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勝手に魔王認定された魔女は勇者に魔力を奪われたので取り戻すために旅をする~なお500年経っても魔力は戻っていない~  作者: 山岡桃一


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勝ち確(不正有り)

「わかりました。危険がないのなら協力します。

 でも本当にお風呂に入っているだけでいいんですか?」

「基本的にはそれで問題ない。ただ、そのついでにこれを」

「卵、ですか?」

 私がバッグから取り出したのは、昼間役所に行ったほか、今回必要なものを買い出ししているとき見つけた具材候補の1つ、ゆで卵だ。

 これを今日の試作用に6つ買ったので、そのうち3つをアリスに渡す。

「そう卵だ。そしてこれはどこにでも売っているゆで卵だが、これを魔術だと思って魔力を使って欲しい。

 当然術式も組まれていない普通のゆで卵なので魔力が装填されることはないのだが、単純に魔力を加えるだけで、これも簡単な魔導料理となる。

 なので、現状あまり魔力制御が得意ではないアリスが行なって、どれ程度味が変化するのかを調べたい。

 もしこれが上手くいけば卵料理全般にしようできるから、アリスの魔力制御が上手くなればなるほど、自分の好みの味や硬さにすることも可能だ。

 それこそ安物卵を高級卵同等に変化させることもな。

 実際の高級卵の、つまり鶏の飼育方法だって様々な魔力制御が行われているんだ。それを自分でできたらいつでも高級卵が食べられる、ということになる」

「な、なるほど……つまり私も魔導料理人ってことですね。

 わかりました。がんばってやってみます」

 魔導料理人とはちょっと違うけど、やる気を出してくれるならまぁいいか。

 それにしても、やはりアリスは食べ物のことになると俄然やる気が湧いてくるから、この件が終わったら本格的に魔導料理を利用した魔力制御の練習でもさせてみようか。

「まぁ今日は想定通りにいくかの実験を兼ねているから、あまり気を入れすぎず、疲れを癒す程度の気分でいい。

 ただし、何度も言うようだが、ゴミや埃など、食べられないものを浴槽に入れないようにな」

「はい。あ、でも、それだと汗をなんとかしないといけませんね。

 顔中にタオルを巻いておけばなんとかなりそうですが、体の方はどうしましょうか?」

「それはいいんだよ。

 汗が混入したからといって変色するわけでもないし、スープに入ったところで見えないからな」

「それで問題ないのならいいのですが……」

 アリスは汗など、いわゆる老廃物が混入することに不安を抱いているようだが、アリスの汗、すなわち上位魔女の老廃物ほど貴重なものはない。

 本当の学生時代ならいくらでも採取できたが、現状私の知る限りではアリスしかいない。

 ただ、検証したことがないのでそれを用いたからといって魔導料理が美味しくなるという保証はないのだが、今回上手くいけばクレナイの蜜を軽く凌駕する魔導食材になり得る。

 多分、それを証明してアリスの汗を凝縮して売ったら、あっという間にお金持ちになりそう。

 ……資金繰りに困ったらちょっと考えよう。

「とりあえず説明は以上だから、早速はじめようか。

 アリスが風呂に入っている間、私も必要なものを用意しておく」

「わかりました」

 説明が終わったところでアリスは浴室へ、私はらーめん作りの準備を行う。

 まず重要なのが先日手に入れた『クレナイの蜜』だ。

 これに幻覚侵食系魔力を装填してスープの中に溶け込ませると、食べた人間に『最高に美味しい』と思い込ませることができる。

 これでいくら私の料理の腕が素人並みであっても、九分九厘勝ち確だ。

 ただし不安要素もある。

 1つ。

 これは当然不正行為にあたるので、魔力探知に優れた人間あるいは魔術を用いられた場合、バレる可能性がある。

 そもそも運営もその準備はしているはずなので、それらを完璧に誤魔化せるぐらいの隠蔽魔法も同時に使用しなければならない。

 しかも結果発表までの長時間使用となる。途中で解除してしまったら、やっぱり不味い、なんてことになりかねない。

 術式が使えれば簡単なのだが、術式料理はもれなく不味くなるため、今回は使用しない方がいいだろう。

 まぁ偽造魔法や隠蔽魔法は生きるための術と言っても過言ではないので、得意中の得意である。

 それに今回に限らず、今までも同じようなことをやったことはあるので、気を抜かなければ大丈夫だろう。

 2つ目。

 それに関係して『クレナイの蜜』に魔力を装填することになるが『クレナイの蜜』は今回初めて手に入れたので、当然魔力を装填した経験がなく、失敗が続くと本番前に足りなくなる可能性がある。

 さらには『クレナイの蜜』特有の『なにか』があった場合、装填した魔力が無効化される可能性もある。

 昔、似たような経験をしたことがあり、それがきっかけで大事件に発展したこともあるし。

 そこらへんもじっくり検証したいところだが、結果を出すまでに時間がかかるので、今回は何もないことを祈るしかない。

 3つ目。

 アリスには侵食系魔力が効かないので、今回の不正幻覚らーめんの試食には向いていないこと。

 なので私が試食をするか、ホテルの人間に怪しまれない程度に試食を頼むしかないのだが……はたして宿泊客が出すらーめんを食べるだろうか?

 ……やっぱり今回は私が体を張るしかないか……

 とまぁ不安要素はこれぐらいで、最悪のケースは私がらーめんを食べ過ぎて体調不良となり、出場辞退すること。

 となると、優勝者から賞品を奪い取るか交渉するか……前者かな……

 栄誉である『勇者の魔導石』を交渉したところで譲ってくれるわけもないだろうし、それならとっくに私が手に入れている。

 他に準備するものは、麺に関してはなんでもいい。

 魔力装填も可能ではあるが、スープに浸してさえいれば茹でなくても『美味しい』という幻覚効果は発揮される。

 強いて言うなら、アリス湯で茹でるか普通のお湯で茹でるかの選択程度。

 そして器。一般審査員と特別審査員がいるらしいので、一般審査員のほうはそこらへんで買える安物の使い捨ての器。

 特別審査員にはちょっと特別感を出した器を用意する。

 こちらには術式が組み込めるが、不正幻覚らーめんと変な干渉が起きても困るので、やめておく。

 ゆで卵以外にも具材はもうちょっと増やしてもいいかもしれないが、それはまた後で考えよう。

 大人数用の大きい鍋、それと調理器具は魔法で料理するのであまり使わないと思うが、本番当日会場に届くよう手配した。

 なので今回は純粋に味(不正有り)で勝負することになる。

 あとは……髪はまとめたほうがいいかな。

 衣装は普通のらーめん屋っぽくするか、ちょっとアレンジした可愛げのある感じにして男に媚びを売るか、あるいはどすけべ衣装……は運営からアウト判定を食らいそうだからやめておくか。

 とまぁこのぐらいか。

 さて、アリスは順調に卵を育てているかな?

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