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勝手に魔王認定された魔女は勇者に魔力を奪われたので取り戻すために旅をする~なお500年経っても魔力は戻っていない~  作者: 山岡桃一


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魔女の味

「おまえの目的は理解した。

 それで、どうするんだ?」

 わざわざ口を割らせる手間が省けたので、これ以上黒ずくめと話をする必要はない。

 それに現在のこの……『巨乳絶滅組織』なのか『持たざる者の組織』なのか『全世界平等組織』なのか、名前すらわからない組織に忍び込んだとしも、大した成果が得られない可能性があることもわかった。

 むしろあまりにも胡散臭すぎる組織なので、ただ金を集めてトンズラするインチキ組織の可能性の方が高い。

 ただし、魔女が教祖なら話は大きく変わってくるが、末端であろうこいつに聞いたところで、その答えは出ないだろうな。

 ……私以下の絶壁魔女ならやりかねないが、私と同等以上なら『くだらないことしてないで真面目に働け』とでも言いたいところだ。

「それはもちろん」

「それはもちろん、オレが優勝するためにてめーを材料にしていやる、ってだけだぜ」

「へ?」

 黒ずくめが意気揚々と計画を明かしたのは、私と2人きりだと思い込んだためだろう。

 それにしても、いくらここが暗くて私が視界を遮っていたとはいえ、こんな巨漢が目に入らないとか、よほど私のことを運命の出会いと思って視界が狭くなっていたなろうなぁ。

 まぁ小さいとはいえ形は整っていて綺麗だし、貧は貧でも上位貧だとは思っているが。

 あるいは実は相当の実力者で、この程度の筋肉野郎なら簡単に倒せると思っており、眼中にないのだろうか?

 それならそもそもあんな衝撃弾で気絶なんてしないか。

「おまえがどこの組織のモンか知らねーがなぁ」

「ひっ!!」

 黒ずくめは赤色筋肉に迫られ、完全に顔を引きつらせている。

 やっぱり弱いのか。だから今回のように姑息な手段に出ているのかもしれない。

「や……やめぇ……てぇ……」

 黒ずくめはわずかな抵抗を見せるが、そんなのはお構いなく、赤色筋肉は黒ずくめの襟元を右手で掴み、そのまま持ち上げる。

「正々堂々の勝負なら真っ向から受けてやる。

 だがなぁ、今回みたいな汚ねーことしようもんなら、てめーの組織ごとオレの特製勇者みそらーめんの材料にしてやるよ。

 人間の肉は不味いって聞くがよぉ、オレのてにかかればどんな素材であっても絶品料理を作ってやるよ」

「ひっ! すいませんすいません!

 もうしないので命だけは助けてくだひゃい!」

 赤色筋肉に凄まれた黒ずくめは、今にも失禁しそうなほど震え上がり、凄い勢いで命乞いをする。

「この光景、最近見た気がするな」

「死にたくなければ必死に謝罪や命乞いをするのは基本ですよ」

 さすが私との初対面で必死の命乞いをしたアリスの言葉は重みが違う。

 しかし純粋な悪党ならその謝罪を受け入れるとは思えないし、アリスならあそこで連れ去れれて売られて終わりだった。

 ちなみに、狂人変態勇者は悪党ではなかったが、後期勇者は例え必死の命乞いをする魔女であっても、容赦なく食っていたようだ。

 漫画だと命乞いするより『オレをここで見逃せば後悔するぜ』とかイキったことを言う展開も見られるが、私だったら魔導研究のために、イキろうが謝罪しようが命乞いしようが、クレナイと同じような方法を用いて魔力を限界まで抽出する。

 というのも、昔、疲れていたこともあって全力謝罪をする人間を見逃してやったことがあったが、そいつがもうやっかいでやっかいで。

 それからというもの、私に害を与えそうなやつに対しては、命こそ奪わないが、やれることはやるようにしている。

「ふん。今回だけは見逃してやる。

 だが組織のモンに言っておけ。次は全員食材だとな」「ひ……ひゃい! ひゃい!! ひゃい!!! って!? うえああああああ!」

 赤色筋肉は語気強めに黒ずくめに釘を刺し、黒ずくめが激しく首を縦に振ったことを確認してから、大通りのほうへ投げ飛ばす。

 そしてごろごろと転がった黒ずくめは、やがて立ち上がると、よたよたとその場から去って行った。

「これに懲りて2度とやらなきゃいいけどな」

 違う町でまた『組織』の人間に出会いそうだが……「さすがのオレでも人間は料理できねーしなぁ」

 さすがにハッタリだった模様。

 私も人間の肉は不味い、という話は聞いたことがあるだけで、実際に食べたことはない。

 ただクレナイの蜜のような芳醇な魔力は素材の味を引き立てるような旨味成分にもなるから、もしかすると、魔女は狂人変態勇者が言っていたように美味しい可能性はある。

 となれば、今回アリスを『材料』にする件だが、もうちょっと過激に行ってもいいかもしれない。

 試食はもちろんするが、どうせ審査する人間にはアリスという『原材料』は見えないわけだし……

「それと、今回のことは助かったよ。

 実際のところ、材料に何かを仕込まれても、ある程度はオレの魔導料理魔力で誤魔化すことはできるが、どうしても味は変わっちまう。

 そうなると『勇者王』への道は潰えたも同然だからな」

 赤色筋肉は黒ずくめに対する強い語気から一変、やんわりとした口調で例を言う。

「まぁ偶然見つけただけではあるが、礼なら黒ずくめを見つけたアリスに何か食べさせてやってくれないか?

 あ、いや、金がないのではなくて、夕食が遅くなってしまったからどこも閉まっていてな」

 だらだらと話をしていたら、こいつが公然わいせつで連行されかねないので、さっさと話を進める。

「おなかぺこぺこです」

 アリスはそう言いつつ、期待を込めた上目遣いを発動させ、お腹をさする。

 ……自然とやっているのか、計算してやっているのかはわからないが、破壊力高いなぁ。

 私も計算してやることがあってその成功率はかなり高いが、アリスの場合はレベルが違う。これでもし赤色筋肉がロリコンだったら誘拐されるぞ……

「おお、いいぜ。

 とはいえ店はもう閉めちまってるから賄い程度になるが、それでもよければ好きなだけ食ってくれ」

 赤色筋肉の反応は、特にアリスにときめいたりなどはなく、普通に子供の面倒を見る大人、と行った感じだ。

 それだけ良識があるのか、アリスとは真逆のお姉さん系が好みなだけなのか。

「食べ放題ですかぁ。とても素敵な響きですね」

 いつも食べ放題状態なのに、それでも喜ぶのがアリスらしい。

 とりあえず目論見通り『勇者王決定戦』の即時中止は回避できたと思うし、夕食も確保できた。

「さ、入ってくれ」

 私たちは赤色筋肉に案内され、裏口から店に入る。

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