますけど、それは乙女としての『可愛い』とは違う気がします。

 私は学校に行ったことがないので、私が持つ知識のほとんどは漫画から得たものです。

 そんな私が『可愛い』をイメージすると、複数の男性から行為を寄せられているヒロインでしょうか。

 でも私が身なりを整えても、お店の人などは別として、男性から声をかけてもらうようなことはありません。

 だから、モテるモテない、で考えると、私がいくら身なりを整えてもモテないので『可愛い』とは違う気がします。

 そんな私を例えるなら、コマの隅っこで

『あのヒロイン可愛い』という目隠れモブキャラといったところでしょうか。

 なお嫉妬はしません。

 『可愛い』がわかりませんし、男性にモテたい、交際したいとは一切思わないし、恋愛もよくわかりません。

 別の視点でも考えてみましょう。

 私の見た目は子供。

 やはり漫画の知識からすると、私のような体型が好きな人を、ロリコン、というらしいです。

 でも、そんな人たちに誘拐されたこともなければ、そんな人たちからも声をかけられたこともありません。

 もちろん犯罪に巻き込まれないのはいいことなのですが、もしかして私って大人でも子供でもない、中途半端な存在なのでしょうか?

 それに、私は村を出てからの生活は『生きるために生きている』だけなので『可愛い』から最も遠い存在にいるのではないでしょうか?

 だからルシアさんも、せめて身なりを整えて『可愛いフリをしろ』という意味で言っているのかもしれません。

 そんな『可愛い』を私は未だ理解できませんが、いつも優しくしてくれるルシアさんがそう言うのなら、私は『可愛いフリ』を頑張ってみようと思います。

 ……でもたまに、ルシアさんの行動を見て、ちょっとおかしいかも、と思うこともあります……

 でもルシアさんは色々なことを知っている人なので、きっと何か考えがあってのことなのでしょう。

 それではまず、寝起きに顔を洗うところからです。

 これはいつも綺麗な川でやっていたので慣れたものです。でも水を服で拭いたらルシアさんにやんわり怒られますし、タオルを使っても顔をゴシゴシ拭いてはダメです。

 コチは優しく水気を取ることで、顔と傷つけてはいけないそうです。

 次は髪。これはちょっと苦手です。

 ブラシで何となく梳かしていると毛先に引っかかっちゃって、痛っ! ってなっちゃうことが多いです。

 だから慎重にゆっくりと。でもこだわりは特にないので、ある程度できたら、こんなものかな? と思って終了です。

 ふと思うのですが、髪は短くした方がいいかもしれません。作業の邪魔にもなりますし。

 それにしても、私はなんで伸ばしていたのでしょう?

 考えても思い出せませんが、気がついたらこの長さだったような気がします。もしかすると、ただなんとなく伸ばしていたのかもしれません。

 でもこれ以上伸びることもないので、髪の毛には伸びる限界があるのかもしれません。

 それとも魔女特有の現象なのでしょうか?

 よくわからないので、今度ルシアさんに聞いてみましょう。

 次は着替え。

 どれを着たら『可愛い』のかわかりませんが、ルシアさんが私に似合いそうなものや、私が服を見て、これでしょうか? と直感で選んだものばかりです。

 でもルシアさんが否定することもなかったので、多分『可愛い』のでしょう。

 下着は……上は身に着ける必要はないと思っているのですが、ルシアさんにそのことを伝えると『絶対につけろ。乙女の嗜み』と怖い顔で言われたので、つけるようにしています。

 そんな複数の下着と衣服の中から、今日は……これ、でしょうか? と、直感的に選んで、ボタンのかけ間違いがないように注意しながら着用します。

 うん。今日は失敗はありません。よし。

 と、毎朝……いえ、余裕のある朝はいつも行っていることですが、やはり『可愛い』って難しいです。

「準備完了です。朝ご飯を食べましょう」

 やっぱり私は『可愛い』よりも『ご飯』の方がいいです。

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